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主要7カ国(G7)首脳会議は13日、イタリア南部プーリア州で始まる。G7は、ウクライナに侵攻するロシアの重要物資の調達を支援する中国などの銀行に対し、取引の停止を求める警告措置を検討する。従わない場合は、国際金融ネットワークから排除するなどの制裁を検討する。欧州外交筋などが、毎日新聞へ明らかにした。

 

ロシアが、西側諸国からの経済制裁などで輸入停止した品目は、中国などからの代替品でまかなっている。民間向け航空産業では部品不足に直面したが、制裁に参加していないアラブ首長国連邦(UAE)などからの交換部品購入でしのいでいるとみられる。こうした「抜け穴」を塞いで、ウクライナ侵攻を止めさせる手段は、第三国への制裁強化しかない。具体的には、これら取引に加担した金融機関を世界のドル決済機構から排除する以外に道はないという結論のようである。

 

『毎日新聞』(6月12日付)は、「ロシア支える中国の銀行を『除外』、G7が検討する新たな金融制裁案」と題する記事を掲載した。

 

主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)は13日、イタリア南部プーリア州で始まる。G7は、ウクライナに侵攻するロシアの重要物資の調達を支援する中国などの銀行に対し、取引の停止を求める警告措置を検討する。従わない場合は、国際金融ネットワークから排除するなどの制裁を検討する。欧州外交筋などが明らかにした。

 

(1)バイデン米大統領は2023年12月、兵器製造に必要な物資の対ロ輸出に関与した銀行に対し、監視を強化する大統領令を出した。G7の検討案では、ロシアとの取引が明らかになった銀行に対し、第1段階として取引の停止を警告し、履行されない場合は、G7の大手銀行などで構成する国際金融ネットワークから排除する。G7はこれまで、ロシアの戦争資金を減少させるため、制裁を強化してきた。22年12月にはロシア産原油の上限価格を設定したほか、半導体や工作機械など兵器製造に利用可能な重要物資の対ロ輸出を禁止してきた。だが、ロシアの戦争継続能力に当初想定したほどの打撃は与えられていない」

 

元ロシア中央銀行顧問でカーネギー・ロシア・ユーラシアセンター非常勤研究員のアレクサンドラ・プロコペンコ氏は、原油、天然ガスなどのエネルギー資源や、世界有数の生産量を誇る小麦などの食料生産力を背景に、ロシア国内で極端なモノ不足が起きていないことを指摘する。また、経済制裁などで西側諸国からの輸入が停止した品目は、中国などからの代替品でまかなっている。民間向け航空産業では部品不足に直面したが、制裁に参加していないアラブ首長国連邦(UAE)などからの交換部品購入でしのいでいる。

 

プロコペンコ氏はまた、「豊富な資源と、中国、インドなどとの貿易の拡大が、ロシア経済を支えている。西側諸国との貿易が減少した分、より制裁への耐久性が増す結果になった」と分析する。また一定の生活水準を維持できていることから、「国民の不満が政府に対する暴動に発展する可能性は低い」と予想した。以上、『毎日新聞』(2月13日付)が報じた。

 

(2)「G7を中心とする欧米の制裁を半ば骨抜きにしてきたのがロシアと中国の取引だ。両国間の貿易は、ロシアによるウクライナ侵攻後の22年春以降に加速し、23年の貿易総額は前年比26%増の約2400億ドルと過去最高を更新。19年に両国が設定した目標を1年前倒しで達成した。中国がロシア産原油などを買い増しているほか、中国からの自動車や携帯電話、電子部品などの輸出が急増。ロシアの23年の貿易決済に占める人民元のシェアは3割超に達しており、米欧の制裁を受けたロシア経済を中国が大きく下支えしている。今回のサミットでは、中国などの銀行を対象にした制裁とともに、制裁が世界の金融システムへ与える影響を軽減するための対策も協議する。制裁の対象も大手銀行ではなく、小規模の銀行にする」

 

中国の大手銀行は、米国のドル決済機構からの排除案を警戒しており、対ロ決済を忌避している。中国税関総署が5月発表した統計によると、4月の対ロシア輸出は人民元建てで前年同月比10.8%減少した。3月も13%減とマイナスだった。米国の対ロ制裁が影響している可能性が指摘されている。

 

中国への銀行制裁は、大手銀行では影響が大きすぎるので、小規模銀行に止めてその波及力を見込んでいるのであろう。大手銀行をドル決済機構から排除したならば、中国の貿易がほとんどストップして、中国経済は破綻するからだ。これは、同時に西側諸国にも影響する「禁じ手」である。中国の台湾侵攻の際は、躊躇なく発動される。