計画経済の壮大な無駄が現在、中国で繰り広げられている。地方政府は、いかに経済成長を実現するか。それが官僚の出世の尺度であるだけに、新エネ車(EV・PHV)の設備増強に取組んでいる。これが、過剰生産の原因だ。ただ、設備投資を強行しているので、この分がGDPを押上げている。こういう無駄な投資の繰返しが、中国経済を支えているのだ。
『日本経済新聞 電子版』(7月9日付)は、「中国車、過剰生産が招く悪循環 競争激化で淘汰・撤退」と題する記事を掲載した。
世界で販売を広げる中国製の電気自動車(EV)に対し、追加関税を決めた欧州だけでなく北米などでも流入に歯止めをかける動きが広がる。中国の自動車業界は過剰生産問題を抱えている。輸出先が絞られると、国内でだぶついた低価格な中国車が東南アジアや南米などになだれ込み、世界の自動車市場に波乱を巻き起こしかねない。
(1)「中国では、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車分野で少なくとも50社以上が乗用車を生産し、激しい競争が続く。大手の比亜迪(BYD)は2月以降、10車種以上の値下げに踏み切った。中国メディアによると、車各社や各地方政府の計画を合算した場合、25年の新エネ車の生産能力は3600万台規模に達するとの見方がある。生産台数見通しと比べ、2000万台近く過剰となる試算だ」
トヨタ自動車は過去、中国でEV普及を助けるべく自社のHV技術特許を無料公開したことがある。これが引き金になって、中国のEV過剰投資が始まった。25年の新エネ車の生産能力は3600万台で、過剰能力が2000万台とは「壮大な無駄」な投資になっている。操業度は44%にすぎない。
(2)「過剰生産の解消に向け、中国が活路を求めてきたのが輸出だ。中国汽車工業協会によると、23年の中国からの新エネ車の輸出は約120万台と22年比で78%増えた。中国製のEVを巡っては、欧州連合(EU)で5日に追加関税を課す措置が始まったほか、米国も高い関税を課している。ブルームバーグ通信は6月、カナダ政府も関税を引き上げる検討に入ったと報じた」
EUの追加関税率引上げによって、中国EV輸出は約25%の減少予測になっている。この中には,欧米国企業のEVも含まれている。
(3)「新エネ車輸出の4割は欧州向けだ。欧米から中国車が締め出されれば、東南アジアや南米への輸出が増える可能性がある。すでに低価格な中国車の流通が増えている東南アジアでは新車販売の競争が激化している。中国車の台頭が著しいタイでは、スズキが四輪生産から25年末で撤退し、ホンダも25年までにタイの2工場を統合し、生産能力を5割以下に下げる」
欧米から締め出される形の中国EV輸出は、東南アジアに向うものと予測されている。東南アジアで地盤をつくっている日本車にも影響は出る。ただ、中国EVの電池は、低コストが主眼で走行距離が短い欠点を抱えている。「EV初物客」には受けても、いずれ飽きられる宿命を負っている。この欠陥を補うのが、全固体型電池である。トヨタが、27年以降に発売する。それまでの繋ぎ役が、中国EVである。
(4)「過剰生産に歯止めがかからないなか、中国でも淘汰が始まった。現地報道によると、新興EVの華人運通(ヒューマン・ホライゾンズ)の高級ブランド「HiPhi」は2月に操業を停止した。中国は23年に自動車輸出台数で日本を抜き、世界首位となった。自動車産業は、低価格な中国車と対峙する転換期を迎えている」
操業度4割でも、地方政府は「雇用対策」で補助金を出している。EVが、失業対策になっている面があるのだ。
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