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欧米のヘッジファンドは、中国恒大集団の経営破綻で大きな教訓を得た。中国社会が、全く異質の経済ルールで動いていることに気づかされたのだ。債券1ドルが、無担保債券ゆえに今やわずかの1セントだ。世界の経済大国を名乗る中国が、土壇場でみせた欧米投資家への裏切りは、決して一過性の問題に止まるまい。歴史的な教訓として語り継がれていくであろう。中国企業の無担保債券へ「手を出すな」である。 

『ブルームバーグ』(2月9日付)は、「ヘッジファンド、中国恒大から痛い教訓-額面1ドルで1セントに沈む」と題する記事を掲載した。 

欧米のヘッジファンドにとっては、中国不動産開発大手、中国恒大集団の社債は魅力的なディストレスト債取引のように見えた。デフォルト(債務不履行)となった190億ドル(約2兆8400億円)のオフショア債に対し、資産は2420億ドル。中国政府も低調な不動産市場のてこ入れを決意しているように見受けられ、利益を上げる条件はそろっていると考えられた。このため、ヘッジファンドは高いリターンを得ようと、恒大債に資金を投じた。

 

(1)「2021年末のデフォルトから約2年。代わりに得たものは、中国共産党と交渉しようとする危険性を巡る厳しい教訓だった。香港高等法院(高裁)は先月29日、中国恒大に清算を命令。恒大債はほぼ無価値となっており、流通市場では額面1ドルに対しわずか1セントで取引されている。グローバルな運用会社は、中国政府が先進国ではあまり見られない形で企業の問題に影響力を行使するということ自体は知っていた。それでも、中国当局が政治的・経済的な都合でどれほど介入してくるのか、中国恒大の件で多くが身をもって知ることになった。碧桂園など他の中国企業が恒大に続いてデフォルトに陥る中で、額面1ドル当たり1セントで取引される恒大債は、投資家に対する警鐘になると関係者は話す」 

中国政府は、恒大集団の経営問題が起こった当初から外債保護に無関心だった。国内債権者保護を優先したからだ。これは、余りにも近視眼的な振舞であった。中国という国家の信頼を損ねていることに気づかなかったのだ。 

(2)「債券保有者に不利となる企業行動への対応に取り組む投資家組織、ザ・クレジット・ラウンドテーブルでチェアを務めるデービッド・ナットソン氏は、「投資家は国家介入のリスクを恐らく十分に理解していなかった」と指摘。「国内と海外の債権者間の損失配分は政治色を帯びることになるだろう」と語る。無論、恒大債の暴落を招いた原因は政府による関与だけではない。深刻化する不動産市場の低迷や7兆ドル相当の株安、不十分な政策対応など、いずれも全般的な地合いの重石となっている。中国恒大が保有する資産の大半が、すでに差し押さえられているか香港には存在しないのだ」 

恒大のオフショア債権者は、わずかな分配しか期待できない状態だ。資金を、ドブに捨てたも同然の結果となった。この代償は、中国の信頼低下である。何倍かの損失なって帰ってくるだろう。

 

(3)「一連の交渉に詳しい関係者は多くの不満を挙げたが、ほぼ全員が中国恒大の指揮を誰が執っているのか明確でないという点を指摘した。中国恒大がデフォルトに陥った直後、本社を置く広東省の政府当局者を中心とするリスク管理委員会が、抜本的な見直しを指導するために設けられた。同省はこの年、恒大の内部統制と経営を強化するため、作業グループを派遣することも明らかにしていた」 

中国は、恒大のデフォルト後の交渉相手が誰かという肝心な点が不明という、決定的なミスを冒している。これは、中国に誠意がなかったことを示している。 

(4)「交渉の過程では、中国恒大の担当者が事実上全ての重要な決定を精査する責任があるとして、広東省の省都である「広州」(注:地方政府)に言及することもあったが、債権者にはどの組織や個人の組み合わせを示唆しているのか分からないままだった。広東省関連のグループがオフショア債の交渉に関わる人々と直接やりとりすることは一度もなかった、と関係者は明かす。意見は、中国恒大の財務アドバイザーを務める中国国際金融(CICC)と中銀国際(BOCI)に伝えられ、香港と中国本土の弁護士やアドバイザーから成る複雑な伝達網を通じ、債券保有者にようやく情報が渡るという流れだったという」 

恒大側の交渉相手が誰であるかを明かされないままに、「天の声」がもたらされたという。債務側として、あり得ない不誠実な態度である。最初から、まともに弁済する意思がなかったのであろう。

 

(5)「プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社、開源資本のマネジングディレクター、ブロック・シルバーズ氏は「実質的に支払い不能の不動産開発会社が政治的に緊張した本土で債務返済に苦労する中、当局が価値ある本土資産の確保をオフショア債権者に認めることはないだろう」と指摘。「発展途上の中国クレジット市場にとって、これは深刻な後退だ。外国資本はより低リスクの資産を求めるようになっており、市場心理の悪化に拍車を掛けるだけとなる恐れがある」と述べた」 

下線分を言い換えれば、今後の中国の無担保外債発行には高い壁がつくられる。高金利と短期間返済が条件になる。間違っても無担保での長期債券引き受けは、リスクが高すぎるのだ。