1年ぶりに実現した米中首脳会談は、米中どちらが成果を得たか。それは、米国である。米中のホットライン開設を約束させたからだ。軍事的問題が起こったとき、ワシントンと北京が電話で繋がることはきわめて重要だ。習氏はまた、米国の覇権に取って代わる積もりはないと弁明した。本心は別として、こういう発言は中国が経済的に追い詰められている証拠だ。一方の米商務長官レイモンド氏は、安全保障に関わる問題で規制緩和はないとピシャリ。中国にとっては実り少ない訪米と言えよう。
『中央日報』(11月17日付)は、「米中、軍事は疎通 貿易・台湾は不通」と題する記事を掲載した。
中国外交部は16日、X(旧ツイッター)にバイデン大統領と習近平国家主席が笑顔で会話する写真とあわせて、異例にも両首脳の対話内容を公開した。華春瑩報道官によると、15日(現地時間)、バイデン大統領はサンフランシスコ近郊の邸宅で会った習主席に1枚の写真を差し出して「この青年を知っているか」と尋ね、習主席は「おお、そうだ、38年前」と答えた。30代前半に河北省正定県党書記としてアイオワ州の農村に視察に訪れた習主席がゴールデン・ゲート・ブリッジ(金門橋)の前で撮影した写真だった。
同日、米国政府高位当局者はバイデン大統領が庭園を散歩している間、習主席に「夫人の誕生日をお祝い申し上げる」と話したと明らかにした。すると習主席は「仕事に一生懸命になっていたら妻の誕生日が来週であることをすっかり忘れていた。思い出させてくれてありがとう」と答えたという。バイデン大統領と彭麗媛夫人は誕生日が同じ11月20日だ。バイデン大統領は1942年生まれ、彭夫人は1962年生まれだ。
(1)「拡大会談→ビジネスランチ→周辺散策の順で計4時間にわたって行われたこの日会談はこのように表面的には和気あいあいとした雰囲気の中で行われた。しかし「最も建設的で生産的な対話の一つ」というバイデン大統領の自評にもかかわらず明確な成果はなかった。来年の大統領選挙を控えて中国との関係を安定的に管理する必要があるバイデン大統領と、米国の圧迫を緩和して経済成果を出さなければならない習主席の今回の会談直後に「半分の成功」という評価が出たのはこのためだ」
米中間で、ホットライン開設が決まったことは、米国にとって大きな意味をもつ。来年は、米国大統領選である。その前に、米中両軍が台湾周辺で偶発的衝突を引き起こすことは避けなければならない。そういう緊急時に、ダイレクトに話し合うことは重要だ。
(2)「昨年のバリ会談以降1年ぶりに会った両国首脳は、この日共同宣言文を発表しなかった。会談後、ホールで記者会見に臨んだバイデン大統領は「一部重要な進展を成し遂げた」とし、具体的な会談成果として軍事対話の再開、フェンタニル(麻薬性鎮痛剤)に対する協力、人工知能(AI)に対する専門家対話の推進などを挙げた。あわせて「2人のうちどちらでも、何か心配があれば受話器を取って相手に電話をかければ受けることにした」とし、ホットラインの開設に合意をしたことを知らせた。最悪の軍事衝突を防ぐための最小限の安全装置は用意したが両国はこれまで鋭く対立してきた台湾イシューと輸出および投資規制など核心葛藤イシューでは一歩も退かなかった」
経済面における米中の立ち位置は、米国が有利な立場にある。戦略物資の対中輸出規制を行えるからだ。中国は、完全な受け身に立たされている。中国は、経済的危機に追い詰められているだけに、米国へ規制緩和を「お願いする」しかないのだ。
(3)「両国当局と主要メディアが伝えた会談内容を総合すると、台湾イシューに関連して習主席は「米国は台湾独立を支持しないという立場を具体的な行動で示さなくてはならない」とし「台湾武装(支援)を中断して中国の平和統一を支持しなければならない」と要求した。また「中国が2027年や2035年に軍事行動を計画中という報道があったそうだがそのような計画はない」と断言した。米高位当局者はこの部分を話す時、「いらだちがややにじみ出ていた」と伝えた」
中国が台湾侵攻するとの見方は、すでに世界中に定着している。これを広めるきっかけは、習氏自身が「台湾解放が歴史的使命」と演説していることにある。台湾侵攻時期は、2027年説や2035年説など取り沙汰されているが、習氏はこれを否定している。ただ、中国共産党は、目標は実現することが必須とされているので、隙をみて台湾へ襲いかかることを前提にしなければならない。種を蒔いたのは、習氏である。
(4)「輸出および投資規制などに関連し、習主席は「米国が経済・貿易と科学・技術領域で中国に対して抑制と弾圧を行うのは『危険除去(de-risking)』ではなく『危険製造』」とし「これによって作られた中米関係の不確実性はすでに最大の危険になった」と強調した。「中国の懸念を受け入れて一方的な制裁を取り消し、中国企業に公平・公正・非差別の環境を提供しなければならない」と要求した。だが、バイデン大統領は「米軍に対抗するのに使われる技術を中国に提供しない」と言って対抗した。逆に中国の不公正な貿易慣行、市場経済に反する経済慣行、米国企業の知識財産権強奪などの問題を提起して改善を求めた」
中国が、経済面で米国に追い詰められていることは否定しようがない。習氏は、この事態を何としても一部でも緩和させなければならないが、「安全保障」という大きなカンヌキが掛けられている。中国が、米国へ戦狼外交を行ってきたツケが回っているのだ。
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