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株価は経済映す鏡

二束三文で投売り

日本マネーは健在

長征論が経済潰す

 

中国国家主席の習近平氏は、経済的に極めて困難な立場に置かれている。不動産バブルと株価暴落が現在、同時に起こっているからだ。習氏は、この両者を別物として扱っているが「同根」である。

 

住宅問題の真相は、住宅ローンを支払っても住宅が消費者の手に渡らないという事実にある。住宅ローンを支払っている消費者へ、先ず竣工した住宅を引き渡すことだ。こういう解決策の「イロハ」を履行せずに、新たに住宅販売条件を緩和したところで、効果は上がるはずもない。なぜ、こういうことに気づかないのか。

 

中国政治の本質的な問題はここにある。習近平氏は、国家主席3期目発足に当たり、周囲を側近で固めた「お友達政治」となっている。「イエスマン政治」だ。この弊害が、中国の経済運営を麻痺させている。従来の集団合議制が廃止されて、習氏一人への権力集中が政策論争とアニマル・スピリットを消し去った。習氏の顔色をみながらの政策決定では、現在の混乱を解決することが不可能であろう。

 

株価は経済映す鏡

中国経済は、2024年に入って住宅不況と株価下落が鮮明になっている。もともと、2021年以降の住宅販売不振は、株価停滞を招いてきた。その関係が最近、さらに顕著になっている。住宅部門が、中国GDPの約2割を占めている以上、この両者が連動するのは当然なのだ。

 

習氏は、株価対策として空売り禁止や国家機関に株価テコ入れをさせることで、急場を凌ごうとしている。これは、一時的な効果にしかすぎない。株価は経済を映す鏡である。この古くから言いふるされてきた言葉に従えば、中国経済が病んでいるから株価も低迷しているのだ。まずは、中国経済の黒点である住宅不況=未竣工住宅問題を解決することから始めるべきである。

 

この段階で、中国政府は次へ進めなくなる。財政資金投入=財政赤字拡大になることを極度に恐れているからだ。傍からみていると「滑稽」にすら感じるほど、財政赤字拡大に怯えている。政権喪失に繋がると信じているからだろう。習氏を初めとする指導部の中に、西側の大学で経済学教育を受けた人々は存在しない。こうなると、経済が「産業連関」という編み目によって繋がっているという認識を持つこと自体が不可能である。「風が吹けば桶屋が儲かる」のは、この産業連関を簡単に言い当てているのだ。

 

「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、大風が吹くと砂ぼこりが立ち、その砂で目を傷める人が増え、目の不自由な人は三味線をひくから、三味線に張る猫の皮が不足する。猫が不足すれば鼠(ねずみ)がふえて、あちこちの桶がかじられるから、桶屋が儲かるという経緯である。つまり、風が吹くことによってあちこちで新たな需要を生み出し、経済活動を刺激するのだ。

 

政府が、3000万戸とされる未竣工住宅を完成させれば、消費者の不安心理が取り除かれる。これによって、個人消費を増やし経済全体の底上げへ寄与する。仮に、消費が思ったほど増えなくても住宅に関する「不満」は消えるはずだ。それだけでも大きな成果である。中国指導部は、こういう経済の連関関係を理解できず、「財政赤字=共産党失政」と受け取っているのだ。

 

中国共産党は、19世紀後半のマルクス経済理論を「金科玉条」として崇め奉っている。21世紀の現代に通用するはずがない。こうした現実の動きを見落としているところに、中国の衰退過程突入をいやが上にも認識するほかないのだ。中国共産党が存続する限り、中国経済はこうした「無知」の桎梏から解き放たれることはないであろう。「宿痾」である。

 

二束三文で投売り

中国不動産業界は、過去の住宅好況をテコとして英国や豪州などで不動産投資を積極的に行ってきた。今それが、一斉に売却して現金化する動きとなって逆流している。

 

日本のバブル時に有名になった例では、三菱地所が1989年に8億4600万ドル(当時、約1200億円)で買収したニューヨークのロックフェラー・センターがある。日本企業による国外不動産買い漁りの象徴とされた。だが、この案件以外にジャパンマネーの買い漁りはなかった。これだけでも、中国不動産バブルの規模がどれだけ大きいかを推定できるであろう。

 

中国の投資家とその債権者は今や、世界中に保有する中国不動産を売りに出している。中国国内の不動産危機が深刻化する中で、資金調達の必要性が高まっている結果だ。相場下落を承知で、「売り出し中」という看板を掲げるほどの窮迫状態に置かれている。

 

先進国の商業用ビルは現在、在宅ワークの普及でオフィス需要が大きく落ち込んでいる。加えて、金融引き締めの影響で商業用不動産価格が下落している。こうして、中国が海外で売り出している物件は、足元を見られておりさらなる値引きをしても、簡単に売却先が見つからない状態となっている。(つづく)

 

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