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訪米中の中国の習近平国家主席は11月15日、米企業経営者らとの夕食会に臨んだ。その際、企業トップからは3回も総立ちでの拍手喝采を浴びた。これは習氏の6年半ぶりとなる訪米で得た一つの手応えであろう。米国内メディアでは、こうした歓迎をした米企業経営者への批判も聞かれる。中国嫌いで固まっている米政界が、出席した企業への非難を強めるだろうというものだ。

 

『日本経済新聞 電子版』(11月14日付)は、「習外交『経済』前面に、6年半ぶり訪米 国内の苦境映す」と題する記事を掲載した。

中国の習近平国家主席は17日、6年半ぶりの米国訪問を終えた。日米両首脳と対話の重要性を確認し、関係改善への道筋をつけた。諸外国に中国への投資を求め、経済重視の姿勢を前面に出した。不動産不況や消費不振といった中国国内の苦境を映す。

 

(1)「習氏は、バイデン米大統領との会談やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に臨むため訪米した。17日に同会議で演説し、先端半導体などの対中輸出規制を主導する米国を念頭に、経済のデカップリング(分断)をけん制した。APECが16日開いた最高経営責任者(CEO)サミットにメッセージを寄せ、対中投資を「歓迎する」と表明した。「中国は最高の投資先の代名詞となっている。中国の次はやはり中国だ」と訴えた」

 

習氏は、具体的に内容のある話を一つもしていない。ただ、中国市場は有望という類いのことだけだ。

 

(2)「15日の米企業経営者らとの夕食会でも「中国は互恵的な開放戦略を追求し続ける」と語り、貿易・投資拡大に意欲を示した。夕食会にはアップルやクアルコム、ボーイングといった中国事業の規模が大きい米大手企業のトップが参加した。岸田文雄首相との会談では閣僚レベルで経済協力などを話し合う「日中ハイレベル経済対話」を適切な時期に開くと申し合わせた。日中の通商当局が、重要鉱物の輸出管理といった問題を話し合う枠組みも新設する。メキシコ、ペルー、フィジー、ブルネイなどとの首脳会談でも経済や貿易の連携を確かめた。中国が掲げる広域経済圏構想「一帯一路」の推進についても協議した」

 

習氏の訪米目的は、経済問題の解決に主眼があった。日中首脳会談でも、「日中ハイレベル経済対話」を開くことで合意した。日本産海産物輸入禁止問題も、日中両国の専門家会議に委ねる姿勢をみせた。あれだけ激烈に日本非難を行いながら、一転して日中ハイレベル経済対話とは首を捻るほかない。

 

(3)「経済を前面に掲げた外交姿勢の背景には、国内経済への危機感がある。不動産市況の悪化が響き、地方経済の低迷は深刻だ。外国からの対中投資も細っており、7〜9月の外資の直接投資は比較可能な1998年以降で初めてマイナスとなった。今回の訪米の狙いは悪化した2国間関係を正常に戻して対話しやすい環境を整え、日米などから投資を呼び込むのが狙いだった。国とは軍事対話の再開などで関係改善に道筋をつけたものの、具体的な懸案には進展は見られなかった」

 

中国は、対内直接投資(FDI)が7~9月に前年比で初めてマイナス118億ドルに達して大慌てしているのだろう。外貨資金繰りに影響するからだ。

 

(4)「習氏はバイデン氏との会談で台湾統一への意欲を改めて示し、米国が台湾を軍事支援しないよう求めた。バイデン氏は一方的な現状変更に反対し、議論は平行線をたどった。米主導の先端半導体の輸出規制を巡っても双方の主張は折り合わなかった。日本に対しては東京電力福島第1原子力発電所の処理水を「核汚染水」と呼び、適切に対処するよう促した。岸田首相は中国当局が拘束した邦人の早期解放を求めたが、中国外務省が発表した習氏の発言内容には邦人に関する内容は含まれなかった。北京駐在の外交筋は、「米中や日中で関係改善の流れが生まれつつあるが、中国がどのような具体的な行動をとるか注視しなければならない」と指摘する」

 

台湾問題は、米中間に突き刺さったトゲである。習氏は、当面の台湾への軍事行動を否定している。「一時的」な話であるので、鵜呑みにできない。共産党は、ひとたび立てた目標は執拗に狙うからだ。

 

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2023-11-16

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