NTTが、開発中の光技術を使った次世代(6G)通信基盤「IOWN(アイオン)」は注目を集めている。既存インフラに比べて通信の速度と容量を向上し、消費電力は抑える。膨大なデータ処理と電力が必要な生成AI(人工知能)時代の新たなインフラとして普及する可能性がある。伝送容量は、28年度に125倍を目指す。消費電力は、25年度に10分の1、32年度に100分の1まで減らせる見通しだ。
『日本経済新聞 電子版』(7月7日付)は、「光の通信装置、海外展開を国が支援 実証試験などに補助」と題する記事を掲載した。
総務省は光の高速通信技術で海外展開を支援する。通信装置を海外で実証試験する場合などに補助、を出し、市場開拓の足がかりにする。光技術は速度や省エネルギー性能で優れ、NTTの次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」など日本勢が先行する。
(1)「生成AI(人工知能)などの新技術が普及すればデータ通信量が増え、世界のデータセンターの電力消費も急増が見込まれる。電気処理を光に置き換える「光電融合技術」は、通信の遅延が小さく、消費電力も大幅に抑えられる利点がある。次世代通信規格「6G」をにらみ、通信で世界が直面する課題を解決する技術として注目を集める」
生成AI普及させる上で最大の障害は、電力消費量の急増である。米国IT各社は、米国内にある原子力発電所を所有する企業の約3分の1と協議を実施中おされている。『ウォールストリートジャーナル』(7月1日付)は、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はコンステレーション・エナジーが所有する米東海岸の原発を巡り、直接電力の供給を受けることで合意に近づいていると報じている。
こうなると、省エネのカギを握るのが電子処理を光に置き換えるNTTが開発している「光電融合」技術である。光を通信だけでなく、データ処理にも使う。半導体内部に組み込むと、集積する半導体チップや基板の処理を光に置き換え、大幅に消費電力を減らせるとして注目されている。
(2)「近く総務省が、海外に売り込む製品の公募を始める。欧州の通信会社に製品の性能を試してもらう取り組みなどの必要経費を助成する。実証結果を踏まえ、光電融合を生かした製品の海外展開支援の強化も検討する。早期に世界市場を開拓して、日本が強みを持つ技術の競争力を高める。通信インフラで国内メーカーの存在感が高まれば、日本の経済安全保障上の意義も大きい」
省エネの切り札である「光電融合」技術は、NTTのお家芸である。米国との協力を基盤に世界へ売り込めば、「6G」の基幹技術として大きな成果が期待される。
(3)「商用化の動きも進む。富士通も光技術を生かした高速大容量の伝送装置を開発した。スーパーコンピューターの開発で培った水で装置を冷やす技術などを活用し、送風機で冷やすよりも消費電力を抑える工夫をした。国内ではKDDIが通信網に富士通の伝送装置を採用し、電力消費量を従来比で40%減らした例もある」
富士通は、光技術を生かした高速大容量の伝送装置を開発した。消費電力を大幅に抑える工夫がされている。すでに、KDDIが富士通の伝送装置を採用している。
(4)「東急不動産は、渋谷駅に隣接する大型複合ビルでNTTが開発を進めているアイオンを採用した。防衛省も次世代の通信インフラとして導入を検討する。総務省が、こうした製品の海外展開支援に乗り出す背景には、技術開発で他国に先駆けながらも実用化が遅れて普及しなかった過去の反省がある。通信分野でも高速通信規格「5G」に対応した基地局では海外勢が席巻する。英調査会社のオムディアによると、NECや富士通など日本勢のシェアは3%程度にとどまる」
国内ユーザーが、IOWNの採用に動いている。東急不動産が採用を決定し防衛省も検討中である。総務省は、これらの採用実績を足がかりにして、海外への売り込みを支援する。
(5)「アイオンを開発するNTTも反省を生かし、開発段階から技術仕様などを話し合う国際団体を20年に設立した。ソニーグループや米印得る、競合のKDDIなど国内外で100を超す企業・団体が参画する。データセンター投資に積極的な米グーグルも加わるなど参加事業者の裾野は広がりつつある」
今年5月に開催された日米首脳会談の合意書では、NTTの「IOWN」の研究開発が記載されている。日米政府が、IWONを国際標準技術として推進する体制が整った。NTTは、これまで開発した革新技術が世界標準に採用されなかった過程を反省し、米国を初めとして世界中へ協力依存する。光半導体製造では、日本の半導体企業ラピダスも意欲を見せていると報じられている。米グーグルも一役買えば、世界標準へ向けて好スタートが切れよう。
光の通信技術は、日本勢が技術的に優位とされる。次世代通信規格「6G」時代に日本勢が挽回するチャンスにつながるとの期待も大きい。現行の高速通信規格「5G」では、海外メーカーが基地局の世界シェアの大半を占有している。
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