中国は、不動産バブル崩壊による衝撃をEV(電気自動車)・電池・太陽光発電の3業種の輸出で乗切る基本方針を立てている。だが、EVの過剰生産につづき、太陽光発電も過剰生産に陥っている。世界最大の太陽電池メーカー隆基緑能科技は、従業員の3分の1を削減するという「大手術」に出る。
『ブルームバーグ』(3月18日付)は、「太陽電池世界最大手の隆基緑能、従業員の約3分の1削減計画ー関係者」と題する記事を掲載した。
世界最大の太陽電池メーカー、中国の隆基緑能科技はコスト削減を図るため、従業員の約3分の1を削減する計画だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。太陽光産業は過剰生産能力や激しい競争に見舞われている。
(1)「経営陣から説明を受けた人物を含む複数の関係者によると、隆基緑能はピーク時に約8万人いた従業員の最大30%を削減する方針。計画が公になっていないとして匿名を条件に話した。この動きは、隆基緑能が昨年11月に開始した人員削減の加速を示す。今回の決定前にどの程度減らされていたのかは明らかになっていない。隆基緑能の担当者に人員削減についてコメントを求めたが、すぐに返答が得られなか」
太陽光発電パネルは、世界的な過剰生産に陥っている。2022年現在で、世界の平均操業度は2割程度と大赤字状態に陥っている。中国の隆基緑能科技が、世界最大企業といえども耐えられる限界を超えているのだ。過剰生産は、2015年頃から始まっていた。すでに8年もこういう状態であり、ますます悪化している。それにも関わらず、習氏は、太陽光発電パネルを中国の先端産業に位置づけるという見誤りを冒してしまった。
『ブルームバーグ』(3月18日付)は、「習主席の新スローガン『新質生産力』、技術革新で中国経済の再生狙う」と題する記事を掲載した。
(2)「中国ではスローガンが極めて重要だ。「中国の特色ある社会主義」から「共同富裕」に至るまで、新たなキャッチフレーズの採用は政策の重大な転換を告げることがある。そうした意味では、3月5日に公表された今年の政府活動任務の筆頭に、「新質生産力(新たな質の生産力)」が挙げられた際、習近平国家主席が昨年9月に初めて言及していたこの表現が意味するところを読み解こうとする動きは強まった。2014年以降、産業政策のスローガンがトップとなったのは他に1度しかなく、通常、この枠にはマクロ経済政策に関する方針が充てられてきた」
これは、「質の高い成長」という意味で技術革新を前提にする。EV・電池・太陽光発電パネルが「三種の神器」になっている。
(3)「政府支出の増加や市場の拡大による恩恵を受けるとの思惑から、人型ロボットから航空機部品のメーカーに至るまで、関連銘柄が大きく値上がりした。このスローガンは「中国製造2025」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」など、バリューチェーンの向上を視野にここ数年行われてきた呼びかけの再パッケージに過ぎないとの見方がある。新たな表現は、経済面の課題が山積しているにもかかわらず、これまでの路線を堅持する決意を固めていることを地方の当局者らに強調するのに役立つとの受け止めも目立つ」
習氏は、「新質生産力」が魔法のような力を持っているように振る舞っている。不動産バブル崩壊による過剰債務が、この「新質生産力」によって解消されるような幻想を与えているのだ。これが、現実認識を誤らせる大きな原因である。
(4)「テクノロジーの利用を巡り米国との対立が激しくなる中、中国は技術革新の強化に取り組んでいる。米政府は中国による半導体へのアクセス制限をさらに強化するよう同盟国に迫っており、中国は人工知能(AI)化を進める上で先端半導体の調達は不可欠だ。13日には、李強首相が中国AI大手の百度(バイドゥ)を訪れ、政府による支援強化を示唆した。アジア・ソサエティー政策研究所の中国分析センターで中国政治担当フェローを務めるニール・トーマス氏は、「このフレーズは共産党と政府の官僚機構への新たなかけ声だ」と指摘。「中国経済の成長軌道を巡り先行きがより不透明になる中、生産性を高める技術革新に対する習氏の大きな賭けはますます重要になっている」と述べた」
「新質生産力」の推進には、先端半導体が不可欠である。だが、米国との政治的な対決が「中国包囲網」をつくり出している。原因は、習氏が台湾侵攻方針を捨てない点にある。台湾侵攻方針を捨てれば、習氏の国内権力基盤は弱体化する。一方、これを強調すれば、包囲網を強められるという二律背反に遭遇しているのだ。二進も三進もいかない状況に追込まれている。


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