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中国政府は、財政赤字に計算されない「特別国債1兆元」(約22兆円)を発行する。中国財政省は13日、償還までの期間が30年の超長期の特別国債を17日から発行すると発表した。24日に20年債、6月に50年債の発行も始める。財政拡張で需要減を穴埋めし、景気回復を下支えする狙いだ。特別国債1兆元の波及効果で、GDP1%分が確保できると試算されている。 

中国政府が、50年債を発行する。日本では、40年債が最長期債であるからこれより10年も長い国債になる。なぜ、50年債を発行するのか。中国経済の回復には長期間を要するという「覚悟」を固めた証拠であろう。過去26年で4回目となる特別国債発行だ。 

中国は、24年の財政赤字を4兆600億元(約101兆円)でGDPの3%と見込んでいる。23年の3.%を下回る目標だが、なぜ「特別国債1兆元」を発行するのか。世界の格付け会社から、格付けを引き下げられまいという配慮であろう。普通の「国債」であろうと「特別国債」であろうと、国家債務には変わりない。形式論で「債務」を回避しようという戦術だが、苦肉の策という印象を否めない。

 

『ブルームバーグ』(5月13日付)は、「中国、1兆元の超長期特別国債の発行を17日に開始-まず30年債」と題する記事を掲載した。 

習近平政権は、住宅危機と消費マインドの低迷による圧力に直面している経済を支えるため、財政支援を強化している。中国がエコノミストの予測を上回る年間成長率目標(約5%)を達成するためにはインフラへの政府支出が鍵となる。特別国債発行はこの財源となり得る。 

(1)「オーストラリア・ニュージーランド銀行のストラテジスト、シン・ジャオペン氏は、1兆元の特別国債はGDPを最大1ポイント押し上げる可能性があると述べた。「国債発行のタイミングは、米国が中国製品に対して課そうとしている保護主義的な関税の影響を相殺することを意図しているようだ」と同氏は指摘する。改革について討議される重要会議、第20期中央委員会第3回総会(3中総会)が7月に予定されていることも挙げた」 

特別国債発行のタイミングを5月からに設定したのは、米国が中国製品に対して関税を引上げる発表に合せて、その衝撃を払拭しようという狙いがあるとみられる。 

(2)「政府は5月24日と6月14日からそれぞれ20年債と50年債の発行を開始する。特別国債の入札は11月の30年債まで続く。ブルームバーグが事情に詳しい関係者を引用して13日に報じたところによると、発行されるのは20年債が3000億元、30年債が6000億元、50年債が1000億元だ。投資家は、国債発行のニュースに好意的に反応し、本土株の指標のCSI300指数は下げを縮めほぼ横ばいで引けた。香港上場の本土企業から成るハンセン中国企業株(H株)指数は下げを消し0.6%上昇となった」 

中国の投資家は、景気テコ入れ策が取られることを歓迎して株価も反発した。

 

(3)「中国国債は与信減少のニュースがさらなる金融緩和への期待をあおり国債供給急増への懸念が払拭(ふっしょく)されたことから上昇。10年物利回りは2.29%まで低下した。アナリストらは、中国人民銀行(中央銀行)が市中銀行の預金準備率(RRR)を引き下げて国債購入のための資金を確保させるとの見通しを示した。スタンダードチャータードの大中華圏・北アジア担当チーフエコノミスト丁爽氏は、国債発行に合わせてRRRが25ベーシスポイント(0.25%)引き下げられると予想。ローンプライムレート(LPR)が引き下げられる可能性も高まるとみている。同氏は、特別国債発行が今年の「5%成長を達成する可能性を高める」とし、政府がすぐに発行しなければ、今年中にすべての資金を投入するのは難しいと指摘した」 

国債相場も反発している。大量の特別国債の発行になるので預金準備率を引き下げ、資金供給を増やすとみられる。国債消化を促進するためだ。国債は、早急に発行してインフラ投資を支えなければ、5%前後のGDP成長率は困難と指摘されている。 

特別国債が、相変わらずインフラ投資に向けられることは、これまでの経済政策の踏襲である。「過剰投資」によって、中国経済は何も救われないことに気づいていないのだ。

 

(4)「週末に発表されたデータによると、中国では4月に国債発行が鈍化し、与信が初めて縮小した。政府と政策銀行による新規債券発行は、債務リスクの高い地域が借り入れを制限されたことや昨年に調達した資金がまだ全額使われていないことから、1~3月(第1四半期)には前年同期の半分にまで減少していた。国債発行はここ数週間に加速している。地方政府は先週、地方債発行を加速させるという指導部の呼びかけに応じ、2月以降で最高額を発行した。4月の中国共産党の中央政治局会議で、指導部はインフラプロジェクトの主要な資金源である特別国債と特別地方債の発行を急ぐよう求めた」 

中国経済全体のファイナンス規模を示す4月の「社会融資総量」規模は、前月比で2000億元(約4兆3100億円)近く減った。2017年までさかのぼる比較可能なデータに基づくと減少は初めてである。資金調達活動の縮小を反映している。中国全体の与信活動が鈍っていることは、資金需要の減少を意味する。それだけに、早急に国債を発行して財政から「カンフル注射」を打たなければならないとしている。過去の景気刺激策の繰返しである。 

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2024-05-13

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