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北朝鮮は、南北統一は不可能であり、南北は敵対的な2つの国家関係だと宣言した。一つの民族、統一という用語も禁じて関連組織を撤廃したほど。南北朝鮮は過去、国連加入の際に「2つの国家」と認識されたが、南北間の基本合意書を通じて国と国の関係でなく、統一されるまで暫定的な特殊関係と規定してきた。北朝鮮は、この規定を破棄して「2つの国家」と関係性を断ち切る措置に出ている。 

こうした北朝鮮の動きを受けて、韓国最大野党「共に民主党」の一部から、2国家論を唱え始めた。すでに若者は南北統一に関心を失っており、南北朝鮮の統一論は事実上、消える運命となって来た。これは、韓国左派が拠り所の一つを失う重大な意味を持っており、日本はこの動向に目を逸らしてはなるまい。韓国左派の変化という意味である。 

『中央日報』(7月14日付)は、「韓国民主党から出た2『国家論』、『若い世代の統一意識認めなければ』」と題する記事を掲載した。 

南北統一は、政界で保守と進歩に関係なく絶対的命題に近い。特に民族解放(NL)系列の学生運動界の人たちが多く含まれた「共に民主党」の場合、異論すら出しにくい「聖域」に近い。民主党出身の金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が平壌(ピョンヤン)を訪問し南北首脳会談を行っただけに、「南北平和統一」が党の核心価値という認識もある。

 

(1)「民主党の李蓮喜(イ・ヨンヒ)議員は11日、「1つの民族、2つの国(2国家論)に対する議論をしなければならない」と公開主張した。民主党全国党員大会準備委員会綱領政策分科委員会の討論会で、だ。李議員は党シンクタンクである民主研究院の副院長を務めた李在明(イ・ジェミョン)派の人物だ」 

韓国が、北朝鮮に対する認識で客観的になることは重要である。文政権当時は、「20年以内に統一する」という青写真を描き、それまで左派が政権を握り続けるという前提を立てていた。検察制度を骨抜きにして、左派政権の捜査を妨害する手はずまで立てていたのだ。驚くべき陰謀である。 

反日政策は、その一環であった。南北朝鮮の統一によって日本へ対抗するという大きな目標を立てていた。文在寅氏は今、どんな思いで北朝鮮の動きを見ているか興味深い。

 

(2)「李議員は、「南北関係は簡単に復元されにくい状況だが、若い世代を中心に認識が変わっている。民主党政権で南北関係をどのように解決していくのかについて悩みがなければならない」と話した。その上で「南北間の経済協力と文化交流を通じて相互理解と信頼を増進し、平和共存に向けた案を模索する必要がある。綱領作業に『2つの国』という認識で対北朝鮮政策を組むことも議論されれば良いだろう」と主張した。「平和統一追求」を明確に掲げた既存綱領と違い北朝鮮を個別の国と認定しようという意味だ」 

国際情勢の変化も大きい。中ロ朝が、軍事的にワンブロックを形成し始めている現在、北朝鮮は韓国と統一するメリットがなくなったのだ。北朝鮮は、中ロによって安全を保証してもらうことを選択した。ただ、中ロが経済的に疲弊したとき、北朝鮮は再び韓国へ接近するだろう。その時がいつか。20~30年先には訪れるであろう。 

(3)「進歩陣営の長い間の価値に「南北統一」に対して、反旗を翻した挑発的主張に野党圏はざわついた。党内の一部では、「保守の人々がするような発言」(首都圏初選議員)という批判が出てきた。「技術的に党綱領に盛り込むのは不可能だ」(党役員)という主張も提起された。現行の憲法には「大韓民国は統一を指向し、自由民主的基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立し推進する」(第4条)と明示されており、「2国家論」をすぐに政党綱領に盛り込むことはできないという趣旨だ」 

左派は、北朝鮮との関係を薄めれば保守党との話合いベースができる可能性が生まれる。なぜなら、北朝鮮が「思想的母国」でなくなるからだ。文政権当時は、北朝鮮のご機嫌伺いに終始していた。それがなくなるだけでも、左派は保守派との話合いムードを高める可能性が出てくる。

 

(4)「昨年、ソウル大学統一平和研究院が実施した統一意識調査で、統一が「とても必要だ」と「やや必要だ」という意見は全年齢帯を合わせて43.8%にすぎなかった。20代の場合「統一が必要だ」と答えた割合は28.2%にとどまった。20代の41.2%は「統一は別に必要ない」「全く必要ない」と答えた」 

南北統一論は半分以下に低迷している。若い年齢層ほど、必要論が低くなっている。 

(5)「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は、1月に「80年間の北南関係史に終止符を打ち、朝鮮半島に並存する2つの国家を認めたことに基づいて、わが共和国の対南政策を新しく法化した」として「2国家論」を宣言した。悪化する南北関係を反映した結果だというのが専門家らの分析だった。金委員長の立場と似ているという指摘に李議員は「個人的な立場をいうならば北朝鮮の体制には否定的。北朝鮮の立場とは関係がない。韓国の現実と、特に若い世代の意見を考慮して出した意見」と説明した」 

韓国も、若者の見方が次第に主流になりつつある。左派が、南北統一論を叫んでも、北朝鮮が「南北2国家論」を決めた以上、これを受入れるほかない。左派勢力の減退に結びつこう。