中国は、急激な経済成長に伴う生活水準の向上で肥満の成人が激増している。公式データに基づく米投資銀行ジェフリーズの推計によると、中国には肥満の成人が約2億人、太り過ぎの成人がさらに4億人いる。中国は人口が減少しているにもかかわらず、向こう10年余りで肥満の成人人口がさらに1億人増えるとジェフリーズは予測している。
中国はざっと、成人人口の半分が成人病予備軍という異常な事態を迎えている。いかにも抑制が効かない中国社会を象徴したような話だが、習近平氏は中国人の思想統制のほかに「健康管理」も大きな役目になってきた。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月26日付)は、「肥満人口世界一の中国、『オゼンピック』が頼り」と題する記事を掲載した。
(1)「中国は世界で最も肥満人口が多く、この問題の解決のために減量薬に頼る人が増えている。こうした現状が、医薬品売買のグレー市場を勢い付け、中国の消費者が難なく規制を回避して「オゼンピック」を利用できるようになっている。糖尿病治療薬オゼンピックは中国では減量薬としては販売されておらず、2型糖尿病の治療薬として利用されている。しかし、電子商取引(EC)プラットフォームの利用者は、糖尿病と診断されたと申告するだけで、この「奇跡の薬」と呼ばれる注射剤を購入することができる。証明書を提出する必要はない」
糖尿病治療薬「オゼンピック」が、中国では減量薬に使われている。正規の方法ではない。通販で簡単に手に入ることも理由で「奇跡の薬」とされている。1カ月分の投与量のオゼンピックが約139ドル(約2万円)で販売されている。これは、中国の公的医療保険制度を利用した場合の費用よりは高いが、米国で一部のユーザーが毎月支払っている金額(970ドル)よりははるかに安い値段だ。
(2)「米投資銀行ジェフリーズでアジア・ヘルスケア調査担当責任者を務めるクリストファー・ルイ氏によると、オゼンピックの需要を現在けん引しているのは、公的保険制度を利用せず、自腹で購入することをいとわない消費者だ。「減量薬として承認されれば、需要が急増するだろう」とルイ氏は話す。中国国家衛生健康委員会は2017年、「3減3健康」と銘打ったキャンペーンを展開。国民に塩分・油分・糖分の摂取を減らし、健康な口腔(こうくう)・体重・骨格の維持に努めるよう呼びかけた。同委員会は他の政府部門とともに、子どもや青少年の肥満対策にも取り組んでいる。世界保健機関(WHO)によると、中国の肥満の子どもの割合は世界の平均を上回る」
中華料理は、塩分・油分が多く使われている。これでは和食と違って、肥満を奨励するようなものだ。中華料理自体が、不健康の元になりかねない。子どもの肥満も世界平均を上回っている。
(3)「肥満は中国にとって新しい問題ではない。2001年の世界貿易機関(WTO)加盟後、生活水準が向上し、国民がエネルギーの高い食品を多く摂取するようになったことが関係している。中国人民解放軍の装備部門は2014年、兵士の体が大きくなり過ぎて戦車に楽に乗れなくなっていると訴えた。しかし、減量薬のイノベーション(技術革新)は、その解決策を個人の自制心から企業戦略へとシフトさせた」。
人民解放軍は、兵士の体が大きくなりすぎて戦車へ楽に乗れない事態まで起こっている。
こうなると、「やせ薬」が必携になる。
(4)「オゼンピックを開発したノボノルディスクは、同製剤は処方箋に基づいてのみ使用されるべきだと述べている。「われわれは患者に対し、医薬品の有効性と安全性を確保するため、薬は医師の処方箋と使用指針に従い、規制・承認されたルートを通じて入手するよう強く勧めている」と強調する」
オゼンピックを開発したノボノルディスク(デンマーク)は、微妙な立場に置かれている。オゼンピックが、正しく治療用に使用されることを願っているのだ。ノボノルディスクは、日本でも2月22日から販売する肥満症向けの新薬「ウゴービ」が医療で使用される。週1回注射をし、空腹感を軽減させて食事の量を減らすことで、体重減少を促す効果が期待されるという。厚労省は、ダイエットや美容目的で使用しないよう適切な使用を呼びかけている。中国の二の舞を警戒しているのだ。
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