中国は、国内不況をEV(電気自動車)輸出で跳ね飛ばそうと猛烈なダッシュをかけている。米国は高関税でガードしているので、狙い目は欧州である。中国製EVは、「猫も杓子も」欧州へ殺到している。陸揚げされたものの、肝心の輸送の手配が遅れていることと販売難が重なって、港湾では大量のEVが滞留する事態に陥っている。いかに、無計画な輸出であるかを窺わせている。
『フィナンシャル・タイム』(4月10日付)は、「中国からの輸入車、欧州の港に滞留 輸送・販売が難航」と題する記事を掲載した。
欧州の港湾が輸入車の滞留で「駐車場」と化している。自動車メーカーや販売業者が、販売不振やトラック運転手の不足を含む物流の停滞に悩まされていることが背景にある。港湾業界や自動車業界の幹部は、集積する中国製の電気自動車(EV)が問題の主因の一つだと指摘している。陸揚げ後の輸送手段を確保せずに船積み予約を入れる企業もあるという。また、ドライバーや車両を移動させる設備が不足していることから、自動車メーカー全体がトラックの手配に苦労している面もある。
(1)「欧州最大の自動車荷揚げ港として知られるベルギーのゼーブルージュ港を運営するアントワープ・ブルージュ港湾公社は、「自動車販売業者が港の駐車場をデポ(輸送拠点)として利用するケースが増えている。車両は販売代理店に保管されず、自動車ターミナルに集積されている」と述べた。また「主要な自動車港湾は軒並み」混雑に悩まされているとしたが、車両の輸出元については明言を避けた。一部の自動車業界幹部は、中国の自動車メーカーが欧州で思うように販売を伸ばせていないことが、欧州各地の港湾で車が滞留している大きな要因だと指摘している。ある自動車サプライチェーン(供給網)の管理者は「中国のEVメーカーは港を駐車場のように利用している」と語った」
欧州最大の自動車荷揚げ港であるベルギーのゼーブルージュ港は、中国製EVの「駐車場」代わりになっている。車両は本来、販売代理店に保管されるべきである。そこまで、達しない段階で「目詰まり」を起こしているのだ。販売不振を意味している。
(2)「業界幹部によると、一部の中国製EVは欧州の港に最長18カ月もとどまっているが、一部の港は輸入業者に陸揚げ後の輸送が確保できている証拠の提示を求めていた。ある自動車物流の専門家は、陸揚げされた車両の多くが販売業者や消費者に販売されるまでひたすら港にとどまっていると話す。事情に詳しい別の人物は、この状況を「カオス(混沌)」と表現した」
中国製EVの一部は、欧州の港に最長18カ月も止まっているという。売れる見込みもなく、輸出してきたことを意味する。中国の輸出統計では、EV輸出としてカウントされるのだ。実態は、全く異なっている。
(3)「乗用車業界団体、乗用車市場信息聯席会の崔東樹・秘書長は「(中国のEVブランドにとって)欧州市場での内陸輸送は難しい」と述べた。中国ブランドは、「販売後」のサービスを改善する必要があると同氏は強調し、こう続けた。「ゲリラ戦のような自動車輸出を変えるべきだ。自分たちの首を絞めることになる」と指摘する」
中国乗用車業界では、「ゲリラ戦のような自動車輸出を変えるべきだ。自分たちの首を絞めることになる」と自戒している。
(4)「欧州で2番目に自動車の取り扱いが多い、ドイツのブレーマーハーフェン港で自動車ターミナルを運営する独物流大手BLGロジスティクスは、独政府が2023年12月にEVの購入補助金を打ち切った後、同社施設に車両が滞留する時間が長くなったという。比亜迪(BYD)や長城汽車、奇瑞汽車、上海汽車集団(SAIC)といった中国自動車メーカーの多くは、中国国内の工場稼働率を維持するとともに、欧州のEV需要を取り込むため、欧州への輸出を増やそうとしている。自動車ターミナルで目詰まりが起きている背景にはこうした事情がある」
欧州で2番目に自動車の取り扱いの多い、ドイツのブレーマーハーフェン港でも、中国製EVは滞留時間が長くなっている。中国国内では、工場稼働率を維持する目的もあり、欧州へ怒濤のごとき輸出を仕掛けている。
(5)「23年の中国の自動車輸出は前年比58%増となり、自動車市場の大幅再編を促した。24年1〜2月は中国のEV、プラグインハイブリッド車(PHV)、水素自動車の輸出先上位にベルギー、英国、ドイツ、オランダが並んでいる。中国の王文濤商務相は7日、中国自動車メーカー幹部が出席したパリでの会議で、同国がEVの過剰な生産能力を抱えているとの批判について「根拠がない」と主張した」
中国の自動車輸出は23年、前年比58%増である。この数字こそ、無秩序輸出の証であろう。EU(欧州連合)が、ダンピング輸出として調査するのは致し方ない。
(6)「自動車業界幹部によると、中国勢の多くは欧州でゼロからチームをつくり、物流問題に取り組んでいる。欧州市場に参入したばかりの各社は、優先的に対応してくれる運送会社の確保に手を焼いている。「トラック不足」は「非常によくある問題」だと事情に詳しいある人物は述べ、多くの輸送用車両を「(米EV大手)テスラが予約している」と付け加えた。「どの新参ブランドもこの問題に直面するだろう。事業規模が小さく、定期的に輸送しないなら(トラック運送会社の)最大顧客にはなれない」と業界幹部らは指摘する」
中国EVは、ゲリラ的輸出であるので、欧州の物流業界が「様子見」している状態だ。「良い荷主」になれるかどうか、見極めている面もある。まだ、信頼されていないのだろう。
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