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中国財政省の廖岷次官は7月26日、世界的な気候変動との闘いとインフレ抑制に中国の生産能力が貢献していると述べ、同国産業の過剰生産能力に対するイエレン米財務長官の批判に反論した。一方、西側諸国からの過剰生産への批判が高まっていることから、中国共産党は7月30日、習近平国家主席が主宰する中央政治局会議を開き、欧米諸国から「過剰生産」と批判されている問題の解決に取り組む方針を決定した。 

『TBS』(7月30日付)は、「中国『過剰生産』批判に対応か、過当競争抑制方針示す」と題する記事を掲載した。 

中国共産党は今年後半の経済政策について議論する会議を開き、欧米諸国から「過剰生産」と批判されている問題の解決に取り組む方針を決定しました。

 

(1)「中国共産党は30日、習近平国家主席が主宰する中央政治局会議を開き、今年後半の経済政策の方針を決定しました。この中で「悪質な競争を防止し、非効率な生産能力を減らす」としてEV=電気自動車や太陽光パネルなどの分野での過当競争を抑制し、競争力がある企業だけを支援する方針を示しました。EVなどをめぐっては中国国内での過当競争の結果、過剰に生産された中国製品が不当に安く輸出されていると欧米諸国から批判されていますが、今回の方針は過当競争を抑制することで、こうした批判に対応する狙いがあるものとみられます」 

中国が、『三種の神器』(EV・電池・ソーラーパネル)の生産を増やして、安値による「デフレの輸出」がこれまで国際問題になっていた。中国が、ようやく鉾を収めるのは国内の競争激化によって、赤字企業が増えているという事態へ落込んでいる結果だ。すでに、電池の増設は禁止令を出している。これからは,EVの赤字競争を止めることになる。
 

(2)「内需拡大のため、家電など消費財の買い替えを促進することや消費意欲を高めるため観光などの分野を支援することも盛り込まれています。中国政府は今年の経済成長率の目標を「5%前後」に設定していますが、直近の4月から6月のGDPの伸びは4.7%にとどまっており、消費を喚起することで景気回復につなげたい考えです」 

中国政府は7月25日、およそ3000億元(約6兆4000億円)を投じて乗用車や家電の買い替えを促す補助金を拡充すると発表した。乗用車は4月に発表した補助金を2倍程度に増やす。停滞した国内消費を刺激する。中国の経済政策を担う国家発展改革委員会と財政省が同日、旧製品から新製品への買い替え拡充策を発表した。24年に1兆元の発行を予定している超長期特別国債で調達した資金のうち3000億元ほどを充てることになった。 

中国が、遅まきながら内需拡大方針へ転じたのは、海外へ「不況輸出」することの限界を悟ったからであろう。過剰生産=過剰輸出に大きな限界が出てきたことだ。このように方向転換するまでに、中国政府は何を発言していたか、その「三百代言」ぶりを聞いておくことにしよう。

 

『ブルームバーグ』(7月27日付)は、「世界にはより多くのEVが必要、過剰生産批判に中国財政次官が反論」と題する記事を掲載した。 

中国財政省の廖岷次官は26日、世界的な気候変動との闘いとインフレ抑制に中国の生産能力が貢献していると述べ、同国産業の過剰生産能力に対するイエレン米財務長官の批判に反論した。 

(3)「廖次官は20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席するために訪れているブラジルのリオデジャネイロでブルームバーグ・ニュースの単独インタビューに応じ、「中国は数十年にわたり、価値のある製品の供給を通じて世界におけるディスインフレの力となってきた」と語った。同次官は「各国が2030年までに温室効果ガス排出量の削減目標を達成しようとしている今、中国は世界に環境に優しい製品も提供している」と説明。国際エネルギー機関(IEA)の予測を引用し、それまでには新エネルギー車の世界需要は4500万~7500万台に達し、現在の供給能力をはるかに上回る見込みだと付け加えた」 

中国はEV輸出によって世界の異常気象問題とインフレ抑制に貢献していると主張している。だが、現実のEV(リチウムイオン電池)では、二酸化炭素排出量削減に貢献していないのが現実だ。エンジン車に比べて割高であることも,インフレ抑制に貢献していないのだ。要するに、現在のEVは「有害」な存在である。全固体電池の出現によって、異常気象問題への解決が一歩、進むことになろう。

 

(4)「この前日、イエレン長官は「マクロ経済モデルについて中国に対処するよう求め続ける」と発言していた。同長官は、中国が「過剰な」貯蓄と補助金を製造業につぎ込み、過剰生産能力につながっていると指摘した。中国は、主要経済国が抱く過剰生産能力への懸念に留意しているが、関税のような貿易面での脅しを同国としても懸念していると廖次官は発言。「市場経済のルールと事実について率直にコミュニケーションを取るべきだ」と述べた」 

このパラグラフで、米国イエレン財務長官から、中国のEV問題が国内不況の代替策であるとズバリ指摘された。これを受けて、中国の廖次官は「市場経済のルールと事実について」と後退した印象の発言をしている。中国自身も、過剰生産問題の解決が必要という認識になり始めていた様子が分る。