中国商務省は14日、米政府が同日発表した中国製の電気自動車(EV)などへの制裁関税引き上げに「断固反対する」との報道官談話を出した。「自国の権益を守るため断固とした措置をとる」と明言し、対抗措置を示唆した。米国の「通商法301条」に基づく措置に関して、「国内の政治的配慮から貿易問題を政治的に利用しており、強い不満を表明する」と強調した。『日本経済新聞 電子版』(5月14日付)が報じた。
『毎日新聞 電子版』(5月14日付)は、「中国『米との対立激化は望まず』、制裁関税への対抗措置に焦点」と題する記事を掲載した。
バイデン米政権が電気自動車(EV)など対中制裁関税の引き上げに踏み切るのは、11月の大統領で対決が確実視されるトランプ前大統領の過激な対中強硬策に対抗するためだ。物価上昇(インフレ)を悪化させないよう関税引き上げの対象を絞り込んだものの、中国が反発するのは避けられそうにない。中国はEVや太陽電池、車載用電池(リチウムイオン電池)などの世界的需要が高まるなか、安価な中国製品は世界的インフレも和らげるとして「過剰生産問題なるものは存在しない」(習近平国家主席)と、関税引き上げに激しく反発している。今後どこまで対抗措置に踏み出すかが焦点となる。
(1)「中国はかつて家電や家具、衣料品などの生産・輸出が目立ったが、近年はハイテク製品の生産・輸出も拡大している。今回関税引き上げの対象となったEV、太陽電池、車載用電池は国内で「新・三種の神器(新三様)」と呼ばれ、EVのBYDや車載電池の寧徳時代新能源科技(CATL)など、中国勢が高い世界シェアを誇る。輸出拡大の背景にあるのは国内競争の激化だ。中国は世界最大のEV市場だが、国内消費の低迷で2024年1~4月の伸びは約13%と、かつての倍増ペースから大きく失速している。それでも各社の大規模な設備投資や新車投入はやまず、激しい値下げ競争の結果、新車の約6割はガソリン車以下の価格で、これまで高収益だったBYDなども利益が目減りしている。
高収益のBYDすら、政府補助金を受けている。有価証券報告書で確認されている。こういう補助金漬けになっている中国が、「自由貿易」を主張し、米国の「保護貿易」を批判するのは苦しいところだ。
(2)「太陽電池も同様に過剰投資と価格下落に歯止めがかからず、大手の24年1~3月期決算でも最終(当期)赤字が目立つ。輸出に打って出なければ、各社の経営が立ちゆかなくなりつつあるのが実態だ。さらに習氏は23年秋から「新質生産力」というスローガンを打ち出し、EVなどハイテク産業の振興を積極化している。中国経済に詳しい丸紅中国の鈴木貴元・経済研究総監は「中国は生産能力を拡大することで技術大国、安全保障の強化を図っており、『出し惜しみ』することはできない」と指摘する」
中国が、『三種の神器』(EV・電池・ソーラーパネル)の輸出に拘るのは、「技術大国、安全保障の強化」である。そのコストは、輸出で回収する形で西側諸国に負担させようと狙いである。習氏のしたたかに戦略である。
(3)「ただ、米国の制裁関税にどこまで強い対抗措置を取るかは微妙だ。米国のトランプ前政権時代に繰り広げられた米中間の関税引き上げ合戦で、中国経済は大きな打撃を受けた。長期化する不動産不況などの影響で景気回復が力強さを欠くうえ、EVや太陽電池などの米国への直接輸出は少ないこともあり、米国との全面的な対立激化は望んでいないとみられる。関係者からは「穀物や航空機輸入の抑制など間接的な措置にとどまるのではないか」(鈴木氏)との見方も出るが、それでも米中貿易戦争が再び繰り返されることになるのか。欧州連合も中国産EVなどへの追加関税を検討するなど、世界的に保護主義の動きがさらに広がりかねない中、中国の今後の対応が注目される」
中国は、口頭では米国へ対抗するとしているが、現実には慎重になるとみられる。トランプ政権時代、米国へ対抗して報復した結果、かえって傷が深くなったからだ。中国経済が不動産バブル崩壊で苦しんでいる上に、米国のさらなる報復を受ければ立直るのに時間がかかるからだ。
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