テイカカズラ
   


日韓通貨当局が12月1日、100億ドル(約1兆4800億円)規模の通貨スワップ協定を締結した。ウォンと円をやりとりする方式ではなく、全額ドル交換ベースで行われるという。日韓通貨スワップ協定が復元されたのは8年ぶりである。

 

日韓通貨スワップの実質は、日本による韓国への信用補強である。日本には、米ドル資金調達において日米通貨スワップ協定が存在する。この協定は、期限・金額が無制限で実施されるので、日本が韓国に対して米ドル資金調達で要請を行う必要は全くないのだ。こういう意味で、日本が韓国との通貨スワップ協定を結ぶメリットは無い。日韓間の貿易の大半は、「円建て」で行われている。韓国ウォン相場の不安定化が起こっても、日本企業に与える直接的な影響は限定的である。


日韓通貨スワップ協定は、2001年から14年まで継続されたが延長されなかった。理由は、韓国による竹島不法占拠やウィーン条約違反である日本大使館、領事館前の慰安婦像撤去を約束した合意を履行しないことが政治的摩擦を引き起こしたもの。そういう経緯がありながら、今回の復活は日本が過去のいきさつを水に流す大乗的見地による。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月12月1日付)は、「日韓が通貨スワップ協定再開、8年ぶり融通枠100億ドル」と題する記事を掲載した。

 

日本と韓国の両政府は1日、金融危機の際に通貨を融通し合う通貨交換(スワップ)協定を締結した。協定は2015年に失効しており、8年ぶりの再開となる。融通枠は100億ドル(およそ1兆4800億円)で、期間は3年に設定した。6月に都内で開いた経済・金融問題を協議する閣僚級の「日韓財務対話」での合意に基づき結んだ。

 

(1)「協定は、金融危機などの際にどちらかの国で足りなくなった外貨をもう一方が支援する。主にドルを対象とする。供給を受けて自国の通貨を買い支えて過度な下落を防ぐ対応がとれる。1990年代後半のアジア通貨危機をきっかけに、当初は韓国を支援する枠組みとして2001年に運用を始めた。日韓の関係悪化で15年に失効した。3月に韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が来日し、首脳が相互に訪問し合う「シャトル外交」の再開で一致した。協定再開への機運が高まっていた」

 

日韓両政府が政治面での関係改善に続き、経済面でも蜜月を演出している。8年ぶりに再開する通貨スワップ協定は金融危機時の備えだが、現状での必要性はそれほど高くない。日韓の結びつきは、半導体の確保や観光客の往来などで強まっており、政府主導の関係改善で経済を後押しする狙いがある。

 

ただ、将来の問題を考えると、韓国の金融構造が脆弱であることから「通貨危機」に遭遇する危機は絶無とは言いがたいのが現実である。韓国ウォン相場は、米韓金利差から米国金利に左右される通貨である。米国経済は、現在の高金利が引下げられるとしても、従来の金利に戻ることはない。となれば、韓国の人口高齢化と企業の海外脱出からみて、傾向的に金利を引下げねばならない立場だ。韓国ウォンは、慢性的に「売られやすい」通貨になるリスクを抱えるだろう。

 

こうなると、日本がウォンの支え役という立場になることになりかねない。ただ、韓国が反日的言動を始めたら、いつでも通貨スワップ協定を切り上げる必要がある。今回の協定では3年間である。ユン大統領の任期に合わせた形だ。次期政権が右派であれば継続するが、左派になればいつでも打ち切る姿勢をみせておくべきだ。

 

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2023-11-30

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