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中国は、途上国の過剰債務問題が先進国の貸付けによるものという主張を始めた。中国の責任転嫁であるが、こういう言動こそ西側諸国の対中不信を高めているのだろう。習氏は、国家主席に就任して間もない2013年に「一帯一路」構想を発表した。この時点ですでに、「中国化モデル」を発展途上国へ普及させる構想を持っていた。当時の中国は、世界覇権論に従い先手を打つつもりで、中国経済圏拡大を目指していたのだ。 

中国は、自国にとって戦略的に有利な国へ、「債務の罠」をしかけて貸付担保を取り上げる高利貸しまがいのことを行ってきた。西側は、あくまでも返済可能な範囲でしか貸付けず、その代表格が日本のODA(政府開発援助)である。日本は、超低利・長期返済を原則とした。一方の中国は、商業銀行ベースの高い金利と中期融資という、相手国の経済事情を弁えないものである。それだけに安易で大量の貸付によって、相手国を「縛る」行動に出ていたのだ。こうした事実が今、全て露見されている。 

『日本経済新聞 電子版』(6月9日付)は、「途上国債務『先進国に責任』」と題するインタビュー記事を掲載した。インタビューを受けたのは、中国人民大学・崔守軍教授である。 

中国と南米の関係は2000年代から深まってきた。多くの南米諸国にとって中国はトップの貿易相手で、投資や融資の受け入れも増えている。中国の狙いや今後について中国の専門家に聞いた。

 

(1)「(質問)中国は新興・途上国「グローバルサウス」の取り込みを加速しています。(答え)グローバルサウス諸国の共通の思いは西側が作り上げた国際秩序を変え、世界の統治システムを改善したいということだ。先進国は途上国の貧困や開発の問題を解決できなかった。途上国の開発援助を先進国だけに依存するのは不十分だ。中国は途上国に開発プログラムを提供し、支援したい。それを具体化するのが広域経済圏構想『一帯一路』だ。この構想は世界中のありとあらゆる地域を包含する。先進国が提唱するインド太平洋戦略などのように排他的ではない」 

グローバルサウスは、中立的立場を堅持している。それが、経済的な利益になるからだ。中国からも経済支援を受けると同時に、西側からも受けている。国益重視のしたたかな振舞である。後から支援に現れた中国は、グローバルサウスを振り向かせるために、多額の金品をばら撒いている。 

(2)「(質問)一帯一路は、新興国に過剰な債務を負わせてインフラの使用権を握る「債務のワナ」が狙いだとの指摘があります。(答え)歴史的にみれば、途上国の債務問題は先進国に責任がある。途上国は、世界銀行や開発援助機関を通じて先進国から借金してきた。途上国の債務構造を研究したところ、債務負担の重い一部の国でさえも中国からの借金は全体の債務の10〜20%に過ぎず、残りは世銀や先進国からの借金だった中国の目的が彼らの資産を奪おうとしているというのは論理的ではない。中国が途上国に融資する基本的な目標は共通の発展の達成だ。持続的な融資、資金回収、再融資だけがお互いの共通利益になる」 

下線部分は、全く事実に合わない話だ。中国は、過半の貸付を高利・中期返済で迫るので多くの債務国が財政的に窮地へ陥った。世銀など先進国の融資は、低利・長期返済が原則である。普通の経済運営国であれば破綻しないはずだ。ただし、貸付に当って厳しい条件がつく。中国は、高利貸しと同じで安易な貸出であるので、高利・中期返済で貸出リスクを軽減する戦術だ。言ってみれば、中国は「街金」同様の振舞だ。世銀など西側は、由緒正しい「銀行」である。

 

(3)「(質問)中国が南米を重視する理由を教えてください。(答え)南米地域は領土が広いうえに出生率が高く、潜在的な消費力が大きい。南米との貿易額はここ20年間で30倍以上に増えた。食料安全保障の観点からも重要だ。ブラジルやアルゼンチンにとって中国は牛肉や鶏肉、大豆の大口の輸出先だ」 

中国が、「一帯一路」コースから外れた南米へ進出しているのは、食糧確保戦術である。中国の食糧自給率は、70%台前半まで低下している。それだけに、南米を新たな食糧輸入基地にしたいのだ。 

(4)「(質問)中国のグローバルサウス戦略の課題はどこにありますか。(答え)米国に代表される西側が『債務のワナ』と騒ぎ立て、グローバルサウス諸国の世論形成で障害を作り出している。世界の世論は英語メディアが支配しており、途上国への影響も大きい。中国はこれら(G20)の会議で、グローバルサウス内の協力や共同発展の重要性を提唱する。中国の技術力や産業競争力は高度化した。グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)を巡る連携も進めていく」 

中国は、地元のASEAN(東南アジア諸国連合)からもっとも嫌われている国だ。威張って指図するのが原因である。日本は、欧米を抑えてもっとも好まれている國である。最近の有識者アンケートで判明した。

 

(5)「中国はこれらの会議でグローバルサウス内の協力や共同発展の重要性を提唱する。中国の技術力や産業競争力は高度化した。グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)を巡る連携も進めていく。中国の取り組みは排他的ではなく、日本の参加も歓迎する。途上国への発展支援を通じて利益を得るという点で日中は対立しない。日本は中国を封じ込めようとする米国の外交戦略に追従しすぎている。独自の外交政策をもつべきだ」 

日本が、中国のお先棒を担いで一帯一路へ参加するはずがない。日本は、米国とともに一帯一路から一貫して距離を置いている。理由は、一帯一路が中国の国益実現のために存在するからだ。日本は自由主義という価値基準である。中国は、ロシアとともに権威主義である。外交基本路線が、日中で異なる以上、交わるはずがない。