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太陽光発電では、フィルム状の超極薄電池「ペロブスカイト」が、日本発技術で商品化される。政府の支援で、2年以内の実用化を目指す「国策事業」だ。曇りや室内の薄日でも発電可能という新技術である。

 

日本政府は、ペロブスカイト電池の量産を支援するため、600億円超の予算を計上している。現在の太陽光発電では、シリコンが使われている。日本が開発する「ペロブスカイト太陽電池」では、このシリコンを使わずに日本国内で豊富なヨウ素が主要素材になる。日本は、ヨウ素で世界2位の資源国だ。ペロブスカイト太陽電池の技術と資源を擁して、太陽光発電で世界トップの座を目指す。

 

『日本経済新聞』(2月23日付)は、「曲がる太陽電池、寿命20年へ 名大「シリコン」みにメド 従来比4倍 普及後押し

 

名古屋大学は折り曲げ可能で安価に作れる太陽電池「ペロブスカイト型」の寿命を24倍に延ばす技術を開発した。約20年と主流のシリコン型並みにできる。企業と製造法を工夫して2020年代後半の実用化を目指す。温暖化ガス削減に貢献する次世代太陽電池の普及を後押しできる。

 

(1)「ペロブスカイト型は塗料のような材料をフィルムやガラスの基板に塗って作る。製造コストはシリコンの結晶を成長させて作るシリコン型の半分にできるとされている。基板に薄いフィルムを使えば重さは10分の1にできる見込みだ。軽くて曲げられるため、これまで取り付けが難しかった建物の壁や湾曲した屋根などに設置できる。発電に使える場所が広がり、温暖化ガスの削減に役立つため、国内外の企業が量産を始めている。ペロブスカイト型は主要な3層を有機物などで作る。水分や酸素、光に弱く、劣化しやすいため、屋外に設置した場合の寿命は5~10年程度でシリコン型の半分以下とされる」

 

ペロブスカイト型太陽光発電は、屋内の微光でも発電可能である。ただ、屋外設置では耐用年数が5~10年程度でシリコン型の半分以下とされる。この問題点が解決した。

 

(2)「普及させるには太陽光を受けて発電する発電層、電子を運ぶ電子輸送層、正の電荷を運ぶ正孔輸送層の劣化を防止し、耐久性をシリコン型と同等に高める必要がある。名古屋大の松尾豊教授らは電子輸送層に着目して、レゾナックと協力して耐久性を高めた。従来は炭素原子60個からできている「フラーレン」と呼ぶ素材で作っていたが、時間がたつと分子が塊になる。塊と塊の間に隙間が生じて、電子を運ぶ性能が下がる課題があった。そこで、フラーレンに酸素原子などをくっつけた新素材を電子輸送層に使った。フラーレン分子が塊になりにくくなるほか、水分などに触れて生じる劣化も防止できる。性能を確かめるため、真空中で原料を蒸発させて素材を堆積させる真空蒸着を使い、発電層の上に電子輸送層の膜を作り、1.5センチメートル角の太陽電池を試作した」

 

フラーレンとは、1985年に発見された炭素原子60個で構成されるC60など多面体の総称である。このフラーレンにいち早く注目したのが三菱商事で、その物質特性を生かして二つの会社を立ち上げた。一社は工業分野での事業化を目的に、三菱化学とともに2001年に設立した会社で、次世代の太陽電池のペロブスカイトの素材である。名古屋大学の研究では、このフラーレンに酸素原子などをくっつけた新素材を利用する。

 

もう一社が、2003年に設立されたビタミンC60バイオリサーチ株式会社だ。ライフサイエンス分野での研究開発及び事業化を進めており、現在は、フラーレンの「抗酸化力」を生かして化粧品市場にフラーレン化粧品原料を供給している。

 

(3)「試作した太陽電池をセ氏25度の環境に置いた。16日後も太陽光を電気に変える変換効率はシリコン型並みの22%を維持した。温度をセ氏70度に上げても、変換効率は11日後に当初の9割にあたる20%を保った。一方でフラーレンを使う従来型は14%に低下した。松尾教授は「フィルム基板の上で封止して水分などの侵入を防げば、従来の2倍の20年の寿命実現につながる」と話す」

 

フラーレンに酸素原子などをくっつけた新素材によって、屋外での耐用年数を従来の2倍である20年に伸したペロブスカイト太陽光発電パネルが可能になった。

 

(4)「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は政府のグリーンイノベーション基金事業で21~25年度にかけて太陽電池の大型化や封止技術の開発を支援している。積水化学工業や東芝、カネカなどが研究開発を進めている。30年度までに一定の日射条件などのもとで、産業向け電気料金並みの1キロワット時あたり14円の発電コストを目指す。資源エネルギー庁はペロブスカイト型の開発と普及を後押し日本全体で二酸化炭素(CO2)の排出量を30年に年約60万トン、50年に同約1億トン削減できると試算する。経済波及効果は30年に約125億円、50年に約1兆2500億円に達すると見込む」

 

政府は、30年度までに一定の日射条件などのもとで、産業向け電気料金並みの1キロワット時あたり14円の発電コストを目指す、としている。日本にとって、「脱炭素」の大きな技術革新になる。