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日経平均株価は、22日にバブル期に付けた最高値3万8957円44銭を突破した。一方で、円相場は1ドル=150円台と異常円安局面にある。日本は、「強い株価と弱い円」というパラドックスに見舞われている。この背景は何か。日経平均株価は米国株価の高騰による「アベック相場」的側面も現れている。円相場は、ドル高によって円安へ引き寄せられている。こういう二重構造が生み出した現象とみるべきだ。 

『ロイター』(1月22日付)は、「強い日本株と弱い円 いつまで続くのかー熊野英生氏」と題する記事を掲載した。第一生命経済研究所主席研究員・熊野英生氏の寄稿である。 

日本のマーケットは、1)強すぎる株価が実体経済の弱さと釣り合っていない、2)日銀が緩和修正に動くのに円安基調が続いてしまう──という2つのねじれを抱えている。 

(1)「私たちはたとえ違和感がある世界に生きていたとしても、頭の中で何か整合性のとれる理屈を描いて、現状を理解しようと努める。それがマーケットの中で生きている人達の習慣とも言える。そこで「弱すぎる円と強すぎる株価」という2つの矛盾を整合的に成り立たせる理屈を提示したい。それは、強すぎるドルと強すぎる米株価という読み替えをすれば、よくわかるのではないか。すなわち、円安基調はドル高基調であり、米長期金利は足元でやや上昇してきている。日銀の内田真一副総裁は、たとえマイナス金利を解除したとしても緩和的な金融環境が続くというメッセージを2月8日の講演で説明した」 

日本は、「弱すぎる円と強い株価」という状況にある。強い株価は、コーポレートガバナンスの改善と中国の抱える地政学リスクによって押し上げられている。熊野氏は、昨年下半期の実質GDPがマイナスを理由に「強すぎる株価」と判断している。この点で、私と見方が異なる。

 

(2)「これで、米国での利下げによって米国経済が回復して、先々はドル高に向かうという思考に多くの市場関係者が見方をシフトさせていった。「円高要因<ドル高要因」への移行だ。強すぎる米株価は、もはや説明を要しないだろう。まさしく米国経済独り勝ちである。政策金利を5.25%も引き上げたにもかかわらず、景気は腰折れせず、一方でCPIは上昇率を鈍化させてきた。日経平均株価は、ナスダックやS&P総合500種とほぼ連動して上昇している。その背景には、米株のポートフォリオが膨らむと、日本株への分散投資が進むという原理がある。この分散は、このところ不振の中国株から日本株へのシフトも手伝っている」 

円高要因とドル高要因を比較すれば、米国の高金利がドル高を支えていることは自明である。この米国が、いつ利下げに踏み切るかによって円相場の位置が決まる。

 

(3)「米国経済独り勝ちの結果、世界の株式時価総額に占める米国株のウエイトが半分近くにまでになり、「池の中のクジラ」と化している。分散投資として日本株に向かってくる巨大マネーは、日本株を考えにくいほどに押し上げる。(米国の)「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7銘柄の時価総額だけで、日本株の時価総額の2倍以上になる。このエネルギーは、いずれ日本平均株価が4万円台に向かうと思わせる原動力になっている。以上が、強すぎるドル=弱すぎる円、強すぎる米株価=強すぎる日本株価という構図が成り立っている背景構造となる」 

熊野氏の日本株への評価は、極めて低いことが分る。日本の株高は、米国株高の「おこぼれ」という認識のようだが、これは皮相的というほかない。 

(4)「筆者を含めて多くの読者が知りたいのは「理屈はわかったが、この構図はあとどのくらいの期間続くのか」という論点だろう。2024年内か、それ以上なのか。いや、賞味期限はもっと短いという見方もあるかもしれない。まず、弱すぎる円の方は当分続くとみる。日銀が実際にマイナス金利を解除すると、それなりにドル/円レートは円高に振れるだろう。しかし、円高の滞空期間はそれほど長くないとみる。貿易赤字構造や、企業の直接投資資金が海外へ向かうという流れは、円安圧力として2024年央以降に目立ってくる。日銀も、米連邦準備理事会(FRB)の利下げがドル/円レートに与える影響を見極めようとするから、少なくとも追加利上げは半年間(9月ごろまで)ないと考える」 

弱すぎる円相場は、米ドルの異常高によってもたらされた現象である。ただ、これを「平常ペース」とみるかどうかである。歴史的にみたドル高相場は、転換点に入る時期を超えていると指摘されている。こうした基調が存在するならば、いつまでもドル高を前提にはできないだろう。

 

(5)「焦点は、FRBの利下げが69月のタイミングで行われるかどうかである。結論から言えば、米利下げが仮になくなると「強すぎるドルプラス強すぎる米株価」が成り立たなくなるリスクがある。伏兵が潜んでいるとすれば、米国経済があまりに強くて、パウエルFRB議長が利下げシナリオを実行しないケースではないかと筆者は考えている(その可能性は、まだ低いことは言うまでもない)」 

米国の利下げ時期はいつか。ドル高=円安の転換時期と関わる。ただ、米国自身も読めないほど、米国の好景気が続いていることが不透明要因になっている。