中国のネット出前は、日本の2倍の効率とされるが、それだけ労働者が過酷な労働条件に置かれている。1回の配達で、7元(約150円)の収入とされるが、長時間労働で家賃を払えば「手取り」は少ないという。こういうなかで、1000万人が働いている。
『日本経済新聞 電子版』(2月27日付)は、「中国ネット出前、1000万人配達員担う 長時間労働深刻に」と題する記事を掲載した。
中国で飲食店から料理を届ける「フードデリバリー」の拡大が続いている。2023年の市場規模は30兆円を超え、3年間で2倍以上に増えた。美団と餓了麼(ウーラマ)の大手2社で配達員は計1000万人規模に達する。市場の成長は配達員の割安な収入や長時間労働に支えられている面があり、社会保障の整備など課題も多い。
(1)「中国南部広東省の広州市にあるオフィス街では平日昼間、黄色や水色のユニホームを着た多くの配達員が電動バイクで駆け回る。ここ数年、中国各地の都市部で当たり前になった光景で、黄色が美団、水色がウーラマの配達員だ。中国でフードデリバリーは20年からの新型コロナウイルス禍を受けて一気に普及した。行動制限が解除された現在でも、配達料は5元(約100円)程度を払えば、近くの店なら注文後に30分程度で届くという利便性の高さもあって社会に根付いた。調査会社の艾媒諮詢の予測では、23年の中国のフードデリバリーの市場規模は1兆5254億元(約32兆円)で、20年に比べ2.3倍に伸びた。国聯証券は「30年には2兆2000億元を超える可能性がある」と指摘する」
当初の配達料は1回5元程度であったが、現在は7元になっている。
(2)「配達員も増え続けている。美団は22年に624万人の配達員が同社の配達で収入を得たとしており、18年の270万人から2倍以上に増えた。ウーラマでも22年5月〜23年9月に400万人超の配達員が活動したという。フードデリバリーが広く根付いた一方、配達員の置かれた環境は厳しい。広州市で美団の配達員として働く盧さん(19)の収入は配達1件につき7元だ。毎日約30件の配達を手掛けているが、寮の家賃などを差し引くと、1ヶ月の手取りは4000元(約8万4000円)を超える程度という。近隣の工場で働く場合に比べて、同水準かやや下回る」
下線部のように毎日、平均30回の配達をしても手取りは4000元(約8万4000円)を越える程度だ。工場の賃金に比べて、ほぼ同一水準という。
(3)「盧さんは、地元の高校を卒業後に配達員の仕事を約半年続けたが、1カ月後には仕事を辞めて広東省内の故郷に戻る予定だ。「1カ月で休みは2日しか認められず、実家に帰省もできない。配達員の仕事はとても大変だった」と打ち明ける。北京市の非営利団体が21年に中国各都市の配達員300人超に聞き取った調査では、約4割が1ヶ月休み無しだと回答した。現状でも長時間労働や低収入が業界の課題だ。社会保障の整備も不十分で、雇用契約を結ばず、医療保険や失業保険などに加入していない配達員も多いとされる」
1カ月で休みは2日しか認められないという過酷な労働条件である。これでは、社会保障面の保証もないであろう。「使い捨て労働者」である。
(4)「美団やウーラマは福利厚生の充実をアピールするが、十分とはされていない。23年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、国会議員に相当する代表の一部が、配達員の労働環境の改善を提案した。例えば、美団などのプラットフォームがアルゴリズム(計算手法)によって、配達員に迅速な宅配を迫っているとして是正を求めた。中国政府はその後、同社などに対して配達員の権利を守るように相次いで指導して監督を強めた経緯がある。24年の全人代は3月5日に開幕する。再び配達員の労働環境についての提案が出た場合、内容次第では美団などの経営戦略に大きく影響する可能性がある」
政府は、こういうネット出前労働の環境をどのように改善するのか。見て見ぬ振りはできないであろう。
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