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韓国の総選挙で、最大野党「共に民主党」が圧勝した。文政権時代と同様に、「反日」を叫びそうだが自制している。これは、過去にないケースである。「親日政策」を取って来た現政権・与党を敗北させたのだから、改めて「反日」を叫んでもおかしくないのだ。 

『日本経済新聞 電子版』(4月29日付)は、「韓国の『日本パッシング』、与党大敗でも反日起きぬ訳」と題する記事を掲載した。 

「思いのほか静かだった。4月上旬、韓国総選挙の最終盤にソウルを歩いた感想だ。2度の駐在時代に選挙ともなれば口角泡を飛ばす市民の姿を見慣れていたせいかもしれないが、違和感を覚えた。 

(1)「10日の開票結果は、目まぐるしく浮沈する韓国政治を象徴するような政権与党の大敗だった。その最大の敗因について、韓国の選挙事情に詳しい福島学院大の高選圭(コ・ソンギュ)教授から聞いた分析が腑(ふ)に落ちた。「韓国には1987年に民主化を勝ち取った経験がある。このため国民が大統領に権力を委任する代わりに、きちんとコミュニケーションをとれない大統領にはいつでも『NO』を明確に突きつけてきた。今回も国民の目線に合わせられない大統領と、放置し続けた与党に厳しい評価を下した」と指摘する」

 

韓国社会は、自己の不満をデモなどの形で直接示す特性を持っている。感情をストレートに示しており、「好きか嫌いか」が尺度だ。「良いか悪いか」という冷静な判断を飛び越えている。冷静にみて、左派の主張には韓国を近代化させる内容が乏しいのだ。 

(2)「今回大勝した野党が、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領にとどめを刺そうとし、その標的は尹氏の最大の外交成果である対日政策にも及ぶと政権側は身構える。「新韓日戦だ」。最大野党・共に民主党は選挙戦で一時、日韓関係を脅かすスローガンを掲げた。親日派とみなす保守系候補の落選や東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を容認した韓国政府への抗議を呼びかけたのだ。しかし有権者は呼応せず、「日本」が争点にならなかった。処理水放出の抗議集会も現在はごく小規模なものにとどまっている」 

最大野党・共に民主党は、選挙戦中に反日で煽ろうとしたが選挙民は無視した。文政権の「反日騒動」で懲りたのだろう。何の成果もないからだ。

 

(3)「「静けさ」の背景を韓国外交の重鎮に問うと、「文前政権のおかげだ」と意外な答えが返ってきた。文氏は安倍晋三政権と対立して日韓関係が最悪と呼ばれた時期の大統領だ。重鎮は解説する。日本はかつての日本ではない。韓国に譲歩を重ねた時代と異なり、安倍政権以降は韓国がいくら声高に要求してもゼロ回答を繰り返す。歴史問題などで自ら打開案を示さないどころか、逆に解決策を迫ってくるようにもなった。だからといって「日本はけしからん」と拳を振り上げれば日韓関係が再び壊れ、結局は自分たちが得をしない。多くの韓国人がこう考えだしたのだという」 

韓国は、反日で騒いでも日本がこれに譲歩することのないことを学んだ。これが、教訓になっている。 

(4)「グローバル企業をいくつも擁する韓国にとって、日本は特別な国でなくなった。これも総選挙でジャパン・パッシング(素通り)が起きた深層にある心理だろう。植民地時代に端を発する反日感情は残るが、いまはそれに触れない。日本が選挙の争点とならない韓国社会の変化だ。安倍・文時代の葛藤が日韓関係を落ち着かせているとしたら逆説的だ。さらに尹大統領は、猛烈な逆風下でも対日外交のアクセルを踏みこむという見立てまである」

 

尹大統領は、信念の人のようにみえる。幼少のころ、日本へ留学している父親に会うべく訪日した時、留学先の一橋大学教授宅へ家族で食事に招待された時の様子を、つい昨日のように懐かしく語っている。日本への親近感を深めた最初の機会であったのだろう。こういう経験を持つ尹氏が、支持率を高めるために反日政策へ転じる可能性はない。作為的な人間にみえないのだ。 

(5)「総選挙後に話題になった一つが棄権票の多さだった。投票率はこの30年で最も高かったが、魅力的な候補者がいなかった証左だ。いまの韓国は、保革が激突する社会にあっても中道層が4割を占める。SNS時代に生きる若者は党派色が薄く、投票先も個別の論点や候補者で決める傾向が強い。グローバル志向で合理的に物事をとらえる半面、人権やジェンダーへの意識が高い。嫌中感情が広がっているのも、強権的な振る舞いへの厳しいまなざしだ」 

韓国は、無党派層の多い20~30代が中核になる20年後に、社会も変わって行くはずだ。左派の強烈な反日が、力を失っていくことは目に見えている感じだ。 

(6)「日韓は、国連の決議案で賛否が98%重なっている――。韓国政府関係者から聞いた話だ。2国間の懸案では対立しても、民主主義や自由市場の価値観、グローバル経済での戦略的利益は一致している。韓国で「親日派(チニルパ)」といえば、日本の植民地支配に協力した層を批判する言葉だが、日本に携わる研究者らがそのレッテルを貼られる雰囲気も薄れた。大統領自身が最も日本に友好的だからだ。尹政権のあと3年で日韓にやれることは多そうだ」 

韓国は、強烈な反日さへ止めば日韓関係もスムースに行くはず。歴史問題で日本へ「謝罪せよ」と迫ってくることは、日韓の溝を自ら深めるだけである。過去を掘り出し善悪を言い募っても、余りにも非生産的で感情論に陥ることになろう。