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米国による中国への最先端半導体輸出禁止が、ついにアリババの戦略事業であった「クラウド事業」の分離・上場の計画を中止へ追込んだ。「クラウド」とは、インターネット経由でユーザーにサービスを提供する事業形態である。代表的なものに「Gmail」や「Facebook」などが挙げられる。アリババは、こうしたITの有望分野への本格展開を諦めることになった。

 

『ブルームバーグ』(11月17日付)は、「アリババ、衝撃の戦略『リセット』―半導体規制受けクラウド上場中止」と題する記事を掲載した。

 

テクノロジーを巡る米中の覇権争いが激しさを増す中で、中国のアリババグループが110億ドル(約1兆6600億円)規模のクラウド事業を分離・上場させる計画を中止するという驚くべき方針転換を行った。

 

(1)「アリババ共同創業者の馬雲(ジャック・マー)氏の側近を長く務めた蔡崇信会長と呉泳銘最高経営責任者(CEO)によると、戦略の「リセット」が必要だという。呉氏は就任後初の公の場で、米国による半導体の対中輸出規制がますます強化され、アリババを6分割する計画を再考せざるを得なくなったと語った。同社は人気の食料品事業、盒馬鮮生の新規株式公開(IPO)計画も中断することも確認した。16日の発表を受け、同日の米株式市場ではアリババの米国預託証券(ADR)が9.1%下落し、200億ドル余りの時価総額が吹き飛んだ。17日の香港市場でも、アリババの株価は一時10%を超える下げとなった」

 

アリババは3月、同社の約24年間の歴史で最大となる組織再編の一環として、クラウド事業を分離する方針を明らかにしていた。それを、撤回するというもの。同時に、生鮮スーパー事業「盒馬(フーマー)鮮生」の新規株式公開(IPO)計画も留保した。これは、アリババが、最近の営業不調と関係している。これまで、中国通販のトップ企業に大きな転機がきたことを示している。

 

(2)「中国当局がハイテク業界に対する締め付けを緩め、新型コロナウイルスの大流行が終わり、巻き返しを図ろうとする矢先での決断だった。バイデン米政権は人工知能(AI)用に特別に設計された半導体の対中輸出を制限。この半導体は、アリババのクラウドサービスの原動力となるデータセンターや最上級のコンピューティング業務に不可欠だ。蔡会長は決算発表後に行ったアナリストらとの電話会見で「状況は変わった」と説明。「AI主導の世界で非常にネットワーク化され、高度に拡張されたインフラに基づき本格的なビジネスを展開するには投資が必要」だと述べ、投資資金確保に集中する必要性を強調した

 

下線部のように、クラウド事業には多額の資金を投入しなければならない。その資金調達のメドが立たなくなって来たことを言外に臭わせている。

 

(3)「電子商取引で中国最大手のアリババは、ソーシャルメディア大手のテンセント・ホールディングス(騰訊)と共に、米国の貿易規制がもたらした問題を浮き彫りにしている。バイデン政権は、中国が軍事用途の先端半導体を入手できないようにする取り組みによって、中国の民間セクターまで予想を超える影響を及ぼし始めている。ただ、アナリストらによれば、アリババの方針転換には他の要因も絡んでいる可能性がある

 

下線部は、アリババ本体の経営が苦しくなっていることを示唆している。クラウド事業を分離独立させた後、アリババが支援できない状況が生まれつつあることだろう。アリババの売上が伸びないことだ。

 

(4)「アリババのクラウド事業は、ここ数年減速し市場シェアも低下している。北京のテクノロジー系シンクタンク、ハイトゥンのリ・チェンドン代表はアリババがクラウド部門の上場を模索するのに最適な時期は「すでに過ぎた」と指摘。「事業そのものの強さが問題だ」と話した。以前からアリババの戦略は逆風に直面していた。消費関連株に対するセンチメントが低迷する中、盒馬鮮生の香港IPOは可能性も後退している」

 

アリババのクラウド事業はここ数年、減速しているという。上場させるタイミングがずれてしまったと指摘している。

 

(5)「アリババのCEOだった張勇(ダニエル・チャン)氏が、数カ月前に就任したばかのクラウド事業会長兼CEOを辞任したほか、物流部門の菜鳥が香港IPOを9月下旬に申請したものの、その評価額は不透明なままだ。ただ、こうした前兆があったにもかかわらず、今回のニュースはウォール街に衝撃を与えている。トクビル・ファイナンスのアジア株責任者ケビン・ネット氏は「かなり驚いた。まず思ったのは先に発表された企業再編全体が危ういということだ」と語った」

 

クラウド事業は、独立させても一本立ちが危ういという判断が出てきている。アリババにとっては、全てが逆回転し始めている感じだ。