テイカカズラ
   

習氏は、「繁栄する中国、衰亡する米国」と中国国民へ吹聴していた時期もあった。今や、まったく色あせたものになっている。世界のシンクタンクも、過去の成長率を単純に未来へ延長して、習氏の発言を「援護」する形になった。だが、現状は中国にとって「逆夢」になって覆い被さっている。習氏はいまや、なんともばつの悪い思いでいることだろう。

 

『朝鮮日報』(2月12日付)は、「『中国経済が米国を超える』という『中国の夢』は悪夢と化した」と題する記事を掲載した。

 

(1)「『2028年には中国が米国に追いつき、世界1位の経済大国になるだろう』。新型コロナウイルス感染症の流行がピークだった2020年末に示された見通しだ。英国のシンクタンクである経済ビジネスリサーチセンター(CEBR)は当時、「中国は他の先進国とは異なり、コロナにもかかわらず、景気低迷を経験しなかった」とし、「初期防疫の成功だけでなく、攻撃的な経済政策、米国より4倍多い人口のおかげで、中国は近い将来世界トップの経済大国になるだろう」と指摘した」

 

過去の成長率を単純に未来へ延長する予測法は、百害あって一利なしだ。過去の中国のGDP1位論は、全てこの類いである。中国が不動産バブルに踊っていたという現実を見落とし、あたかもこれが正常な経済活動と誤解錯覚したことが間違いの原因である。日々、中国の経済をウォッチしていれば、こういう事態に気づいたはずだ。

 

(2)「翌年の21年に中国の経済規模は米国の76%まで追いついた。12年には米国経済の約半分の規模だったが、わずか10年足らずで4分の3の規模にまで追い上げた。それが、ピークだった。その後は2年連続で米中の格差が再び広がり、昨年の中国経済の規模は米国の64.0%にまで縮小した。コロナが終われば急回復するとみられた中国経済が構造的低迷に陥ったのに対し、米国は力強い消費と人工知能(AI)などさまざまな新技術をターゲットに世界から集まる投資を追い風として、予想を上回る成長を繰り返している」

 

日本が、対GDP比で米国へ最も接近したのは、偶然のことだが70%台である。日中経済が、不動産バブルという「竹馬」を履いても米国経済への接近で大きな壁によって突き放されている。最大の要因は、米国GDPの7割が個人消費によって支えられている現実だ。米国の個人の経済力の大きさが、日中経済を寄せ付けないのだ。習氏は、国民を大事にしなければならないという教訓である。

 

(3)「一時、世界の経済成長をけん引した中国は、真逆の道を歩んでいる。国内総生産(GDP)の25%を占める不動産市場が低迷する中、物価も昨年10月から3ヶ月連続マイナスを記録するなど、デフレに苦しんでいる状況だ。昨年5.2%成長し、今年も4%台半ばの成長が予想されてはいるが、人口までもが22、23年に2年連続減少したことが分かり、構造的成長鈍化に対する懸念が高まった。13年に習近平国家主席が政権を掌握し、中華民族の復興という「中国の夢」をビジョンに掲げ、米国の覇権に挑戦しようと奮闘したが、過去の中華帝国の名声を取り戻す前に、中国の夢が悪夢と化す危機に直面したのだ」

 

「中国の夢」などは、永遠に到来しない。共産主義は、個人を弾圧している以上、経済的に伸びる余地がないからだ。これから迫り来る超高齢社会の重圧によって、これまで弾圧してきた個人の反抗に直面するだろう。

 

(4)「1月16日に開かれた世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で、中国の李強首相は「23年は浮揚策なしで5.2%成長した。中国式で成長する」と述べたが、わずか1週間後に中国政府は2兆元(約42兆円)規模の証券市場安定基金投入と銀行の支払準備率0.5%引き下げなどの資金供給措置を打ち出した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「こうした突然の態度変化の背景には、景気に対する懸念がある」と指摘した。ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のアダム・ポーゼン所長はブルームバーグに対し、「習近平主席がコロナ期間に経済・社会全般にわたり恣意(しい)的かつ権威的な権力を行使し、その結果として、家計と企業がカネを使わずに積み上げている」とし、「経済的コロナ後遺症を体験している」と指摘した。強力なコロナ封鎖政策が経済体力をそぎ、長期不況を招いたという意味だ。

 

ここでは、不動産バブル崩壊という構造要因を全く取り上げていないのが不思議である。この視点を欠いた中国経済論には正鵠を期せないからだ。主因を避けて、枝葉の議論をしても生産的議論は進まぬであろう。