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円相場にとって、日米金利差5%台は致命的である。この最悪事態が、確実に改善方向へ動き出した。日銀が0.25%の利上げをした。FRB(米連邦準備理事会)パウエル議長は731日の記者会見で、「政策金利の引き下げは早ければ9月の次回会合でテーブルに乗る可能性がある」と述べた。9月までに何か劇的なことが起きない限り、9月の会合で0.25%利下げすることが確実な情勢である。円安相場是正は、どこまで進むのか。 

『ブルームバーグ』(8月1日付)は、「円『快進撃』、1ドル140円がトレーダーの次のターゲットに」と題する記事を掲載した。 

外国為替市場では怒濤の24時間を通過し、円がドルに対して1年半以上ぶりの月間上昇率を記録して7月の取引を締めくくった。

 

(1)「円の上昇基調を受けて、アムンディやTDセキュリティーズの為替ストラテジストらは、1ドル=140円まで円高が進む可能性を指摘している。マッコーリー・グループのストラテジストも、「足元の円高の快進撃はまだ始まったばかりだ」とし、ドル・円相場が年末までに140円に接近する公算があると予想。2025年12月までにはさらに125円へのドル安・円高進行もあり得るとみる。仮にそうなれば、円は米金融当局が利上げを開始したばかりの22年前半に見られた水準に戻ることになる」 

これまでの異常円安を招いた最大の要因は、日米金利差拡大を利用した円キャリートレードである。安い金利の円を使って,高金利通貨へ投機していたのだ。その状況が一変した。日銀は、0.75%程度までの利上げを臭わせる一方、FRBも9月から利下げを示唆している。米国では、失業率が速いピッチで上昇に転じているのだ。すでに1年間で「0.5ポイント」もの上昇であり、このままだと失業率5%の事態を招き兼ねない。慌てるFRBと自信を持ち始めた日銀が、ともに日米金利差縮小に向けて動き出したのだ。円安是正が始まっても何ら不思議はない。当然であろう。 

(2)「一部のストラテジストは、ここ数週間に蓄積された円上昇幅の大部分が解消されるリスクが短期的に生じているとみる。ただ、7月31日には日本銀行が追加利上げに踏み切り、米金融当局が早期利下げの可能性を示唆したことで、数カ月にわたってくすぶっていた円の先行きに対する悲観的な見方は払拭されている。アムンディの債券・為替戦略担当ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏は、ドル・円相場について「複数の要因が重なれば、140円に達する可能性がある」として、米金融当局の緩和サイクル開始やリスク回避の活発化、日銀の揺るぎない引き締めスタンスを材料に挙げた。その上で、「越えるのが難しいハードルのように見えるかもしれないが、実際はそうでもない」としている」 

為替相場の基調を見る上で重要なのは、100日移動平均線(短期)と200日移動平均線(長期)と現在の相場の関係である。これによると現在の1ドル150円は、100日移動平均線はもちろん、200日移動平均線も打ち抜いている。つまり、円安是正を示唆している。

 

(3)「8月1日の東京外為市場では、円は対ドルで一時1%高い148円51銭まで上昇。7月の円の月間上昇率は7%を超えた。足元の円高基調とは対照的に、ことし前半は対ドルの下落率が12%と、G10通貨の中で最悪のパフォーマンスに陥り、日本の通貨当局を円買い介入に追い込んでいた。4月と5月に実施された介入の規模は約9兆8000億円を記録。その後7月にも追加で5兆5000億円強の介入が実施され、ようやく相場の流れが転換した」 

政府の為替介入額は、約15兆3000億円(約1000億ドル)とされている。これだけの資金を投入して、円安相場の流れを食止める努力がされた。3月の日銀植田総裁が、理論通りに「金融政策と為替相場は無関係」と発言した。その「代償」が、この巨額資金の介入を招いたとも言える。現在の植田氏が「タカ派」を演じているのは、こういう手痛い失敗があるからだ。為替市場では、「口は災いの元」になる。

(4)「TDセキュリティーズのマクロストラテジスト、アレックス・ルー氏は、「日本の金融政策が一段と引き締められれば、国内資産に向かうリバランスのフィードバックループが強まる」と指摘する。同社は来年1-3月(第1四半期)にドル・円相場が140円に達すると見込んでいる。オーバーシー・チャイニーズ銀行の外国為替ストラテジスト、クリストファー・ウォン氏によると、同行はドルに対する円の適正水準を136円とみる。サクソ・キャピタル・マーケッツの為替戦略責任者、チャル・チャナナ氏は、特にボラティリティーが上昇し、キャリー取引の巻き戻しが進む場合において、年内にもドルが145円を割り込む方向へ円高が進む余地があるとしている」 

ここでのディーラーの見通しは、円安相場是正が急ピッチであることが背景にある。これまでの円安から言えば、目を丸くするような予測値である。

 

(5)「BofA証券の山田修輔主席FX・金利ストラテジストは、「現在織り込まれている米金融当局の利下げに加え、われわれは日銀が来年に0.75%程度まで政策金利を引き上げると予想している」と説明。来年に向けてはドル・円相場の140円台もあり得ると付け加えた。マッコーリーの外為・金利ストラテジスト、ガレス・ベリー氏(シンガポール在勤)は、円売りを伴う人気の円キャリー取引が投資妙味を失っているとして、円の上昇基調が維持されると予想。「米金融当局の緩和サイクルがいずれ始まれば、円キャリー取引で円をショートにする意味がなくなるだろう」とリポートで指摘した。円は7月上旬に対ドルで約38年ぶりの安値で推移した後、値を戻す展開となり、過去1カ月間では主要通貨に対して全面高となった。ヘッジファンドによる円キャリー取引の急速な巻き戻しが円上昇の大部分に寄与した」 

米金融当局の緩和サイクルが9月から始まる。そうなると、円キャリー取引で円をショートにする意味(売る)がなくなるだろうという。こうなると、円相場の流れは大きく変わる。年末から年初にかけて,1ドル140円台もあり得るとしている。