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今週(11月20~24日)は、東京外国為替市場で円安展開を想定する声が強かった。高金利通貨ドルの押し目買い意欲が依然旺盛なうえ、対ドル以外でも強まっている円売り圧力が下支えとなる、という想定であった。だが、この円安の流れは、東京市場で20日で一時変化を見せ、ロンドン外国為替市場ではさらに円が買われる局面になっている。 

20日のロンドン外国為替市場は、ドルが下げ幅を拡大し一時1%安の148円10銭を付けた。FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ終了が近いとの思惑が膨らみ、ドルは全てのG10通貨に対して下落した。円はドルに対して10月3日以来の高値だ。アジア時間帯に150円に向かう動きが急速に後退した。『ロイター』(11月20日20時)が報じた。 

『ロイター』(11月20日23時)は、「イエレン氏、米国はインフレ率引き下げで『かなりの進展』遂げている」と題する記事を掲載した。 

イエレン米財務長官は20日、米国はインフレ率を引き下げることにおいて「かなりの進展」を遂げていると述べ、労働市場の強さが続いていることを踏まえれば特筆すべきことだとの考えを示した。

 

1)「10月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.2%上昇と、2022年に付けたピークの9%超から伸びが鈍化した。米金融当局が物価圧力の抑制を目指し、積極的な利上げを進めたことが背景にある。ただ、物価は昨年ほどのペースでは上昇していないものの、依然として伸びており、多くの必需品は新型コロナウイルス禍前よりも高い水準にとどまっている。イエレン氏はCNBCとのインタビューで、「インフレ率の引き下げでかなりの進展を遂げているが、米国民は物価がかつて慣れていた水準よりも高いことに気づいている」と発言。「そして重要なことは、強い経済と強い労働市場を維持しながら、インフレを巡る進展が実現していることだ」と語った。 

米国のCPIは、22年のピーク時に9%を超えたが、10月は3.2%まで沈静化していきた。イエレン氏は、強い経済と強い労働市場を維持しながら、インフレを克服してきたと米国経済の腰の強さを強調した。だが、高金利の本格的な影響は24年のGDP成長率を引下げる。それだけに、金利引上げをストップする時期が肝心である。外国為替市場の関心は、利上げから利下げに移っている。その意味では、「神経戦」の時期である。

 

『ブルームバーグ』(11月20日付)は、「ピムコが円買い、『日銀最終的に利上げも』過去数カ月にロング構築」と題する記事を掲載した。 

パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO:債券運用残高では世界最大級のアクティブ運用会社)は円を買っている。日本でインフレが加速し、日本銀行が金融引き締めを迫られると見込んでいるからだ。 

2)「ピムコは数カ月前に1ドル=140円を超えて円安が進んだ時に、円のロングポジション(注:値上がり期待で買い込む)を構築し始めた。マルチアセット投資と資産配分を専門とする同社のファンドマネジャー、エマニュエル・シャレフ氏が明らかにした。「日本のインフレ率が上昇し、安定して目標を上回り続けていることから、日銀はイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策を終了するか変更する方向に動こうとするだろう。最終的には利上げの必要すら生じるかもしれない」と、同氏は先週シンガポールでのインタビューで語った。「米国のインフレ率は鈍化しつつあるが、日本のインフレ率はまだ高い。当社の枠組みの中でこれは自然に円のロングポジションを組むことになる」と続けた」

 

ピムコが、「円買い」へ焦点を合わせている。世界一の債券運用ファンドが動いているのだ。客観的にはドル売り=円買いが始まっても不思議はない。一方では、さらなる円安にかけるショートポジションも控えている。それだけに、円の売り買いが拮抗しており、どちらへころんでも不思議でない「剣が峰」にさしかかっている。 

3)「円はドルに対し、今年初めから12%余り下落している。タカ派の米連邦準備制度とハト派の日銀の立場が入れ替わり、円が上昇すると予想した多くの投資家を失望させた。ただ、今までのところそれは実現していないものの、エコノミストはここ数カ月に日銀の政策正常化時期の予想を前倒ししている。円は先週、一時1ドル=151円91銭まで下落し、2022年10月に付けた30年ぶり低水準に近づいた。今年のパフォーマンスは主要10通貨(G10)の中で最悪だ。日銀がイールドカーブコントロールの管理を緩めたにもかかわらず、円安は続いた。ヘッジファンドは14日までの週に円のショートポジション(注:値下がり期待で円を売り込む)を22年4月以来の高水準まで積み上げた。円の一段安を予想するストラテジストも多い」
日銀は、マイナス金利を来年14月に廃止するという見方が増えている。日米金利差が、ようやく少し縮まるのだ。それは、円高への重要なステップになる。となれば、仮に円安があるとしても、為替相場特有の「オーバーシュート」によって、円高への助走を強める役割を果すだろう。いずれにしても、長期にわたった円安相場も最終局面に向っている。