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AI(人工知能)普及がもたらす最大の悩みは、消費電力量が膨大であることだ。データの計算や保存を行うデータセンターを新設する企業が相次ぎ、日本では2050年に4割弱も増えるとの予測が出ているほどだ。こうした悩みを解決するのが、NTTが開発した光半導体を使った次世代通信(6G)「IWON」である。日本初の技術開発である。 

NTTが、米サンフランシスコで現地時間10~11日に開いた技術イベントで、IWONの実証実験成功が公開された。英国では約89キロメートル、米国では約4キロメートル離れたデータセンターを1000分の1秒以内というわずかな時間差でつなぎ、一つのインフラのように運用できたと公開した。 

今回の日米首脳会談では、「日米企業は、IOWNグローバルフォーラムのようなパートナーシップを通じ、光半導体を通じて得られる幅広い可能性を模索している」と確認された。政府間の文書でIOWNへの言及があったのは初めて。6Gの切り札として国際標準化へ向けた動きが活発化する。 

『日本経済新聞』(4月13日付)は、「NTT、光技術で世界標準へ 次世代通信『IOWN』実証成功 『iモード』教訓 米で布石」と題する記事を掲載した。 

NTTが、光技術を使った次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」で世界市場を狙う。離れた場所にあるデータセンターをつなぐ実証に英国と米国でそれぞれ成功した。NTTが米サンフランシスコで現地時間1011日に開いた技術イベント会場には独自開発した大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi(つづみ)」やセキュリティー関連の展示が並んだ。IOWNは会場の目立つ場所に展示ブースを構え、英国と米国での実証実験の結果も発表した。

 

(1)「生成AI(人工知能)のデータ処理を担うデータセンターの重要性は急速に高まる。ただ、都市部で設置を増やすにはスペースの制約があった。複数のデータセンターをつないで遅延がない運用ができれば、設置場所の選択肢が郊外に広がる。NTTが2019年5月に構想を表明したIOWN。得意とする光通信技術を応用し、少ない電力で大容量のデータのやり取りを可能にする。2030年以降には現在のインターネットと比べて消費電力を100分の1まで減らせると見込む。段階的に商用化を進めている」 

NTTは、半導体内の電子処理を電気信号から光に置き換える「光電融合技術」を開発し、大幅な消費電力の削減を実現させるメドがついた。すでに製品化へ向けて動き出している。演算用の半導体を手掛けるインテルや、記憶用の半導体を手掛けるSKハイニックスと必要な技術の擦り合わせなどで協力を要請した。NTTは、この技術を核にして次世代通信基盤「IOWN」の実用化に成功した。 

IWONは、2028年度に伝送容量125倍を処理し、32年度に電力消費100分の1削減を達成できると見込んでいる。つまり、現在よりも125倍のデータ伝送を1%の電力消費で行うのだ。夢の実現である。 

(2)「NTTは、IOWN構想推進で米国を重視した。20年1月にソニーグループ、米インテルと国際団体「IOWNグローバルフォーラム」を設立。拠点は日本でなく米国に置いた。インテルのボブ・スワン最高経営責任者(CEO、当時)や米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOらビッグネームと会い、次々と提携をまとめた。なぜ米国なのか。IOWNの優位性を売り込んでも「米国には米国の優れたサービスがあるという議論になってしまう。だから最初に仲間に引き込んだ」(NTT澤田会長)」 

IWONは、国際標準化することで世界通信市場を席巻できる。それには、米国の力を借りるほかない。米国を仲間に引き入れることだ。

 

(3)「沢田氏は、「ハードウエアのメーカーでないNTTにとって、IOWNをいかに製品やサービスに応用できるかが重要だ。テック大手のGAFAMについても「ライバルであり、お客さんでもある」と語る。「日本に閉じこもらず、世界標準にする」。澤田氏がこの目標を掲げる背景にはiモード(注:携帯電話でのメールのやりとり)の苦い経験がある。iモードは自社技術を押しつけようとして海外に普及しなかった。IOWNでは初期段階から海外企業を含めた仲間づくりに力を注いできた」 

NTTは,iモードが世界標準になれなかった理由として、海外での「仲間づくり」に失敗したことを挙げる。これを教訓に、IWONは米国という最大の仲間をつくり、「6G」の骨格を担う。 

(4)「道のりは半ばだ。グローバルフォーラムの参加企業は約140社まで広がったが半分は国内勢。残る半分のうち米企業は数社にとどまる。研究開発の成果の開示義務を課すNTT法が足かせになっている。だが、そのNTT法は転機を迎えている。改正案が4月5日の衆院本会議で与党などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。オープンイノベーションを探るうえでの障壁は取り払われる見通しだ」 

NTTは、オープンイノベーションによって世界中から研究に参加できる仕組みをとっている。これが、IWONの改良に繋がり世界へ普及させる基盤になるからだ。 

(5)「NTTはパートナー拡大の布石を打ち始めている。米国に拠点を置く研究機関「NTTリサーチ」を通じて米ハーバード大に最大170万ドル(約2億6000万円)を寄付することも技術イベントで発表した。優秀な研究者が集まるトップ大学との関係を深める。今回の日米首脳会談では「日米企業はIOWNグローバルフォーラムのようなパートナーシップを通じ、光半導体を通じて得られる幅広い可能性を模索している」と確認された。政府間の文書でIOWNへの言及があったのは初めてという」 

NTTは、ハーバード大学へ最大170万ドルを寄付して、IWONの研究普及を目指す。米国企業が、よく行う手段である。日本企業がこれに倣ったものだ。今回の日米首脳会談の政府間の文書でIWON普及への文言が入った。大きな前進である。

 

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2024-04-11

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