韓国の家計は、債務に対する感覚が他国と異なっているようだ。家計債務の割合が、GDPに占める比率が、4年連続でOECD(経済開発協力機構)34カ国中で1位を記録している。昨年末当時100.1%で、1年前より少し下がったが、依然として家計債務が国内総生産を上回る水準だ。
家計債務比率が、対GDP比で80%以上に達すると経済へ悪影響を与えるとされる。債務の返済が急がれるから、消費支出を削減せざるを得ないという事情による。現状は80%どころか、100%を超えている。韓国経済にとっては気になるデータである。
『中央日報』(7月6日付)は、「韓国の家計債務2246兆ウォン、過去10年間の増加幅は先進国トップ」と題する記事を掲載した。
韓国の政府、企業、家計の負債を合計した昨年末時点の国家総債務6033兆ウォン(約702兆円)のうち家計債務は37%(2246兆ウォン)を占める。先進国平均(27%)に比べ高い。韓国経済は家計債務の割合が相対的に高い。家計債務は政府や企業の負債よりも所得や資産価格の変動に弱い。
(1)「韓国の家計債務は2011年に1000兆ウォンを超えて以降、右肩上がりだ。国際決済銀行(BIS)によると、昨年末、韓国の家計債務の対国内総生産(GDP)比は100.5%だった。BISが分類した先進11カ国・地域では、スイス(127.8%)、オーストラリア(109.7%)、カナダ(102.2%)に次ぐ高水準だ。韓国の家計債務は過去10年間で22.1ポイント上昇した。10年間の上昇幅は先進11カ国・地域で最も高かった。同じ期間に英国(-10.2ポイント)、米国(-8.9ポイント)、ユーロ圏(-7.9ポイント)などは家計負債の対GDP比がむしろ低下した。家計が借金を減らしたか、経済成長が家計債務の増加ペースを上回ったためだ」
借金をして住宅を購入するほかに、株式投資をしていることが大きな理由だ。韓国社会は、賭け事が好きである。思惑が外れると、家計を猛烈に圧迫されるのだ。
(2)「金融研究院の張珉(チャン・ミン)研究委員は、「企業の負債は今後の企業活動次第で持ちこたえられる投資と見なせるが、家計債務はそうではない。家計債務の増加ははるかに警戒しなければならない」と指摘した」
韓国で、家計債務管理に無関心であるのは、他人の儲け話に誘発されて、自制心をなくしてしまうケースが多い。客観的に状況判断するという冷静だが不足している。
(3)「家計債務の対GDP比が80%を超えると、経済成長率が低下し、景気が低迷する確率が高まるというのが学界の定説だ。韓国大統領室の朴春燮(パク・チュンソプ)経済首席秘書官は就任当初、家計債務抑制を最優先課題に掲げ、「家計債務の対GDP比は80%まで低下すべきではないかと思う」と話した」
家計債務の対GDP比が、80%を超えると経済成長率に影響する。これは、当然のことだ、債務返済が優先されるからだ。
(3)「韓国の家計債務の対GDP比は2014年に初めて80%を超えて以来、上昇傾向にある。梨花女子大の石秉勲(ソク・ビョンフン)教授は「家計債務は積み上がっているが、最近は金利も高いため、元利償還負担が重い。家計の負担が重いため、消費が萎縮し、内需が全体的に不振にならざるを得ない状況だ」と話す」
下線部の事実は、今後もますますこの基調が高まることを示唆している。潜在成長率が低下するからだ。
(4)「韓国では、家計が稼ぐ資金や保有する資産と比べ、家計債務の規模が先進各国よりも大きいことも深刻な問題だ。世界的な金融危機以前の2008年までは、家計債務が可処分所得に占める割合(返済負担率、DTI)は138.5%だった。言い換えれば、一切他の支出を行わず、収入を全額借金返済に充てたとして、完済まで1年4~5カ月かかることを示す。しかし、2022年末時点でこの数値は203.7%に上昇した。現在は家計が2年間の収入を全部借金の返済に充てたとしても完済できない」
2008年、返済負担率は138.5%であった。2022年には、203.7%にまで高まっている。この傾向は、今後ますます高まるであろう。
(5)「韓国銀行が北米2カ国、欧州11カ国、アジア2カ国の先進15カ国と比較したところ、同じ期間のDTIの先進国平均は160%台で変化がほとんどなかった。他の先進国は家計の所得が増えた分だけ借金を増やしたが、韓国の家計は所得の増加を上回るペースで借金を急激に増やしたことを示している。韓国家計の資産に占める負債の割合は2022年末時点で51%だが、先進国平均は28%だ。韓国銀行は最近、金融安定報告書を通じ、「家計所得が減少したり資産価格が急落したりすれば、債務返済能力が低下する可能性があり、留意すべきだ」と警告した」
韓国家計の債務好きは、他国と異なっている。債務を恐れない気風が、強いのであろう。そうとしか言いようがないのだ。
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