中国のエネルギー供給に占める石炭の比率は23年、55.3%と過半を占めている。この石炭依存経済が「脱炭素」を実現するのは、どれほど困難であるのか。察するに余りある事態である。この状況で、米国を向こうに回して「覇権」争いをするのは、大変な勇気が必要であろう。
『東洋経済オンライン』(6月7日付)は、「中国の石炭産地に『カーボンニュートラル』の試練」と題する記事を掲載した。この記事は、中国『財新』の転載である。
中国政府は「2030年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラル実現を目指す」という国家目標を掲げている。そんな中、都市の発展を化石燃料に依存してきた石炭産業の城下町は、どのような課題に直面しているのだろうか。
(1)「山西省の非営利シンクタンク、科城能源環境創新研究院の最新レポートは、中国有数の石炭産地である同省を事例に、石炭産業の構造転換が地元の雇用、財政、環境などに及ぼす長期的影響を分析。長年にわたる石炭の大規模採掘が山西省の生態環境を脆弱にし、石炭依存のモノカルチャーが持続可能な経済発展を阻害していると指摘した」
日本の石炭産業の構造転換時は、高度経済成長の真っ只中で行った。人員整理をしても転職先が存在した。現在の中国は、完全に後手に回っている。転職先など全くない中で、閉山しなければならないという切羽詰まった状態だ。「計画経済」の名前が泣く事態になっているのは、どこに間違いがあるのか。権力が一部に集中して、分散化されていないので置き去りにされた結果だ。
(2)「カーボンニュートラルを目指す国家目標の下で、山西省は経済構造の全面転換を迫られている。それを進めるため、山西省政府は2024年の政府活動報告(施政方針)で「公正転型(公正な構造転換)」というコンセプトを初めて打ち出した。その意味するところは、「環境にやさしい低炭素型の経済発展モデルへの移行を進めながら、地元の雇用や社会的弱者の生活などに与える負の影響に正しく対処し、社会的な公平・公正を確保する」というものだ。だが、公正転型の実現は容易なことではない」
新しい雇用先が存在しない中で、石炭産業の整理などうまくいくはずがない。これこそ、中央政府の財政負担で行うプロジェクトだ。「公正転型(公正な構造転換)」とは、こういう状態を指している。習氏は、財政赤字拡大を嫌っているので、省単位で業態転換せよというのが限度であろう。
(3)「上述のレポートは、山西省が克服しなければならない具体的な課題として、雇用の縮小、財政の逼迫、生態環境の修復の3つを挙げた。なかでもインパクトが甚大なのが雇用の縮小だ。レポートの予想によれば、山西省では2030年以降、石炭の採掘量減少や採掘作業のスマート化による生産性向上などにより、石炭産業の雇用が激減する。石炭の鉱山や選炭施設は、機械設備や資材、関連サービスなどの購入を通じて、地元のさまざまな業種の経営を支えている」
大袈裟に言えば、山西省は不動産バブルの崩壊と石炭産業の後始末で「消えてなくなる」リスクを抱えている。中国全体の抱える問題である。
(4)「採掘量が減少すれば、その影響は石炭産業以外の雇用にも波及するのが避けられない。レポートの推計によれば、山西省の石炭産業が間接的に支える就業人口は2022年時点で約335万人。しかし経済発展モデルの転換が進めば、2030年までにそのうち87万~160万人、2060年までに268万~331万人が転職を余儀なくされるという」
中国の潜在成長率は、良くて2030年代1.5%、40年代も2.2%へ低下する可能性が強い。これは、バブル崩壊以前の推計である。世界銀行と国務院発展研究センターが、2019年の合同研究の結果である。現実の潜在成長率は、さらに低下しているはずだ。
(5)「環境にやさしい低炭素型社会への移行は、(中国社会全体にとって)極めて公共性の高い取り組みだ。にもかかわらず、そのためのコスト負担はCO2排出業種の労働者、企業、地域に偏在し、受益者が(コストを)自発的かつ公平に分担する形にはなっていないと、レポートは指摘する。このような負担と利益のアンバランスを解消するには、構造転換の過程で生じる雇用問題に対処するだけでは不十分だ。公正な配分の原則に従い、産業構造の多様化や生態環境の修復などの課題にも同時に取り組むことが求められている」
ここでは、中央政府の財政負担による業態転換を要請している。習氏は、財政負担によってこの事態を収拾すべきであろう。それが、公平の原則に適うことである。


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