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中国当局は、不動産開発企業50社のリストをつくり金融機関へ融資で優遇するように指示する動きをみせている。住宅不況テコ入れをめぐっては、これまで種々の案が浮上している。一貫しているのは、未完成物件を掴まされている消費者への救済案がないことだ。IMF(国際通貨基金)では、未完成物件を早く完成させて不安を取り除くことが、消費者心理を好転させるとしている。中国当局は、できるだけ財政資金の投入を避けることに汲々としており、目先のことばかりに集中している。

 

『ブルームバーグ』(11月20日付)は、「中国、融資適格となる不動産開発会社50社のリスト作成-関係者」と題する記事を掲載した。

 

中国当局は不動産危機に歯止めをかけるための新たな取り組みとして、さまざまな融資の対象となる開発会社50社のリストを策定している。事情に詳しい関係者が明らかにした。融資適格のリスト入りしているのは、万科企業新城発展、龍湖集団など。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。

 

(1)「関係者によれば、国有および民間のデベロッパーが含まれるこのリストは、金融機関が銀行融資や債券、エクイティーファイナンスなどを通じた業界支援を検討する際の指針となることを意図している。銀行側が以前作成したこの種のリストは、一部の「システム上重要」な国有企業にのみ焦点を絞っていたが、策定中のリストはそれを拡大することになる。他のどのデベロッパーがリスト草案に含まれているかは不明。

 

当局は、開発会社50社のリストをつくって金融機関に優遇するように指示している。これは、これら50社がデフォルトになる場合の信用不安を予防しようという狙いだ。消費者の不安(未完成物件を掴まされている状態)には、全くお構いなしの最悪というべきだろう。

 

(2)「記録的なデフォルト(債務不履行)や集合住宅建設の中断、不動産投資の大幅縮小が世界2位の経済大国を脅かしている。こうした取り組みは、このセクターに対する政府の懸念増大を裏付けている。中国の大手銀行や証券会社、不良資産管理会社は金融規制当局トップとの17日で、不動産会社からの「合理的」な資金需要全てに応えるよう指示された。金融機関はまた、融資に関して「民間と国有のデベロッパーを同等に扱う」よう求められた。ただ、政府の声明は融資対象の開発会社リストには触れていない」

 

中国人民銀行(中央銀行)と国家金融監督管理総局、中国証券監督管理委員会(証監会)は、17日の会合で金融機関に対し、不動産開発会社の借り入れと債券発行、資本市場からの合理的な株式ファイナンシング確保を支援するよう求めた。また同会合で、規制当局は不動産セクター内の企業の合併・買収(M&A)を後押しするとともに、住宅プロジェクトの供給と手頃な価格の住宅開発の支援を強化するよう呼びかけた。当局は、いかにして財政資金を使わないで、済ませるかという安易な道を探っている。

 

当局が、金融的な措置で不動産開発企業50社を支える意思を示している。だが、これによって、不良債権が増えて金融機関へさらなる圧力をかけるという、次の問題をはらむことになった。根本的な対策は、未完成物件の早期完成である。これを行わず、目先の資金繰りを助けてもその場限りになる。消費者切り捨てが、明白になっている。

 

(3)「当局はまた、銀行に対し、民間デベロッパーへの融資が業界平均と同じペースで増加するよう要請したと、事情に詳しい関係者は説明。中国の不動産ローン残高は9月末時点で初めて前年同月比で減少し、同セクターのストレスが浮き彫りになった」

 

不動産開発企業と住宅ローンを含む不動産セクター向けの融資残高は、9月末で前年同月比0.2%の減少になった。統計を取り始めた2005年以来のマイナスである。一方、住宅ローン残高は、4~6月期と7~9月期と2四半期連続のマイナスである。

 

このように、不動産セクターへの貸付けはすでに縮小過程に入っている。この事態は深刻である。不安心理が、中国全土を覆っているのだ。当局の対策は全て小出しで失敗している。