あじさいのたまご
   

中国海南省のボアオで、「ボアオ・アジアフォーラム」2024年総会が3月28~29日の日程で開催された。海外からの参加者は、いずれも中国当局の演説に聴き入って、「賛意」を表した。異論を差し挟む場所でないからだ。

 

中国共産党序列3位の趙楽際(ちょう・らくさい)・全国人民代表大会(全人代)常務委員長は、「中国の開放の扉はさらに大きく開かれるだけで、永遠に閉じることはない」と演説した。外資企業は、中国経済の減速懸念などから対中投資に慎重姿勢を見せている。中国側は、こうした動きを押しとどめようと必死であった。

 

『中央日報』(3月30日付)は、「ボアオフォーラム、中国の今年5%成長は無難 消費がカギ」と題する記事を掲載した。

 

中国政府は、今年の経済成長率目標値を5%前後と提示した。この目標値の実現の可能性と実現方法に「2024博鰲(ボアオ)フォーラム年次総会」(以下、フォーラム)では大きな関心が集まった。

 

(1)「昨年、中国経済は5.2%成長した。世界経済成長に対する寄与度は30%以上だ。関心は今年の目標値の5%成長を達成できるかどうかに向かっている。今年1~2月の中国の貿易総額は前年同期比で8.7%増えた。ハイテク製造業の利潤も27.9%拡大した。民間投資増加率は昨年の下落傾向から抜け出し、プラス成長に転じた。中国経済が安定的な回復の流れを見せている」

 

中国政府は、EV(電気自動車)・電池・太陽光発電パネルの3業種を突破口に、経済回復のテコにしている。これが、脱炭素に逆行することも厭わず、目先のGDP押し上げに利用している。

 

(2)「フォーラム出席者は、中国経済に対する信頼を次のように口にした。「強い意志と潜在力を持つ中国の経済がポストコロナ時代のグローバル経済の持続可能な発展の主軸になった」「中国経済が1%成長すれば中国に関連する経済体の経済が0.3%ずつ成長する」「多国籍企業に中国市場は代替不可能な価値を持つ」などだ。過去の高速成長と比較すると、中国経済の成長率がやや鈍化したのは事実だ。また有効需要の不足、一部業種の生産過剰、社会的期待心理の低下など国内的に困難に直面している。それでもフォーラム出席者は「超大規模市場と強力な生産力量が中国の経済成長を支えるという事実に変わりはない」と口をそろえた。人材プールから産業科学技術革新力量にいたるまで中国は豊富な要素資源を保有するためリスクに十分に対処できるということだ」

 

中国経済の最大の課題は、不動産バブル崩壊の後遺症処理である。博鰲(ボアオ)フォーラムでは、こういう難病を忘れたように振る舞っているのが不思議なほどだ。

 

(3)「ローランドベルガーのドプー副会長は、「中国の固定資産投資が産業アップグレードや世代交代に集中していることが確認される」とし、「これは膨大な工業インフラを基盤に中国がより一層先進化した技術を活用し、全要素の生産性増大を実現しているという意味」と紹介した。中国の産業発展の新しい流れも今回のフォーラムで話題になった。中国が技術革新、産業アップグレードを進め、人材・市場・産業配置などの強みを効果的に発揮しているという判断のためだ」

 

このパラグラフは、中国側の説明を「鵜呑み」にした形になっている。全要素生産性は、習氏が国家主席に就任して以来、一貫して低下しているのだ。目先の「花火」に目を奪われず、花火が終わった後の「暗闇」を想像することが必要である。

 

(4)「中国は昨年、年間研究開発費として3兆3000億元(約69兆円)以上を投入した。前年比8.1%増えた。デロイトトーマツ中国代表の蒋穎氏は「中国は新しい質的生産力開発および発展に積極的に取り組んでいて、フロンティア技術で新産業・新モデル・新動力を促進するだけでなく、科学技術革新の新たな成果を従来の伝統産業に取り入れている」と述べた。このようにして多くの潜在力と可能性を引き出すということだ」

 

年間研究費の約69兆円が100%、研究現場へ投じられるとみるのは間違いだ。汚職などによって、中間過程で消えているという現実を見過ごしてはならない。中国は、「汚職蔓延」という厄介な慣習が残っているのだ。また、半導体でも先端製造装置の輸入が禁じられている。米中対立が与える影響を軽視してはならない。

 

(5)「5%成長目標達成方法についても、さまざまな意見が提示された。2023年の最終消費支出が中国経済成長の82.5%を牽引した。これに関し国際通貨基金(IMF)のスティーブン・バーネット駐中首席代表は「消費は中国経済の成長を牽引する重要な力」とし「関連の措置を通して消費力量・意志拡大に力を注ぐべき」と提言した。アジア開発銀行(ADB)のアルバート・パク主席エコノミストは「最近、中国が設備アップグレードおよび消費財の以旧換新(都市向け買い換え補助金政策)を大々的に進めていて、需要を効果的に高めた」と評価した。続いて「今後1人あたりの可処分所得を増やし、消費促進を牽引するべき」と主張した」

 

IMFもADBのエコノミストも、遠回しに中国経済の「業病」(消費不振)を指摘している。これこそが、最大の問題である。不動産バブル崩壊が、末端需要に縮小を引き起しているのだ。