日本では目下、春闘による賃上げが景気の本格回復の鍵を握るとして最大の関心事になっている。同時に、減少していく労働力をいかに効率的に活用するかも重大問題である。欧州では、離職者対策として「週休3日制」が真剣に検討され、実行に移されている。
日本では、22年10月に政府のワークライフバランス改善要請を受け、パナソニックが従業員6万人余りに対してより柔軟な働き方と週労働日数の削減を導入した。会社側が、提示した選択肢のうち一番人気を集めたのは、従来と同水準の給与をもらいながら、勤務時間をより長めにして週4日に詰め込むパターンであることが分かった。日本でも、週休3日制が定着する可能性を持っている。
『ロイター』(1月28日付)は、「『週休3日』の経済効果、燃え尽きず生産性向上」と題するコラムを掲載した。
労働日数の短縮は、生産性を向上させる鍵になるかもしれない。レイバンで有名なイタリアの眼鏡メーカー、エシロール・ルックスオティカや、英日用品大手ユニリーバなどは現在、週労働日数を減らす実験を続けている。売上高の増加につながり、バーンアウト(燃え尽き)率と離職率の急低下をもたらしている。
(1)「北欧のアイスランドが2015年、いち早く週4日労働制度を導入して4年間続け、国民の大半の働く時間を減らす道筋を示した際に、規模のより大きな国や大手企業はほとんど注目しなかった。しかし、新型コロナウイルスの世界的な流行で働き方が変化し、一部の経営者や政治家は考えを改めるようになった。実際に打ち出された改革措置は多種多様で、労働日を減らす代わりに1日の勤務時間を増やすやり方もあれば、完全に労働時間を減らす手法も採用されている」
アイルランドが、2015年に始めた週休3日制は世界的な働き方改革の流れに乗って認知されてきた。
(2)「このような変化は、ホワイトカラー層を超えて広がりつつある。イタリアのスポーツカーメーカー、ランボルギーニは同国北部の工場で働く2000人に週労働時間の柔軟化を認める方針だ。欧州の自動車業界では初の試みで、労働者はシフトの割り振りによって週5日を週4日の勤務に転換できる。給与はそのままで、年間労働日数が22─31日減ることになる。ベルギーは22年から労働者が勤務時間を延ばして週労働日数を4日に圧縮することを認めているし、スペインと南アフリカは現在、政府が後押しする形で労働日数削減を試験的に取り入れているが、まだ世界の主流にはなっていない」
「週休3日制」は、ホワイトカラーから労働現場にも広がっている。ベルギーの労働者は、1日の勤務時間を延ばして、週労働日数を4日に圧縮する方法を選択できるようになった。
(3)「各種試験の良好な結果を踏まえ、事態は間もなく変わるのではないだろうか。労働日数削減が従業員に好まれる傾向にあるのは当然だ。イタリアの銀行最大手インテーザ・サンパオロは23年1月から1日9時間の週4日勤務を可能としており、対象従業員の7割に当たるおよそ4万人はこの働き方をずっと続けることを決めた。エシロール・ルックスオティカもイタリアの生産現場の従業員に4月から週4日勤務で年間労働日数を20日減らす制度を認め、圧倒的な数の従業員がこれに賛同している」
イタリアの銀行最大手では、23年1月から1日9時間の週4日勤務を可能とした。従業員の7割に当たるおよそ4万人は、この働き方を選択している。
(4)「経営者にとっても、この仕組みはありがたいはずだ。英国では22年、労働日数を短縮する試験プログラムが半年間実施され、参加した61社(大半は中小企業)の売上高は21年6~12月に比べて平均で35%増加した。コロナ禍後の業況改善も一因とはいえ、目に見える効果だ。同時にこれらの企業の従業員の71%からは、仕事による消耗度が減ったとの報告があり、離職率も前年同期比で57%低下した。こうした中で22年には、ユニリーバがニュージーランドで試験導入した労働日数削減で従業員のストレスが低下し、勤務時間中の活力が増したという結果を受け、オーストラリア工場にも週4日勤務を適用している」
英国では22年、労働日数短縮プログラムが半年間実施され、参加61社の売上高が35%も増えている。従業員の7割は、仕事のストレスが減ったとし離職率が57%も低下した。半世紀も前の大学授業で、いずれ「労働が、『楽働』になるだろう」と教室の黒板に書いた先生がいた。この「予言」が、こういう形で実現するとは予想もできなかった。
(5)「最大の恩恵を受けるのはマクロ経済だろう。週平均労働時間が既に32時間まで減少しているオランダは、生産性の尺度となる1時間当たり国内総生産(GDP)が80ドルで、週平均労働時間が約36時間の英国(59ドル)を大きく上回っていることが、国際労働機関(ILO)の分析で示された。週平均労働時間が34時間のドイツとデンマークの1時間当たりGDPはそれぞれ68ドルと78ドル。21年の日本における調査からは、長時間勤務と残業はチームの生産性に打撃を与えるが、勤務時間が減ると逆に生産性は上がることが分かる」
日本の労働生産性は、国際的にも低いことで有名である。賃金水準の低さが主因だ。ただ、働き方を変えることでこの「汚名」をそそぐことができる。長時間労働は、生産性向上の障害であることが明らかになってきたのだ。


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