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韓国尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は6月3日、慶尚北道浦項(ポハン)の迎日湾(ヨンイルマン)沖に、大規模な石油とガスの埋蔵可能性があると発表した。それによると、迎日湾から38~100キロメートル離れた地域で、深さ1キロメートルに少なくとも35億バレル、最大で140億バレルの石油とガスが埋蔵(探査資源量基準=推定埋蔵量)されているという。

 

「無資源国」韓国にとっては、降って湧いたような「吉報」である。政府が明らかにしたところでは、ガスと石油の探査資源量がそれぞれ最大12億9000万トン、最大42億2000万バレルも埋蔵されている可能性があるとした。韓国全体の使用量と比べると、ガスは最大29年間、石油は最大4年間使用できる規模といものだ。

 

だが、大統領直々の発表には多くの疑問が寄せられている。実は、この探査結果が発表される前に、世界的な探査会社である豪州のウッドサイドが2007年から15間にわたり探査し「埋蔵量なし」と結論づけた場所である。それだけに、今回の発表に疑問付がついている。

 

『ハンギョレ新聞』(6月7日付)は、「『トップ企業は撤退』、石油ボーリング まず国民的疑問を解くべき」と題する社説を掲載した。

 

尹錫悦大統領が、「東海(トンヘ)の迎日湾(ヨンイルマン)には莫大な量の石油やガスが埋蔵されている可能性が高い」として探査ボーリング計画を承認したことを発表して以降、今回の政策決定の信憑性に対する疑問が日増しに高まっている。特に屈指のエネルギー企業であるウッドサイドが2023年1月に事業性が低いとの理由で同区域から撤退していたことが明らかになったことで、疑惑は膨らんでいる。

 

(1)「同社は、1954年の創業で資源開発を専門企業である。2007年から15年間にわたって、韓国石油公社とともに探査を実施してきた。ウッドサイドはその後、もはや将来性がないと判断される区域からは撤退するとの方針を立てたが、それらの区域に韓国の東海8鉱区や6-1鉱区北部地域なども含まれていた。政府は、ウッドサイドは企業買収・合併の過程で既存事業の再調整に入ったもので撤退したとしている。ただ、同鉱区の事業性が高かったにも関わらず撤退したか疑問が残る」

 

世界的な探査会社が15年間も探査した結果、探査を中止したという重い事実がある。それを覆す結果について、素直に喜べず疑問が沸くのは当然であろう。

 

(2)「このような疑問は今回、埋蔵の可能性が高いとの分析結果を提示したアクトジオの信頼性への疑問と相まって、いっそう強まっている。アクトジオ本社の所在地は一般住宅であり、年平均売上が3000万ウォン(約342万円)ほどに過ぎない小規模であることが知れわたってから、同社の探査力を疑う人々が現れているのだ。ただ、エクソンモービル出身であり、米国堆積地質学の会長も務めた創業者のビトール・アブレウ顧問の専門性は、低いと考えることはできない面もある」

 

今回の「有望」との探査結果を出した企業は、知名度も低く歴とした社屋も構えていない無名企業だ。ただ、顧問には米国堆積地質学の会長も務めた創業者が名を連ねている。

 

(3)「政府は、ウッドサイド撤退後、これまでに蓄積されてきた探査資料などを請求し、アクトジオの分析で新たな結果を得た、との立場だ。しかし、政府の大型プロジェクトに対する判断を、業歴が短く認知度の低い小規模な会社に任せてもいいのか、という疑問は依然として残る。最も大きな関心事は、最大140億バレルの埋蔵可能性があると判断した根拠と、ボーリング成功率を20%と見なした根拠だ。大統領が述べた通り「莫大な量」の石油やガスが適正な危険度の範囲内の採掘成功率で埋蔵されているのなら、探査ボーリングに反対する理由はない」

 

問題は、探査という仕事が「千三つ」と言われるほど僥倖に期待する面がある。ハッキリ言えば、「山師」的な仕事である。それだけに、国家事業として取組むには、探査会社にもそれなりの実績と知名度が必要であろう。

 

(4)「今回の探査は、水深1000メートル前後の深海で行われるため、1回のボーリングに1000億ウォン(約114億円)以上の費用がかかる。経済性が担保されるためには、埋蔵量が十分でなければならない。尹大統領のいいかげんな発表のせいで、まだ可能性の段階である油田探査に対する国民の関心と懸念は日々高まっている。外国企業と実務ラインばかりに押し付けることなく、政府は責任を持って呈された疑問を解消すべきだ」

 

尹大統領が、自ら発表した責任は重い。尹氏は、「人気挽回」程度の軽い気持ちで発表したかも知れないが、もっと慎重であるべきだった。