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習近平国家主席が強調する「中国式現代化」とは、製造業へたっぷりと補助金を与える「温室経営」である。安い金利で借入できるほか、多額の補助金も受け取っている。中には、支給された補助金で、債務を返済する企業まで現れている。これでは、企業乱立と過剰生産は日常的な現象となる。湯水のように与えられる補助金は、社会福祉予算を削っての結果だ。多くの国民は、年金とは名ばかりの少額しか支給されない矛盾を抱えている。 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月12日付)は、「中国の製造業支援、米国とは別次元」と題する記事を掲載した。 

世界の各国はグリーンエネルギーやコンピューターチップなどの次世代技術で優位に立つため、製造業に巨額の資金を投じている。だが、優遇する産業への支援を惜しまないという点で、中国は次元が異なる。中国政府による製造業向け支援の規模は、米国や欧州連合(EU)、アジアの他の輸出大国とは桁違いだ。年間国民所得のほぼ5%に相当する額を国内産業に投じているとの試算もある。これは2位の韓国の6倍に上る。 

(1)「専門家によると、中国による産業支援の異例ぶりはその規模のみならず、裾野の広さにも表れている。独シンクタンクのキール研究所によると、中国上場企業の99%は何らかの形で補助金を受け取ったことを明らかにしている。データ会社ウインドによると、補助金の規模が突出している業種は石油・ガス、通信、物流、家電などだ。2023年の受給額が最多だったのはEV電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)で、57億元(約1170億円)だった」 

中国政府の製造業支援は、異常と言うほかない。上場企業の99%が補助金支給対象である。ドイツの中国進出企業まで対象になっている。

 

(2)「中国企業は補助金以外にも手厚い政府支援を受けることができ、西側の政府や競合各社によると、これがグローバル市場で中国企業を支えている。国有銀行の低利融資や多くの税制優遇が設けられているほか、地方自治体から工場用地を割安で借り入れたり、国有企業の鉄鋼や電力を低価格で仕入れたりすることができる。政府系投資ファンドはエクイティファイナンスによる資金調達を支えている。調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの中国担当アナリスト、トーマス・ガトリー氏は、中国政府は支援に「他のどこよりも真剣だ」と指摘した」 

政府による支援内容は多岐にわたる。その内容は、金利減免から土地購入・電力や鋼材まで、あらゆる面が対象になっている。これでは、企業が乱立して当然であろう。 

(3)「バイデン米政権は、半導体の国内生産の再興に530億ドル(約7兆8000億円)を拠出する。さらにインフレ抑制法に基づく減税や補助金を通じて、環境負荷の少ないエネルギーや輸送への移行支援に今後数年間で数千億ドルを充てるとみられる。EUや日本も同様に、グリーン産業やハイテク産業の促進策を掲げる。中国はさらに上を行く。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書によると、中国の産業政策への支出額は19年に約2500億ドルに達した。対国内総生産(GDP)比では約1.7%と、2位の韓国の2倍で、米国の0.4%、日本の0.5%、フランスの0.6%をはるかにしのぐ」 

米国やEUでも企業支援を行っているが、その規模において中国の足元にも及ばない。中国政府の産業政策への支出額は19年に約2500億ドルに達した。中国は、産業支援経費の対GDP比が約1.7%である。韓国の2倍、日米仏の3倍にもなる。

 

(4)「同報告書の共同執筆者でCSIS中国ビジネス経済部のスコット・ケネディ氏は22年の分析で、中国の政府支援の規模は、低利融資や政府系投資ファンドなどを通じた支援を含めるとGDPの4.9%に上る可能性があると指摘。他国も産業政策への支出を増やしているが、「中国は依然としてずばぬけている」と述べた。中国国外では反発が広がっている。EUは国内生産者を不公正な競争から守るため、中国製EVに関税を導入すると発表。中国の輸出企業は建設機械や鉄鋼、セラミックなどの製品を巡るダンピング(不当廉売)の疑いで、英、インド、ブラジルなどで調査を受けている」 

中国は、政府の支援以外に低利融資や政府系投資ファンドなどを通じた支援を含めるとGDPの4.9%にもなる。これだけの公的な支援によって製造業をバックアップしている。

 

(5)「国有銀行が提供する低利での与信枠は、補助金の規模を上回ると専門家が指摘。ガベカルと経済協力開発機構(OECD)の調査によると、中国では国有企業が民間企業より低い金利で融資を受けられることが多い。半導体受託製造大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)は低利融資の恩恵を受けている。半導体受託製造大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)は、23年に支払った元建て長期借入金の利率が平均2.10%だったと明らかにした。中国人民銀行(中央銀行)の5年物貸出基準金利は昨年末時点で4.2%だった。欧州連合(EU)執行機関の欧州委員会は、中国製EVへの関税導入決定に関する報告書で、一部企業は新規融資や債券売却で得た資金を債務返済に充てていると指摘」 

中国人民銀行(中央銀行)の5年物貸出基準金利は、昨年末時点で4.2%である。半導体受託製造大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)は、23年に支払った元建て長期借入金の利率が平均2.10%で5年物貸出基準金利の半分にすぎない。まさに、「おんぶに抱っこ」で企業保護をしている。これでは、輸出競争力がついて当然であろう。だが、西側諸国は関税を引上げ対抗している。この影で、国民は失業に怯えて生活している。計画経済の無駄が、こうして立証されるのだ。