中国は、景気回復を自国の責任で行うべきだが、それを怠っている。過剰生産分を輸出で処理するという「無責任」体制である。こういう中国に対して、過剰生産を止めさせるにはどうすべきか。誰も、解決案を持っていないのだ。中国は、あくまで「不況輸出」維持の姿勢を崩さないだけに難題である。
『ブルームバーグ』(5月9日付)は、「中国の過剰生産能力、早期解決期待できずー日米経済摩擦に倣う展開も」と題する記事を掲載した。
中国製造業の過剰生産能力を巡る不満の声がますます高まっているが、是正に乗り出せば脆弱な経済への逆風になりかねず、中国政府が動く兆しはない。
(1)「中国製電気自動車(EV)への関税賦課をちらつかせる欧州連合(EU)の指導者は今週、中国の過剰生産能力をあらためて批判。フォンデアライエン欧州委員長は中国の習近平国家主席との会談を前に「早急な」行動を期待していると述べた。フォンデアライエン氏は恐らく失望することになるだろう。バッテリー産業の成長を減速させる中国政府の案が8日公表されたが、拘束力はない」
EUは、中国製EVへ関税を割り増しするとフォンデアライエン欧州委員長が言明している。EUの決断は下ったのだ。
(2)「中国国家発展改革委員会(発改委)は先週、クリーンエネルギー製品分野での中国の生産能力が過剰との主張に対し、4部構成の反論を公表。自国産業の競争力は補助金ではなくイノベーション(技術革新)によるものだと訴えた。それは、EVや太陽光パネルといったハイテク産業に関する中国政府の決まり文句だ。習主席が描く景気回復の青写真で、これらの産業は極めて重要であり、中国はどんなに強く求められても恐らく支援をやめないだろう。他の諸国にとっても戦略的に重要な産業分野であり、貿易障壁が高くなる理由がそこにある」
中国が百万言の言い訳をしても通用しない。政府からの多額な補助金が、企業へ支給されている。中国企業の有価証券報告書を見れば、一目瞭然であるのだ。
(3)「HSBCホールディングスのアジア担当チーフエコノミスト、フレデリック・ニューマン氏は「中国の過剰生産能力の問題に即効性のある単一の解決策はない」と指摘。クリーンエネルギーの根本原因は中国の「活発な投資」だが、より伝統的な産業では「特に住宅建設の失速」に伴う需要の弱さが問題だと分析した。ニューマン氏によれば、中国住宅市場の安定と消費支出拡大に関し、需給バランスを図る「2方面からのアプローチ」が最終的に必要だ。しかし、中国の過剰生産能力を強く批判する人々さえ、それが難題だと認める」
中国は、住宅市場の安定と消費支出拡大に責任を持つべきである。その基本的義務を履行しないで、意図的な供給増による需要不足の「ツケ」を、他国へ回すことは赦されない。甘えを許してはならないのだ。
(4)「中国は内需への依存を強め、他の国々への依存を減らすべきだというのが米国の見解だ。イエレン氏は広州市で記者団に対し、「これはマクロ経済と産業戦略全体に関わる複雑な問題だ。半日や1カ月でも解決できるものではない」と語った。中国の家計と地方政府は現時点で、成長けん引の重責を担う状況からは程遠く、住宅危機を受けて支出を抑制している。中国では内需が勢いを失う中で、1-3月(第1四半期)の工業部門の稼働率が低下し、新型コロナウイルス禍が始まった2020年初め以来の水準に落ち込んだ。工場は輸出志向となり、物価は下落している」
中国は、内需への依存を強め、他の国々への輸出依存を減らすべきである。この正論を曲げてはならない。中国が、責任ある国家を目指すならば、最低限、「自国完結」で需給バランスを取るべきだ。それが、一国政府の義務である。
(5)「自動車業界では、状況はもっと複雑だ。JSCオートモーティブの推計によると、設備稼働率は1-3月期に急低下したが、比亜迪(BYD)や米テスラなどの主要なEV輸出企業の稼働率は業界全体を上回っている。中国の急速なEVシフトの影響で、かつてガソリン車を製造していた工場の休止が増えている様子がうかがえる」
BYDは、政府から多額の補助金を受入れている。この事実を忘れてはならない。
(6)「中国企業が他国での生産に乗り出すことが、EVを巡る緊張を和らげる一つの方法かもしれない。1980年代の日米経済摩擦は、日本の自動車メーカーが米国の工場に投資したことで緩和された。中国企業は政府の後押しを受け、欧州や南米、アジアで同じ道をたどり始めている。共産党の最高意思決定機関である党中央政治局は先週、「民間企業の海外市場進出を支援する」と表明した。習主席の今回の訪問先のうち、ハンガリーでは、BYDが工場建設を計画し、フランスのルメール経済・財務相も工場建設を歓迎する姿勢を示す。だがこれは長期戦略だ。BYDによれば、ハンガリーでの生産開始には3年かかるという。中国の投資への反感が広がる米国ではうまくいかないかもしれない」
中国企業に、先進国へ工場進出させるのは「公平」な措置にみえる。だが、中国があからさまにスパイ行為を働いている以上、感情的に受入れないだろう。日米摩擦解消策が、対中国企業に適応できない政治的事情を忘れてはなるまい。


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