日本は、23年の名目GDPがドイツに抜かれて4位へ転落したことで、外紙のフランス人記者が激辛批評をしている。低成長下で賃金格差が開き、日本は数十年のうちに不満が爆発するかもしれないと言うのだ。
この「感情的発言」は、理論的根拠が極めて薄弱である。日本がGDP4位へ転落したのは、賃金引上げが不十分で消費者物価上昇率が低かったこと。ドル高円安の影響で、ドル表示の名目GDP成長率がマイナスになったことだ。つまり、名目GDPの伸び率が低かったことが主因である。ここを改善すれば、再び成長力を取り戻せる。
『毎日新聞』(2月25日付)は、「GDP世界4位に転落した日本、賃金格差はやがて社会を脅かす」と題する記事を掲載した。フランス人記者フィリップ・メスメール氏の日本論である。2002年に来日し、仏紙『ルモンド』のほか、仏誌『レクスプレス』の東京特派員として活動する。好きな街は東京・神保町。昭和の薫りのするカフェと、最近は数が減りつつある古書店を愛する。
日本はもはや世界第3位の経済大国ではない。2月15日に内閣府が発表した2023年の名目国内総生産(GDP)の速報値によると、日本はドイツに抜かれ、順位は世界3位から4位に転落した。もっともこれはドル換算での数値なので、円がドルに対し、この2年で20%も下落したことの影響を考慮に入れる必要がある。それに日本経済は、対中貿易の減少などで19年以降不振が続くドイツに比べ、好調だ。
(1)「それでもこのニュースは、象徴的なインパクトがあった。日本がゆっくりだが着実に、1990年代のバブル崩壊以来、世界経済の舞台で後退してきていることを決定的にしたからだ。かつてGDPランキング2位だった日本は2010年に中国に抜かれ、早晩インドにも抜かれそうだ。後退の印象は、他の統計にも表れている。賃金だ。厚生労働省が2月6日に発表した毎月勤労統計調査によると、23年12月の日本人の実質賃金は前年比1.9%減となった。減少は21カ月連続だ。この傾向は続くとみられ、24年度に実質賃金が上向くと予想していた専門家も、今や25年になると考えている。大手企業が発表した賃上げは物価上昇と相殺されている。そもそも大企業の賃上げは正社員しか対象となっていないのが実態だ」
今年の賃上げ率は、企業の意識変化と労働力不足が重なって、「5%以上」が一つの目標になっている。帝国データバンクの調査では、大企業・中小・零細企業をひっくるめて、6割の企業が賃上げし平均4.16%と昨年のほぼ2倍の引上げ予定だ。この背景には、労働力不足という深刻な事態が起こっている。こういう局面を迎えたのは23年からで、今後ますます労働力不足に陥る懸念が深まっている。こうなると、積極的な賃上げが企業存続の条件になるという、従来になかった局面を迎える。
賃上げ余力は、販売価格の価格転嫁力でもある。公正取引委員会は、発注主が零細企業に対して価格転嫁を認めるように書式整備まで行っている。それでも、価格転嫁を認めないケースでは、会社名を公表するという強硬手段まで準備している。政府上げての賃上げ促進体制である。
(2)「後退により最初に苦しめられているのは、パートタイム労働者や契約社員、有期雇用者だろう。総務省が24年1月に発表した統計によれば、不安定な非正規労働者層は、日本の雇用者の37%を占める。多くの企業がこうした不安定な雇用を採用している。厚労省の19年の調査によれば、非正規雇用を取り入れている企業の48.3%が、その理由を賃金または賃金以外のコストの節約のためと答えている。実際、非正規雇用は正規雇用に比べればコストがかからない。同じ内容の労働でも、正規に比べてずっと少ない賃金しか支払われない。解雇も簡単だ。社内の労働組合にも守られていない場合が少なくない。非正規の雇用管理を子会社に任せている会社もある。不安定な雇用者が直面する困難を、いわば親会社が無視できるというわけだ。手厚く守られている正規雇用者に比べ、彼らはほんの少しの権利しか持たない」
賃上げしなければ、労働力が集まらない時代になったのだ。従来のように低賃金で非正規雇用を雇える環境でなくなってきた。このパラグラフで指摘されているのは、過去のケースである。この状態が、今後も続くわけでない。(つづく)


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