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中国の消費者物価は、景気低迷を反映して4ヶ月連続、前年比マイナス状況が続いている。豚肉など激安状態だ。これに目を付けた香港市民は、買い物で隣接の深センへ殺到している。香港ドルは、米ドルに連動している。香港ドル高=人民元安というメリットも加わって、香港市民にとっては「ウハウハ」だが、香港の地元商店街は売上不振で苦しんでいる。 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月28日付)は、「中国で物価下落、香港住民が買い出し旅行で殺到」と題する記事を掲載した。 

中国本土で物価の下落が続いている。これは香港で暮らす人々にとってはありがたいことだが、企業にとっては大きな問題だ。中国の1月の消費者物価指数は前年同月比0.8%下落し、ここ10年余りで最大の落ち込みとなった。

 

(1)「香港では中国との境界を越えて深セン市を訪れ、コストコやサムズ・クラブなどの大型量販店で冷凍食品や安い家具を買い込む人が増えている。香港の企業は中国企業と価格で勝負できず、厳しさを痛感している。「今、街を歩くと、香港の小売業者が大きな苦境に陥っているのが分かる」。前香港財政官の曽俊華氏は最近、ソーシャルメディアにそう投稿した。香港の企業が感じている痛みは、エコノミストがこの1年おおむね議論してきた「中国のデフレは世界の他の地域にどう影響するか」という問いへの一つの答えだ」 

中国のデフレが、一足早く香港を襲っている感じだ。香港市民は、隣接の深センで中国の物価安のメリットを享受している。反面、地元の香港は大きな影響を受けているのだ。 

(2)「経済シンクタンク、ミルケン研究所のチーフエコノミスト、ウィリアム・リー氏は、「この香港の話は、中国に近い国にも当てはまる。サプライチェーン(供給網)がはるかに小さいからだ」と話す。中国と近隣諸国との貿易サプライチェーンの距離が短いということは、価格の変動が製品の長距離輸送に関わるさまざまな企業に吸収されず、より直接的に伝わるということだ。シティグループのアナリストは1月のメモで、東アジアの近隣諸国には中国に対して保護主義的な政策を課す選択肢はないと指摘した。中国は世界貿易において非常に大きな勢力なため、これらの国にとって中国の怒りを買うリスクは冒せない」 

香港と深センの関係は、中国近隣国と中国との貿易関係に置き換えられる。中国の安い商品が、ベトナムなどの近隣国へ輸入されて経済へ大きな影響を与えるからだ。

 

(3)「近隣諸国が、中国の価格下落に抵抗するのが難しいとすれば、中国との統合を進めたい親中派政府が運営する香港にとってはさらに困難だ。香港住民はある程度、米ドルの強さの恩恵を受けている。香港ドルは米ドルに連動しており、香港の事実上の中銀はこの2年、米連邦準備制度理事会(FRB)にならって利上げを続けてきた。一方、中国中銀は低迷する経済を刺激するため利下げを行っている。2021年末以降、中国人民元は香港ドルに対して11%以上下落している」 

2021年末以降、中国人民元は香港ドルに対して11%以上も下落している。香港市民にとっては、香港ドル高のメリットを満喫できるのだ。だが、香港の購買力が深センへ流出していることで、香港経済には痛手である。 

(4)「中国本土が提供するものを香港の住民が喜んで受け入れるようなことは、反政府デモに飲み込まれていた5年前には考えられないことのようにみえた。香港住民は当時、自分と同じ政治的立場の店を支援するため、立場ごとに色分けされた地図でそうした店を探し出し、中国本土とつながりがあるとみられる店は避けていた。しかし、新型コロナウイルス対策で長期間にわたり香港からの移動が制限されてことや、不安を感じた住民の節約志向のおかげもあって深センの魅力が高まった。「香港と深センの経済的な相互依存性を示す生活様式の再調整が起きている」と香港城市大学のエドマンド・チェン氏(政治社会学)は話す」 

香港民主派は、香港本土派を忌避している。買い物も本土派の店を避けてきたほど。だが、中国の物価安と香港ドル高を利用して、香港市民が深センへ買い物に行くことで香港民主派は焦っている。

 

(5)「香港入境当局のデータによると、昨年は2月にコロナ関連の移動制限が全面的に撤廃されたあと、香港住民の中国入境は5000万回を超えた。まだコロナ前の水準を下回っているが、香港住民の購買力が一因となり、深センの昨年の小売売上高は7.8%増と中国本土の都市で有数の伸びとなった。経済団体が昨年実施した調査によると、2024年に売上高の増加を予想していると回答した香港企業は37%にとどまった。売上高がコロナ前の水準を超えると予想している企業は3分の1に満たなかった」 

23年の香港市民の中国入境は、5000万回(5000万人)に及んでいる。香港市民数は750万人(2023年)だ。実に、一人当たり6.7回も「入境」している計算になる。買い物客や旅行客がいかに多いかを物語っている。 

(6)「コーシー・リーさん(39)は定期的に深センに通う多くの香港住民の一人で、利益も上げている。副業として深センから商品を運び始めたのは昨年8月で、今では週に4回、深センを訪れ、トヨタ製のミニバンに冷凍ハンバーガーや魚の内臓スープ、パナソニックの食器洗浄機、トイレットペーパーを積み込む。リーさんは顧客から注文を取り、一律の手数料を請求している。「私の客の80%がわずかなお金も無駄にしたくない主婦だ」とリーさんは話した」 

週4回、ミニバンを使って「買い物ビジネス」を始めている人まで現れている。買い物が商売になるほど、利益が保証されていることを物語っている。