あじさいのたまご
   


日韓首脳は、先のAPEC(アジア太平洋経済協力首脳会議)を利用した会談を含めて、今年すでに7回も行った。政府間レベルでは、日韓の距離は急速に縮まっている。それにもかかわらず、未だに防衛面での日本警戒論が聞かれる。日本には、在韓米軍の後方基地が7カ所もあることを棚上げして、日本警戒論を打ち上げる理由はなんだろうか。日本が、韓国を攻めるという「妄念」を抱いているからだろう。米軍が、それを傍観するはずがないという「客観的事情」を理解できないのだ。 

『朝鮮日報』(11月20日付)は、「ウクライナ戦争を口実に 日本の軍事力が大幅に増強されている」と題する寄稿を掲載した。筆者は、金慶敏(キム・ギョンミン)漢陽大学名誉教授である。 

ロシアのウクライナ侵略を契機として、日本がまるで待っていたかのように本格的な軍事力増強に乗り出している。これまでも日本の軍事力は、自衛隊といいつつ韓国よりもはるかに先端兵器で武装したものだったが、ロシアの侵略戦争で軍事戦略が防御戦略から攻撃戦略に変わった。

 

(1)「2022年末に決定された国家安全保障戦略が法律的な裏付けを得て、ブレーキのない軍事大国へと走り出している。武器システムを見ると、北朝鮮と中国東部を打撃できる射程1000キロ以上のミサイルを2024年から1000発保有すると決定した。第2次世界大戦以降、日本は射程数百キロの地対艦ミサイルは保有していたものの、全て防御用のミサイルだった。ところが今では全てが攻撃型のミサイルに変わるというのが特別な変化だ。軍国主義を放棄して相手が攻撃してきたときに防御用の対処をするという、いわゆる専守防衛戦略がなくなるのだ。あまりにも大きな歴史の変化が北東アジアで起きており、それも米国の同意の下、スピード感を持って進められている」 

ロシアのウクライナ侵攻を機に、中国が台湾侵攻する現実味が増している。台湾有事が、日本へ飛び火しない保証はないのだ。日本列島は南北に約3000kmだ。この長い距離の防衛を考えれば、国防費が増えざるを得ない面がある。韓国は、南北で840kmにすぎない。日本と韓国では3.6倍の開きがある。こういう国土条件を勘案してみるべきだろう。
 

(2)「日本は、南部の大分県から北部の青森県に至るまで10棟の弾薬庫を建設し、2035年までに計130棟の弾薬貯蔵施設を造って持続可能な戦争への備えを推進する。もちろん、ここには米国のトマホーク巡航ミサイル1000発を分散配置する案も含まれている。そして来年には、陸海空の司令部が別々だったのを、防衛省のある市谷に陸海空統合司令部として創設する。日本と既に宇宙軍事同盟を結んでいる米国は、米宇宙軍司令部を日本に創設すると決定した。独自の衛星測位システムを持っている日本は、軍事用の偵察衛星も10基保有するまでになっており、米国と真の意味での宇宙軍事同盟だ。中国や北朝鮮などのミサイルが極超音速ミサイルに変化しているので、米国と日本はこれらのミサイルを破壊するためのミサイルを共同開発すると、今年8月の首脳会談で合意した」 

日本は、安全保障面で中国・ロシア・北朝鮮という異質の国々と対峙する結果になった。その点では、韓国も同じである。その韓国が、日本を敵視するような発言は全く理解できない。

 

(3)「日本は、世界的に類例のない弾頭交換型ミサイルも開発する方針を固めたが、これは必要に応じて弾頭を取り換えることができる。通常の攻撃型弾頭だけでなく、偵察用の高性能カメラを積んで広い範囲の状況を早期に把握できる偵察用弾頭、敵のレーダーを無力化する妨害用弾頭などだ。世界最高の戦闘艦であるイージス艦を韓国は3隻持っているが、日本は計6隻だ。4万トンから5万トン級の中型航空母艦も2隻計画している」 

日本は海に囲まれている國だ。イージス艦を韓国よりも多く保有するのは当然のことだ。中型航空母艦を持つのも不思議はない。 

(4)「中国潜水艦の「天敵」という対潜哨戒機も100機以上あり、独自開発したP1対潜哨戒機は航続距離が9000キロを超え、朝日新聞は「大東亜共栄圏」タイプの対潜哨戒機だと別名を付けたことがある(ママ)。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)が最も恐れる米国のF35ステルス戦闘機も、韓国の60機に対して日本は147機を保有することになっている。潜水艦戦力も、原子力潜水艦ではない潜水艦としては世界最高の性能を誇る「そうりゅう」型で武装しており、韓国の潜水艦が相手をするのは困難だ。日本はまた、主に米国から輸入してきた武器類を国産化して独自生産し、国家主導で輸出にまい進することにしたという。国が主導するのは、第2次世界大戦で敗れて以降、初めてだ。中国に劣らぬもう一つの軍事大国・日本が、韓国の隣に登場しつつある現実を直視しなければならない」 

日本が、防衛力強化に務めるのは、中国軍への抑止力を高める目的である。これは、間接的に中国の台湾侵攻や北朝鮮の韓国侵攻を防ぐ意味もある。このように、日本の国防強化には多角的な目的があることを理解できないことが不思議なのだ。日本や韓国は、経済的に南シナ海や東シナ海の安全がきわめて重要になっている。この意味で、日韓は協力するべき関係にある。韓国の日本警戒論は、余りにも狭量と言うほかない。