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北海道千歳市で次世代半導体の量産を目指すラピダウは、米国の半導体設計企業テンステレントと協業する。人工知能(AI)向けの半導体分野で協力し、ラピダスが受託生産するという内容だ。これによって、新生ラピダスは発展への大きなチャンスを掴んだ形である。ラピダスは、2ナノ(ナノは10億分の1)メートルのロジック半導体を使ったAI機器を開発する。

 

ケラー氏は、米アップルやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などで、半導体開発に携わった経験を持っている。業界では「天才エンジニア」として有名だ。同氏が率いる企業との協業で、ラピダスの今後の顧客探しにはずみがつくとみられる。

 

『ブルームバーグ』(2月27日付)は、「ラピダス、ケラー氏率いる米企業とAIアクセラレータで協業」と題する記事を掲載した。

 

最先端半導体の量産を目指すラピダスは27日、米アップルやテスラ、インテルなどで先端半導体を設計してきたテンストレントとエッジAIアクセラレータの開発・製造で協業すると発表した。テンストレントは、著名エンジニアであるジム・ケラー氏が率いる米人工知能(AI)関連スタートアップである。

 

エッジAIアクセラレータは、大量のデータを瞬時に処理するAI半導体を使い、生成AIなどにも用いられる。発表によると、テンストレントはエッジAIアクセラレータに使う半導体を開発し、ラピダスがそれを製造する。

 

(1)「日本政府が今月、ラピダスの最先端半導体の設計や先端装置・素材技術の研究開発を担う技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)に最大450億円を支援すると発表した。今回の協業は、この枠組みの中で行われる。ラピダスの小池淳義社長は協業で生み出された技術は生活支援ロボットや産業用ロボット、自動車などの分野での適用が見込まれるとし、「日本を元気にしていく原動力になると信じている」と述べた」

 

LSTC(技術研究組合 最先端半導体技術センター)は日本の官民が、最先端半導体研究のためにつくった研究組織である。LSTC理事長は、ラピダス会長の東哲郎氏だ。組合員である産業技術総合研究所(産総研)、物質・材料研究機構(NIMS)、ラピダス、東京大学、東北大学、東京工業大学、筑波大学、大阪大学、名古屋大学、広島大学、九州大学のみならず、再委託先としてアプライドマテリアルズジャパン、キオクシア、グローバルウェーハズ・ジャパン、SUMCOなど半導体企業も参加する「オール・ジャパン」の頭脳が結集している。これらメンバーをみても分るように、日本の半導体研究陣が総力を上げて、2ナノ半導体研究へ取組む。

 

今回のエッジAIアクセラレータ開発は、日本政府がLSTCへ支出する450億円を利用する。生活支援ロボット・産業用ロボット、自動車などで利用される2ナノ半導体開発が目標となる。

 

(2)「ケラー氏は、ラピダスはスピードを使命としている企業であることなどが協業の決め手になったと明かし、協業により「日本で優位なビジネスを構築する機会を得られる」と述べた。ラピダスは、北海道千歳市に半導体工場を建設中である。米IBMからの技術供与により2027年に2ナノ半導体の量産を目指すと同時に、製品の活用先の拡大や国内外での顧客獲得も狙っており、テンストレントとの協業でラピダスの事業に弾みがつく。日本政府は、半導体の安定供給確保を経済安全保障上の重要課題としており、ラピダスにはこれまで計3300億円の支援を決めている」

 

ケラー氏は、ラピダスが開発スピードを使命としていることに共感している。半導体研究は、まさに時間との勝負である。台湾TSMCは、研究開発を24時間休みなく行っており、こういう企業と勝負するにはあらゆる点でスピードがポイントになる。