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米国では、米マッキンゼーが過去に中国政府へ政策助言したのでないか、と米議員から追求されている。マッキンゼーは、米国政府からの受託調査を行っているだけに、「二股」が問題視されている。米中対立によって、過去におけるマッキンゼーの対中接近が争点になっているのだ。 

『フィナンシャル・タイム』(2月27日付)は、「米マッキンゼー、中国政府に政策助言か 米議員が追及」と題する記事を掲載した。 

米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーは、中国の中央政府に国内消費の喚起や医療政策の改革について助言した実績をマーケティング資料でアピールしていた。中国政府向けの業務を請け負ったことはないとする同社の主張に新たな疑問が生じている。 

(1)「2019年に閉鎖されたマッキンゼー中国法人のウェブサイトによると、同国での顧客の約10%は政府機関や非営利団体だった。ウェブサイト「mckinseychina.com」(現在はマッキンゼーの国際版メインサイトにリダイレクトされる)のアーカイブには「中国におけるマッキンゼーの影響力は、企業部門で請け負う業務をはるかに超えている」と記されている。「過去10年間だけでも、経済計画や都市再開発、社会分野など幅広い問題に関して中央、省、市など20以上の政府機関にサービスを提供してきた」という。このマーケティング資料には、同社が「医療改革の政策立案や、次世代の政府指導者を育成する人材・リーダーシップ開発プログラムの提供、国内消費の活性化を目的とした政策や具体的措置の策定など、社会的影響の大きいさまざまな問題について複数の中央政府省庁に助言してきた」とも記載されている」 

マッキンゼーは、苦しい立場である。中国政府部門へ種々の立案をしてきたことをPRしていたことが、現在は批判されることになっている。米中対立激化が、もたらした影響である。

 

(2)「一部の米議員は、中国事業に関するマッキンゼーの発言に矛盾があるとして、米連邦政府の取引先から同社を除外するよう要請している。マッキンゼーのグローバル・マネジングパートナー、ボブ・スターンフェルズ氏は6日、米連邦議会の公聴会に出席し、中国中央政府の業務を請け負ったことはないと発言した。「当社は中国共産党や中央政府のために仕事をしておらず、私の知る限りでは一度も業務を請け負ったことがない」としている。中央政府省庁に助言したという宣伝文句は、少なくとも14年から19年にかけてマッキンゼー中国法人のウェブサイトに掲載され、22年には米保守系雑誌「ナショナル・レビュー」でも取り上げられた」 

マッキンゼーは、中国での活動を覆い隠そうとしている。当時の米中関係では、当然の業務範囲であると説明すべきところを、事実そのものを否定して疑惑を生んでいる。 

(3)「フィナンシャル・タイムズ(FT)が今週、本件について同社に問い合わせたところ、次のような回答があった。「当該の旧サイトは『mckinsey.com(メインサイト)』の一部ではなく、当社の顧客サービスについて不適切な表現が含まれており、数年前に削除された。当社としては、中国中央政府が現在マッキンゼーの顧客ではなく、当社の知る限り顧客だったことはない、というこれまでの声明を堅持する」としている」 

マッキンゼーは、過去に行った中国政府絡みの業務が一切なかったとしている。

 

(4)「マッキンゼーは、09年に打ち出された医療改革に貢献したと当時の中国国営メディアで報じられている。国営通信新華社が中央政府のウェブサイトに掲載した記事によると、政府は07年3月に「外部の頭脳を活用して幅広いアイデアを収集する」ため、マッキンゼーの中国法人を含む7団体に独立調査を委託した。共産党系紙の中国青年報によると、中国の経済企画当局と保健当局が率いる医療改革作業部会は、マッキンゼーなどの機関に「独立した、かつ同時進行の医療改革計画策定」を依頼した」 

国営通信新華社が報じたところでは、07年にマッキンゼーの中国法人を含む7団体に独立調査を委託した、としている。 

(5)「FTは23日、中国が15年に第13次5カ年計画をまとめるにあたって、マッキンゼー主導のシンクタンク「アーバン・チャイナ・イニシアチブ(UCI)」が別途助言していたと報じた。中国のマクロ経済政策の司令塔である国家発展改革委員会向けの調査プロジェクトの一環として、企業と軍の協力を深め、機密産業から外国企業を締め出すよう提言したという。この業務を請け負ったUCIは、マッキンゼーが中国の清華大学や米コロンビア大学と共同で立ち上げたシンクタンクだ。提言書に序文を寄せたマッキンゼーの最上級パートナーの一人がその写しを中国の李克強(リー・クォーチャン)首相(当時)に贈呈したという」

 

マッキンゼー主導のシンクタンク「アーバン・チャイナ・イニシアチブ(UCI)」は、中国で「企業と軍の協力を深め、機密産業から外国企業を締め出すよう提言した」という。マッキンゼーの言い分では、UCIがマッキンゼーと別組織であるから、マッキンゼーに直接の責任はないという形式論を振りかざしている。 

(6)「米共和党のジョシュ・ホーリー上院議員は27日、マッキンゼーのスターンフェルズ氏は同社が中国共産党や中央政府に協力したことはないと明言したが、これは議会への虚偽の説明だとして非難した。政府のデータによると、マッキンゼーは23年9月までの1年間に米連邦政府から少なくとも1億100万ドル(約150億円)の支払いを受けており、そのうち6300万ドルは国防総省から支払われている」 

マッキンゼーは、米国政府から23年に少なくとも1億100万ドル(約150億円)の支払いを受けている。米議会が、マッキンゼーに対していかなる対応をとるのか。