米国は将来、AI(人工頭脳)でホワイトカラーの3割が職を失う恐れを指摘されているなかで、「物づくり」人気が高まっている。半導体技術者から溶接など技能職が見直されているのだ。中国や韓国では、高い大学進学率だが卒業後の就職難で悪戦苦闘している。米国には、新しい風が吹いている。日本も半導体ブームである。九州・東北・北海道が半導体「主戦場」になる。これに備えた、人材養成が急務になる。
『東亜日報』(4月8日付)は、「米国の州間で起きた誘致合戦から学ぶ半導体工場の誘致方法」と題する記事
米国内の半導体工場の誘致合戦を取材していたところ、面白いことを知った。50州が激しい誘致合戦を繰り広げ、「半導体フレンドリー」環境へと自ら進化しているということだ。誘致合戦の失敗を教訓に、教育やインフラにさらに投資し、これを基に次の挑戦を準備している。
(1)「先週、SKハイニックスが38億7000万ドル(約5800億円))の投資を発表した米インディアナ州は、2022年にインテルの200億ドル(約3兆円)規模の工場誘致合戦で失敗した経験がある。当時、隣国のオハイオ州と接戦の末、負けた。オハイオ州が、インディアナ州より税額控除や直接補助金のようなインセンティブをより多く約束したためだろうか?必ずしもそうでもなかった。補助金は同じような金額だったが、2つの州において最も大きな差は、「豊富な人材」だったというのが、当時の米マスコミの分析だ」
米国では、各州が半導体工場誘致合戦を繰り広げている。誘致で勝つには、半導体の豊富な人材を供給できるどうかがポイントとされている。
(2)「(半導体誘致では)採用できる半導体の高級人材が、どれほど豊富なのかが重要条件であり、オハイオ州コロンバス市の大卒人材数が魅力的に働いたという。実際、インテルのオハイオ州新工場の敷地は、オハイオ州立大学から車で25分の距離だ。もう少し距離を広げて、車で数時間内にあるカーネギーメロン大学の存在も影響した。インテル招致合戦の当時、インディアナ州商務長官だったブラッド・チェンバース氏はニューヨーク・タイムズ(NYT)とのインタビューで、「多くの教訓を得た。最大の教訓は、大手半導体メーカーに提供できる土地やインフラ、人材プログラムをより魅力的なパッケージで準備しなければならないということだった」と明らかにした。補助金は当然であり、それ以外の総合パッケージも必要であることを身にしみて感じたのである。
半導体誘致には、工場用地・インフラと並んで人材プログラムが不可欠である。
(3)「(インディアナ州は)インテル誘致失敗後の2年間、「豊富な人材」の部門で高い点数を取るために、州内の理工系名門大学に挙げられるパデュー大学が乗り出した。パデュー大学は2022年、米国で初めて半導体学位プログラムを作った。昨年は1億ドル(約150億円)を投資し、5年内に半導体専門教授約50人を採用すると明らかにした。優れた博士志望生を連れてくるための支援プログラムも作った。インディアナ州に18億ドル(約2700億円)の投資を約束した米半導体企業のスカイウォーターが、パデュー大学の努力に感動し、他の4州を抜いてインディアナ州を選んだという報道が出るほどだ」
インディアナ州は、インテル誘致失敗後の2年間、「豊富な人材」育成に努力した。パデュー大学へ資金援助して、半導体専門教授を約50人採用した。半導体企業のスカイウォーターは、インディアナ州へ工場建設を決めた条件として、この人材教育プログラムの存在が決め手になったという。
(4)「パデュー大学は、今回のSKハイニックスの投資においても主要パートナーとして浮上した。SKハイニックスの新しい高帯域幅メモリ(HBM)パッケージングの生産基地は、学内研究団地に位置する。パデュー大学は、敷地の割引などを含め、SKハイニックスに対し、約6000万ドル(約90億円)の支援も約束した」
パデュー大学は、SKハイニックへ約90億円の支援を約束した。卒業生の就職先としてだけでなく、産学協同という意味もあるのだろう。
(5)「一つの大学だけでなく、州政府の1兆ウォン(約1100億円)規模の直接・間接補助金、市政府の支援、地元のエネルギー企業までがパートナーとして参加し、SKハイニックスの誘致合戦に飛び込んだ。インディアナ州のデービッド・ローゼンバーグ商務長官も記者との電話インタビューで、「我々は半導体生態系を作って、テーブルの上に置いた」と繰り返し強調した。SKハイニックスの誘致に失敗したまた別の州は、おそらく今回の失敗を教訓にまた別の「半導体フレンドリー」戦略を組んでいるだろう」
米国哲学は、プラグマティズムである。「失敗から学ぶ」哲学である。米国の底力を見せつける話だ。
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