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米国とEU(欧州連合)は、日本へ経済安全保障を目的にしてそれぞれ、AI(人工知能)や半導体について共同開発を申入れていることが分った。日本が、半導体列島形成に向けて官民が一致した行動を取っていることを高く評価したものとみられる。半導体による「日本経済再興」は、現実のものとなって来た。

 

『日本経済新聞 電子版』(3月30日付)は、「日本とEU、次世代EV電池の材料開発で連携 半導体も」と題する記事を掲載した。

 

日本と欧州連合(EU)は4月にも、次世代技術に必要な先端材料の開発で連携する新たな枠組みを設ける。電気自動車(EV)向け電源として注目される「ナトリウムイオン電池」や、半導体の材料などの分野で協議する。有力な新材料を早期に実用化し、中国依存を回避する。

 

(1)「EUのイリアナ・イバノバ欧州委員(研究・イノベーション担当)が、日本経済新聞の書面インタビューで明らかにした。「共通の関心分野や協力の可能性を話し合う枠組みを設けることは、互いの利益になる」と説明した。日・EUは、先端材料の分野で政策対話の枠組みを発足させる。EUは、日本の技術が欠かせないとみて協力を要請した。イバノバ氏は、再生可能エネルギーモビリティー建築電子機器――が有力な連携分野だとみている」

 

日本は、材料分野で圧倒的な開発力を持っている。過去のノーベル賞受賞でも、この分野が多いことで立証されている。EUは、4つの分野での協力を日本に求めている。

 

(2)「具体的には、EV向け次世代電池として期待されるナトリウムイオン電池の開発を想定する。この電池は、中国の生産量が多いレアメタル(希少金属)を使わず、低コストで生産できる利点がある。EUは、EVシフトで需要が増えることを見越し、開発で先行する中国に対抗する。太陽光発電パネルの変換効率が高まる「金属ナノ粒子」でも、日本の知見を求める。スマートフォンの省エネ性能が向上するナノ素材も候補にあがる。EUは今後、先端材料分野に研究資金を集中的に配分する。開発や量産に向けた支援を手厚くする。日本の関係機関と共同研究・開発する分野の拡充も検討する。イバノバ氏は、「ナノ材料の安全性評価の標準的手法を開発したい」と言及した。先端材料の国際標準づくりでも日本と組む考えを示した」

 

現在の電池の主流は、リチウムイオン電池である。毎日、世界中で1%の事故が発生しているとされる安全性に問題を抱えている。しかも、原料生産が限られていることから、中国が優位を占めている。こういう事態を解決すべく、ナトリウムイオン電池開発が焦点になってきた。

 

ナトリウムイオン電池は、リチウム・コバルト・ニッケルなどのレアメタル(希少金属)が不要で、地球上に豊富に存在するナトリウムをベースとするバッテリーである。これが普及すれば、EV価格は大きく引下げられる。

 

日本とEUは、ナノ材料を巡る国際基準づくりでも、協調することに意欲を示した。国際ルールの策定は、かねて日本政府が苦手としていた分野でもある。EUは、こうした分野で強みを持つ。共同で取り組むことができれば、日本にとっても利点は大きい、と指摘されている。

 

『ブルームバーグ』(3月30日付)は、「日米がAI・半導体で連携強化 首脳会談の共同声明原案-報道」と題する記事を掲載した。

 

岸田文雄首相とバイデン米大統領が4月10日に米ワシントンで行う日米首脳会談の共同声明の原案が判明したと、3月30日付の朝日新聞朝刊が伝えた。

 

(3)「日米の関係を「グローバル・パートナーシップ」と位置づけ、人工知能(AI)や半導体、量子、バイオといった先端技術の連携強化を打ち出す。米半導体大手エヌビディア、英半導体設計大手アーム、米アマゾン・ドット・コム、ワシントン大、筑波大などと協力し、AI研究開発のための枠組みを立ち上げる見通しだ。約1億ドル(150億円)を拠出する方向で調整している。日米は、安全保障に加え、経済分野でも強固な結び付きをアピールする狙い」

 

米国は、日本の技術水準を高く評価している。AI・半導体・量子・バイオなど最先端技術で幅広い提携関係を築こうとしている。半導体では、すでに米IBMと日本の国策会社ラピダスが緊密な提携関係を構築している。最先端自動車部品では、既にラピダスが製造する手はずまで進んでいる。当然、米国へも還流される。こうして、日米経済の一体化が進む。日本経済の発展には、大きな支援材料になる。