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FRB(米連邦準備理事会)は、7月31日に開いたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、利下げの開始が近づいていることを示唆した。パウエルFRB議長の話しぶりからは、労働市場をさほど心配していないようであった。雇用の伸びの鈍化を、景気の弱さの顕在化というより、労働市場の正常化の一環とみていたからだ。だが、7月利下げ見送りを巡って早くも疑問が出てきた。 

米労働省が8月1日に発表した7月27日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は、前週比1万4000件増加の24万9000件となった。これは、昨年8月以来の高水準である。金融市場は、米国経済がソフトランディングでなく、さらに進んで経済の悪化に陥ると警戒し始めている。今後、米国の利下げが急ピッチで進み、円相場の異常安が是正されることは確実となった。 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月2日付)は、「FRB、政策対応で後手に回るリスク」と題する記事を掲載した。
7月31日にFOMCを終えたFRBは手の内をあまり明かさないよう努め、会合終了後の声明ではインフレと失業率を巡るリスクについて、「より良いバランスへの移行を続けている」とした。ジェローム・パウエル議長は記者会見で、FRBがこの先どう動くかは今後のデータ次第との考えを改めて強調した。

 

(1)「市場は確信を固めたようだ。CMEグループの「フェドウオッチ」ツールによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む次回9月会合での少なくとも0.25ポイントの利下げ確率は100%、0.5ポイントの利下げ確率は15%となった。さらに、市場はFRBが9月、11月、12月の今年の残り3回のFOMCでそれぞれ0.25ポイントずつ利下げする可能性が高いとみており、FF金利の誘導目標が現在の5.25~5.5%から年末時点で4.50~4.75%以下になる確率を74%とみている」 

これまでの経験では、日米金利差が4.75%前後に縮小されると、ドル相場は調整反落局面を迎えている。現在の日米金利差は、5.00から5.25%である。米国の政策金利が、年末時点で4.50~4.75%以下になる確率を74%とすれば、日本がさらなる利上げしなくても、日米金利差は4.25から4.50%へ縮小する。これは前述のドル相場は調整反落局面「日米金利差4.75%前後」以下への縮小になる。本格的な円安是正局面になろう。この点は、繰返し強調したい。 

(2)「投資家はこうしたシナリオを好感し、31日の株式・債券相場は上昇した。しかし、安心しきることには二つの面からリスクがある。第一に、投資家は利下げ見通しについて楽観的になり過ぎている可能性がある」 

7月31日時点では、米国経済はソフトランディングできると安心して株式・債券相場は上昇した。だが、8月1日に冒頭で示した、7月27日までの1週間の新規失業保険申請件数が、昨年8月以来の高水準であることで一転、ハードランディング予想へと悪化したのだ。

 

(3)「おそらくもっと大きなリスクは、景気減速の兆候が強まる中でFRBの対応が大きく後手に回ることだろう。今回の決算シーズンで多くの米企業は、過去を振り返る経済統計全般がこれまでのところ示唆するよりも足元の状況はやや悪化している可能性を示唆している。例えば、ファストフード大手マクドナルドのクリス・ケンプチンスキ最高経営責任者(CEO)は7月29日、消費抑制の圧力は今年、「さらに深まり、拡大した」との認識を示した」 

企業は、すでに従業員の新規採用に対してブレーキを踏んでいる。この点は、本欄でも取り上げてきた。FRBが、高金利のブレーキを踏み続けていると、本格的な雇用調整が起こり兼ねないきわどい局面にある。 

(4)「こうしたリスクは、FOMCが今年8月と10月には開催されないというスケジュール要因によって高まる。例えば、労働市場に関する指標が7月と8月に弱まり始め、その後も軟化し続ければ、FRBが11月6~7日のFOMCで2回目の利下げに踏み切るまでに状況が悪化し続ける可能性がある。その間に0.25ポイントの利下げが1回あるだけでは、悪化食い止めにはあまり役立たないだろう。金融政策が景気に影響を与えるまでの典型的なタイムラグを考えればなおさらだ」 

現状では、FOMCの開催日程からみて9月と11月しか利下げ決定の機会はない。それだけに7月のFOMCは貴重な機会であった。そこで利下げを見送った以上、9月にどれだけの幅で引下げるかだ。

 

(5)「現時点では、これは基本シナリオとは捉えられていない。確かに、雇用創出ペースはここ数カ月でやや鈍化している。政府の発表では失業率は6月に4.1%となり、前年同月の3.6%から上昇している。投資家が特に懸念すべきは、実際に労働市場がさらに大きく減速した場合、FRBには適切に対応する十分な時間が残されていないことだ。このことは、今年開催する残りのFOMC会合のいずれかでFRBが50ポイントの利下げを行う可能性を先物市場が多少織り込んでいる理由にもなっている。もしそうなれば、FRBは7月に利下げに踏み切らなかったことを後悔するかもしれない」 

FOMCは、年内の開催月に0.50%という大幅利下げを迫られる可能性が出てきた。市場は「大荒れ」となろう。無論、円安の異常相場は急速に是正される。