あじさいのたまご
   

中国は、「一帯一路」との経済関係を深めている。日米欧とはデリスキング(リスク削減)で、貿易関依存度がしだいに下がりつつある。西側は、サプライチェーンの分散化という狙いから、従来のように中国一辺倒を見直している。

 

『日本経済新聞 電子版』(7月8日付)は、「中国貿易、『一帯一路』向けが半数 投資は焦げ付き増加」と題する記事を掲載した。

 

中国は広域経済圏構想「一帯一路」参加国との貿易を拡大させてきた。2023年の貿易総額に占める一帯一路貿易の割合は46%と10年で8ポイント上がった。日米欧で中国への貿易依存を減らす「デリスク(リスク回避)」が広がり、中国は新興国との貿易で外需を取り込もうとしている

 

(1)「一帯一路構想は、中国の習近平国家主席が13年に提唱した。東アジアと欧州を結んだ古代シルクロードになぞらえたもので、参加国はアフリカや南米にも広がった。およそ150カ国が中国と投資協力などの覚書を交わした。参加国のうち、中国税関総署が国別輸出入の値を月次で公表する152カ国の動向を調べた。23年12月に一帯一路からの離脱を表明したイタリアは除いた」。

 

一帯一路構想は、中国の過剰生産物の販売先確保が目的であった。鉄鋼・セメント・化学製品などが主なもの。融資は、商業銀行レベルの金利である。相対的に高い金利であるので、債務国の返済が滞るケースが増えている。

 

(2)「23年の貿易総額は2兆7200億ドル(約435兆円)だった。13年と比べると7割増えた。4割超だった中国全体の貿易総額の伸びを大きく上回った。その恩恵は中国に偏っている。23年は中国の内需不足で輸入が落ち込んだが、輸出は増えた。この結果、輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は2900億ドル程度となった。中国が稼いだ黒字の34%を占めた」

 

一帯一路構想の目的は、中国製品の売り込みにあった。貿易黒字が全体の34%を占めているのは当然であろう。

 

(3)「電気自動車(EV)が、新興国向け輸出をけん引した。23年にアジアへ出荷した台数は輸出全体の4割を占め、欧州と並ぶ規模となった。米欧は中国製EVへの制裁関税を決めた。今後、新興国への輸出比率が一段と高まる可能性がある」

 

米欧へのEV輸出が困難になるので、一帯一路が受け皿になろう。だが、購買力が限られるので数量的な伸びは鈍化する。

 

(4)「貿易では参加国との関係を強めてきたが、インフラ建設など投資を巡る状況は少し異なる。一帯一路構想が動き出した当初、中国は豊富な資金力で参加国への投資規模を膨らませた。誤算は新型コロナウイルス禍で新興国経済が疲弊し、中国からの融資が焦げ付いたことだ。米調査会社ロジウム・グループによると、20〜22年に融資条件の再交渉などに応じた事実上の不良債権は17〜19年の4.5倍に膨張した。問題債権の増加に伴い、外貨の融通など資金援助せざるを得ない例も少なくない」

 

20〜22年に融資条件の再交渉などに応じた事実上の不良債権は、17〜19年の4.5倍に膨張した。中国が融資した資金は、国際金融市場で借入れた資金の「又貸し」が多く含まれている。これが、貸出金利を高くしている理由だ。

 

(5)「中国も新規投資を抑え気味だ。米アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)によると、23年の一帯一路に関する投資は804億ドルだった。年600億ドル台に落ち込んだ20〜22年からは回復したが、年1100億ドル台の投資が続いたコロナ前には及ばない。習氏は23年10月に開いた一帯一路の首脳会議で「現実的で、実りある協業を進めていく」と述べ、規模ありきの投資を見直す方針を示した。焦げ付きの増加など中国にとっての負担増が軌道修正の背景にあるとみられる。経済安全保障の観点から中東などでエネルギー投資を増やす方針だ」

 

一帯一路融資は、貸出方針を絞っている。従来のような「債務の罠」にはめて、担保物権取り上げが不可能になっているからだ。国際批判を回避する目的である。