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米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は9日、米議会の公聴会で、足元の物価指標がインフレの沈静化を見せつつあると発言した。「さらに良好なデータが得られれば、物価上昇率が持続的に目標の2%に向かっているとの確信を強められる」と述べて,利下げへの展望を示した。 

米国の6月失業率は、4.%と高まっている。1年前と比べ、0.5ポイントの急上昇になった。これは、過去の例からみて米国景気が、「失速」するシグナルである。消費者物価上昇率は、5月が3.3%と低下している。ただ、FRBの目標である2%まで金融引き締めを続ければ、これから失業率が急激に高まるリスクを抱えるのは確実だ。こうした状況判断から、「利下げの可能性」を示唆したとみられる。 

『フィナンシャルタイムズ』(7月10日付)は、「FRB議長、インフレ抑制に『かなりの進展』と証言」と題する記事を掲載した。 

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレとの闘いというFRBの任務は「かなりの進展」を遂げていると述べる一方、23年ぶりの高水準にある金利の引き下げに動く前に「さらに良いデータ」を求める考えも示した。


(1)「9日に議会に提出した書面証言で、パウエル氏はFRBがインフレ率を目標の2%へ下げようとするなか、米経済はバランスがとれた状態に戻りつつあると楽観的な見方を示した。FRBが重視する個人消費支出物価指数は5月の上昇率が前年同月比2.%に下がった。パウエル氏は、物価統計はこのところ心強い数字となっており「一段と緩やかな進展」が示されていると指摘。「さらに良いデータが得られれば、インフレ率は2%に向かって持続的に推移しているという確信が強まる」と説明した。「この2年間、経済は(FRBのインフレ目標に向けて)かなりの進展を遂げた」としたうえで、労働市場も「堅調なままで過熱感は解消した」と付け加えた」 

パウエル氏は、微妙な局面に立たされている。これ以上、高金利を続ければ景気の腰を折ってしまうギリギリの事態になっているからだ。失業率が急上昇している。 

(2)「上院の銀行・住宅・都市問題委員会でのパウエル氏の証言は、FRBが政策金利の引き下げの時期を検討するうえで、物価だけでなく雇用の動向も見極めなければならない難しさを浮かび上がらせた。政策金利は2023年7月から5.25〜5.%に据え置かれている。利下げが早すぎれば、インフレ抑制の計画が狂いかねない。逆に金利を高水準のままあまりに長く維持すれば、必要以上に多くの米国人を失業に追いやるリスクがある」 

パウエル氏の苦しい胸の内を明かしている。

 

(3)「パウエル氏は、高金利を長く続ければ経済を「不当に」弱める恐れがあるとも語り、「我々が直面しているリスクはインフレだけではない」と断じた。銀行委員会のブラウン委員長(民主党)から問いただされたパウエル氏は、国民の雇用を危うくすることにならないよう「我々は現在、裏表のリスクを抱えていることを非常に強く意識している」と答えた。パウエル氏は、政策の決定が「会合ごと」に行われるとしつつも、FRBの次の一手は利上げより利下げになる公算が大きいと述べた。ジャック・リード議員(ロードアイランド州選出)の質問に対しては、インフレ率の低下が続き、労働市場が引き続き堅調であれば「可能性が高い方向」は「適正な時期に政策の緩和を開始する」ことだと話した」 

7月11日に、6月の消費者物価指数が発表される。市場の予想では3.1%上昇である。5月の3.3%よりも0.2ポイントの低下見こみである。「景気の余熱」は,ハッキリと下降している。 

(4)「24年に入ってインフレ率が上昇し、夏前の利下げ開始という観測が覆されたことから、FRBは神経をとがらせている。利下げをする前に、インフレ鈍化のさらなる証拠を得たいと考えるようになった。もっとも、労働市場には過熱感解消の兆候が表れるようになり、夏以降の利下げ観測が高まっている。6月の失業率は4.%で、21年11月以来の低水準だった。労働市場は「堅調だが過熱していない」ことを示す状況だとパウエル氏は9日に述べた。直近6月に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨も含め、FRBは労働市場が突如として軟化すれば、利下げを余儀なくされる可能性があると強調するようになった」 

消費者物価状況も重要だが、失業率の急上昇=景気後退前兆となれば、FRBの「オーバーキル」(景気冷やしすぎ)が非難される。現局面は、難しい判断を迫られている。

 

(5)「市場では、FRBが7月会合で利下げしないとの見方が広がっているが、9月の利下げを見込む声が過半を占める。6月時点で当のFRBは年内1回の利下げを想定していた。とはいえ追加利下げを支持する意見も多かった。9月会合は11月の米大統領選前の最後の会合となる。選挙後に年内2回の会合が予定されている。有権者はインフレと高金利を重視しており、バイデン大統領の支持率も足を引っ張られている」 

市場は、9月の利下げ予想を強めている。株価は、これを織り込んで高騰している。

 

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2024-07-04

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