中国3000年の歴史は、不況深化によって引き起こされる大衆蜂起である。習近平氏は、毛沢東が創設した企業内の予備役部隊を相次いで復活させている。民衆による政治への怒りを事前に鎮圧させる狙いだ。選挙で選ばれていない共産党の恐怖感を見せつけている。
『フィナンシャル・タイム』(2月20日付)は、「中国の企業、毛沢東時代の予備役部隊を相次ぎ設置」と題する記事を掲載した。
中国の国有企業の間で、毛沢東時代の遺産である企業内の予備役部隊を設置する動きが広がっている。中国経済が減速するなか、社会的・政治的不安に対する当局の懸念が高まっていることの表れだとアナリストらは指摘している。
(1)「フィナンシャル・タイムズ(FT)が2023年の企業発表や国営メディアの報道を分析したところ、中国の国有企業数十社がここ数カ月で「人民武装部」を新設していることがわかった。この組織は歴史的にみると、毛沢東時代に県や村レベルで人民解放軍の募集に携わってきた。現在は一般的に民間防衛のほか、軍の募集、広報活動、訓練に従事している。専門家らは、企業内の人民武装部の台頭について、外国の敵に対する軍事動員の準備の兆候とはみなさないように釘を刺している。むしろ、中国経済の成長がここ数十年で最低のペースとなるなか、習近平(シー・ジンピン)国家主席が安全保障を重視する姿勢を強めていることや、社会が不安定化するリスクを懸念していることを反映したものとみられるという」
長期の不況で雇用不安が高まっている。これが、治安不安を招くということ自体、中国政治の不安定性を見せつけている。習近平氏は、不安でたまらないのだ。これは、相当の「神経過敏症」に陥っている証拠だ。
(2)「米シンクタンク、ランド研究所のティモシー・ヒース上級国際防衛研究員は「こうした人民武装部の立ち上げは、国内社会の安定に対する指導部の懸念の表れ」だと指摘する。「非常に多くの企業で一斉に設置されているため、トップダウンの指示であることはほぼ間違いない」という。また、人民武装部は愛国心を促進し、中国共産党の指令の順守状況を監視しながら、企業と社会、治安部隊の間の連絡役として国内の治安維持に重要な役割を果たすこともあり得ると同氏は付け加えた。中国の乳製品最大手で民間企業の内蒙古伊利実業集団(伊利)は、23年末に人民武装部を設置した。同社が本社を置く内モンゴル自治区の民間企業としては初の設置となった。国営メディアは1月、ニュージーランドに複数の乳業会社を所有する伊利が「平時には職務に就き、緊急時には対応し、戦時には戦う」防衛部隊を構築していると報じた」
内モンゴル自治区の乳業メーカーまでが人民武装部を設置した。建国後に編入した地域だけに、将来の「謀反」を警戒している証である。
(3)「シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院の中国専門家ジェームズ・チャー氏は、人民武装部への関心が再び高まっているのは「中国共産党による一党独裁国家が『発展』よりも『安全保障』を重視」しているためだと指摘した。この傾向は少なくとも17年に始まった習氏の2期目以降にみられるという。伊利による人民武装部の設置はその傾向に沿ったものと考えられるという。中国東部・浙江省の人民武装部に所属する人物は、匿名を条件に取材に応じ、自身の部隊は主に軍事訓練と新兵募集に力を入れており、時には学校で軍事をテーマにした授業もあると語った。中国国営通信新華社が伝えた声明によると、同国国防省の呉謙報道官は23年10月、国有企業に人民武装部を設置することは「国防の義務を果たし、国防を強化する」ために必要だと述べた」
中国共産党の存在が、民衆の動揺・不安に対していかに脆いかを示している。一般国民は、共産党を支持していないのだ。「占領軍意識」でみているのだろう。
(4)「ランド研究所のヒース氏は、大部分の中国国民が毛沢東思想や改革開放前の共産主義にほとんど関心がないことを共産党指導部は理解しており、それを考えると人民武装部の設置が急増している事態を「本当に驚いている」と語った。「人民武装部は主に毛沢東時代の兵員募集に関係する組織で、当時の共産党は国民の政治的活動を指揮することにはるかに積極的だった」という。「鄧小平氏が同党を現実的で市場寄りの改革の方向へと導いて以来、この種の活動はかなり衰退していた」
習近平氏は、国家主席就任に当たり最大の関心事が、「共産党員」と言ってのけた人物である。習氏の使命は、国民の生活向上よりも共産党を維持することにある以上、企業に予備部隊をつくらせるのは当然であろう。習氏は、追込まれている。


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