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日米で政策金利操作を巡って、神経戦が繰り広げられる気配だ。日銀の植田和男総裁は6月14日、金融政策決定会合後に記者会見し、7月の次回会合で政策金利を引き上げる可能性は「当然あり得る」と言及した。外国為替市場の円安進行には、「物価の上振れ要因であり、十分注視している」とけん制したのだ。『共同通信』(6月14日付)が報じた。 

日銀が、国債の購入額を減らすと長期金利が上昇する可能性が強まる。固定型の住宅ローンや企業の借り入れの負担が増え、経済に打撃となることが懸念される。ただ、追加利上げに踏み切るかどうかは、経済や物価の情勢次第とした。植田氏は、過去の記者会見で円安に「無関心」なイメージを与えただけに、円相場を意識した発言になった。 

円相場は、日米金利差が大きく影響していると指摘されている。現状では「5.5%ポイント」も開いていることから、円キャリートレードと言われる「円を借りて他通貨や商品へ投資する」スタイルが定着している。これを覆すには、日米金利差の縮小が不可欠だ。その条件が、日米金融当局の金利操作で整えば円安相場へ影響を及ぼせる。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月14日付)は、「FRB、利下げ前に金利押し下げも」と題する記事を掲載した。 

米連邦準備制度理事会(FRB)は、経済に働きかける方法が一つしかないわけではない。近いうちに、より目立たない手段を使って金利を押し下げ始める可能性がある。それでも企業や家計には確実に影響が及ぶだろう。 

(1)「FRBが短期金利を最も直接的にコントロールする方法は、銀行間で資金を貸借する際の金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を操作することだ。経済全般で適用される金利は、他にもたくさんあり、それらは全て、FRBの短期的・長期的な政策見通しによる影響を間接的に受ける。FRBはFF金利の誘導目標を操作しなくても、今後の方針を示すことで経済全般の金利を動かすことが可能であり、実際にそうしていることが多い」 

FRBは、これまで金融市場でのFF金利を操作して、政策金利を動かす例が多くみられた。今回も政策金利を引下げる前にFFレートの引き下げを行い誘導する可能性を指摘している。そうなれば、FRBの金利操作の自由度がぐっと上がるとしている。

 

(2)「ある意味、このプロセスはすでに始まっている。この数週間に発表された米経済指標の一部が低調だった(顕著な例外は7日に発表された堅調な雇用統計)ことで、10年物の米国債利回りはFRBが米東部時間12日午後2時(日本時間13日午前3時)に政策声明を発表する直前に4.25%へ低下した4月下旬には4.7%を付けていた。FRBが年内1回のみの利下げを示唆する高官らの予測を発表すると、同日遅くに上昇に転じ、4.33%に到達。そして13日朝に軟調な卸売物価指数(PPI)が発表されると、4.27%程度まで低下した。この利回りが動くと、実体経済における借り手の状況に即座に影響が及ぶ」 

すでに、FRBの金利操作が始まっている。10年物の米国債利回りは、4月下旬の4.7%から6月13日朝に軟調な卸売物価指数(PPI)が発表されると、4.27%程度まで低下した。政策金利が動く前に、10年物の米国債利回りは低下に転じている。 

(3)「重要なことに、FRB高官らが今後の利下げについて予測を立てたのは、市場予想を下回る5月の消費者物価指数(CPI)が発表される前のことだった。CPIの発表を受けて予測を修正する機会があったはずなのに、そうしなかったのだ。5月のCPIは、年初には停滞していたインフレ率が着実に低下しつつあることを改めて裏付けた。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIの前年同月比は、15カ月連続で横ばいか低下している」

 

CPI上昇率(総合)は、2022年6月の9.%から23年6月に3.%まで劇的に低下し、その後の1年間は横ばい圏内で推移している。振れ幅の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数では、5月は前年同月比の伸び率が3.%となった。市場関係者は3.%予想だった。コア指数は、総合指数とは別に着実に低下しており「戻り現象」は一度も起こっていない。これは、大きな成果である。 

(4)「FRBのパウエル議長は12日の記者会見で、「インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信を強めるには、より多くの良好なデータを確認する必要がある」と述べた。そのようなデータは、今後2回の月次CPI統計でさらに明らかになる可能性があり、そうなればFRBは利下げに前向きな姿勢を示し始めるだろう。最も注目すべきは、7月30・31日に開かれる次回の連邦公開市場委員会(FOMC)だ。FRBの足元の景気認識を示す政策声明が発表される。もちろん、パウエル氏の記者会見もある。FRBはこれらの場を利用して、インフレが軟化しているとの確信が強まったと明示するかもれない」 

次回の連邦公開市場委員会(7月30・31日)で、インフレ軟化の見通しが語られる可能性も出てきた。 

(5)「現実にはFRBの政策変更は、少なくともベン・バーナンキ議長の時代以降、実際に行われる頃には形式的なものとなっていることがよくある。そのかなり前に地ならしが済んでいるからだ。今回もそうなる可能性が高い」 

下線のように、政策利下げがFRBによる市場金利誘導によって先行される可能性が出てきた。「年1回利下げ」という見方を鵜呑みにしていると危険である。