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21世紀は、アジアの時代と喧伝されたが、その足元から高齢化の警戒信号が上がってきた。年金制度も完備していないなかで、このまま「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」と老齢化が進めば、日本への労働力供給も減るほかない。

 

『日本経済新聞 電子版』(2月10日付)は、「東南アジアに迫る『日本並み』高齢化、年金など備え脆弱」と題する記事を掲載した。

 

東南アジアに老いが迫っている。生産年齢人口(15〜64歳)が全体に占める割合は2024年に低下に転じる見通し。今後、高度成長期以降の日本のような高齢化の波が押し寄せる。若さで回ってきた国々だけに備えは乏しい。一般的な定年が早いうえに公的年金のカバー率は4分の1ほどにとどまる。シニア層が安心して暮らせる安全網の構築や、希望に応じて働き続けられる環境整備が課題になる。

 

(1)「ベトナム最大都市のホーチミン市は1月、最大32万人の労働力が24年に不足すると発表した。米企業が建設する半導体工場もあおりを受ける。米側の担当者は「数十億ドルの投資に必要な技術者数には全く至っていない」と漏らす。人手不足は一過性ではなく構造問題として続く公算が大きい。国連の推計では東南アジア11カ国の生産年齢人口比率は23年の68%で頭打ちとなり、下り坂に入る。タイは13年、ベトナムは14年に既にピークを迎えた。30年には域内最大で世界4位の2億7000万人の人口を抱えるインドネシアが峠を越す。豊富な労働力が経済を押し上げる人口ボーナス期の終幕だ」

 

ベトナムで、24年に労働力が24万人不足するという試算が出た。ベトナムでの半導体工場建設に必要な技術者が、全く足りないという事態を迎えている。

 

(2)「アジア全体で65歳以上の割合は2019年に「高齢化」の節目の7%を超えた。43年には「高齢社会」の区分に入る14%へ達する。24年間での移行は、かつての日本(1970〜94年)と同じ急速なペースだ。もちろん国によってばらつきはある。平均年齢をみるとシンガポールは41.5歳と日本や欧州の主要国と同じ40代に上昇している。フィリピンは29.3歳とまだ若い。いずれにせよ遅かれ早かれ高齢化が待つことは変わらない。働き手としても消費者としても経済を支えてきた層が順次、支えられる側に回る。現状の備えは心もとない」

 

東南アジアが、高齢化社会から高齢社会入りするスピードは、日本と全く同じスピードで進んでいる。これは、東南アジアが間もなく超高齢社会へ突入するサインと読めるのだ。東南アジア全体が、急速に「老いて」いくのだ。

 

(3)「東南アジアでは、年を取っても働くという意識が薄い。タイやマレーシアの一般的な定年は55歳だ。日本総合研究所の熊谷章太郎氏は「東南アジアは介護保険制度などの対応も遅れている。将来、政府や家計の負担が急激に増えかねない」と危惧する。定年を官民で段階的に引き上げてきた日本でさえ高齢化の重荷に苦しむ。生産年齢人口比率がピークの1992年に国内総生産(GDP)比で11%だった日本政府の社会保障支出は、その後30年間で25%まで膨らんだ。経済協力開発機構(OECD)の21年のデータによると年金カバー率は、インドネシアやベトナムで2割台にとどまる。比較的高いシンガポールでも5割台で、OECD平均(87%)との差は大きい」

 

日本は、田中角栄首相時代に「国民皆保険」を実施した。東南アジアでは、年金カバー率が、インドネシアやベトナムで2割台にとどまっている。今後の急速な高齢化を考えると。他国のことながらどうなるのか。若者は、日本で働きお年寄り扶養で仕送りをする形が定着するだろう。事前に、そういう環境をつくる必要性が増す。

 

(4)「東南アジアの変化に日本も無縁ではいられない。とりわけ労働力は深く依存してきただけに影響が大きい。23年10月時点の外国人労働者は初めて200万人を超え、国別ではベトナムが約52万人で最も多かった。フィリピンも約23万人で3位。明治大学の加藤久和・副学長は「自国が人手不足になれば日本に労働者を送り出しにくくなる」とみる」

 

東南アジアは、成長の下り坂に入りながら迫り来る老いに備えるという難題に向き合わなければならない。中国も全く同じ条件下にある。日本は、これまで足りない労働力は東南アジアへ依存するという姿勢であったが、それもこれからは難しくなろう。