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カンボジア政府は8月5日、首都プノンペン近郊で「フナン・テチョ運河」の着工式を開いた。およそ17億ドル(約2400億円)を投じ、内陸部と沿岸部をつなぐ新たな物流ルートを開発する。将来、中国海軍の通航やメコン川の水位低下を警戒する声もあるほどだ。

 

こうしてカンボジアの運河計画が、中国の勢力圏拡大に繋がるという警戒観は、中国自身が壮大な運河開発計画を進めているからだ。高速鉄道建設の次は運河建設と飽くなきインフラ建設意欲をみせている。これでは、中国経済のバランスの取れた発展は不可能である。行き着くところまで行くしかないという諦めるほかないであろう。


『レコードチャイナ』(8月12日付)は、「高速鉄道に続き、大運河ネットワークの構築に着手し始めた中国」と題する記事を掲載した。

 

中国のポータルサイト『百度』(8月2日付)は、中国が高速鉄道の整備に続いて運河ネットワークの建設に力を注ぎ始めたとする文章を掲載した。

 

記事は、中国が約15年の間に高速鉄道2万7000キロ以上を完成させ、現在も約1万キロを建設中だと紹介。高速鉄道網が着実に構築されつつある中で中国が運河ネットワークの整備に目を向け始めたと紹介。中国はもともと陸路や鉄道より低コストな水運が発達しており、昨年の長江の貨物輸送量が64.5億トンと鉄道貨物輸送量の50億トンより多い。人工運河を整備して国内外の大きな水路を接続することにより、今まで以上に地域経済の急成長を促し、国の長期的な発展に寄与することになるとの見方を示した。

 

(1)「具体的な例として、湖北省の荊漢運河、江西省の浙贛粤運河、広西チワン族自治区の平陸運河、湖南省の湘桂運河などを挙げ、淮河や長江、珠江といった大水系が互いに接続し、さらには海にまでつながった未来の運河ネットワークは中国経済の大きな強みになるかもしれないと予測するとともに、洪水防止や灌漑といったその他のメリットも期待できるとした」

 

ここに上げられている平陸運河について、説明しておきたい。同運河は既に22年8月に着工している。広西チワン族自治区の南寧市から欽州市を経て、北部湾(トンキン湾=ベトナムと中国・海南島に挟まれた湾)に注ぐ。全長135キロ、総投資額は727億元(約1兆4540億円)を予定。給水や灌漑、洪水防止、生態環境改善などの機能を組み合わせた航路を整備し、5000トン級船舶の通航が可能とされている。

 

開通すれば、中国の南西部や西北部から最短で海に出られる航路となる。これまでの長江と珠江に加えた新たな水上輸送ルートを整備することで、長江と珠江を利用したルートの混雑緩和が期待されている。同プロジェクトは、「西部陸海新ルート全体規画」実施の一環として建設されるもの。運河が長江、珠江、北部湾を縦方向に貫通することによって、中国とASEAN間の貨物輸送の増加をもたらし、中国とASEANのさらなる連携促進につながると期待されているという。

 

中国は、このように運河計画に着手していることは、インフラ投資によって次なる中国経済を支えるプロジェクトにしていることだ。あくまでも、供給力の増強によって中国経済を発展させる意思を示している。需要増強という視点は、100%欠如しており、中国経済の挫折な目に見えるようだ。経済を支えるのは、堅調な民間需要である。

 

(2)「さらに、自国だけでなく近隣国の運河の整備にも協力しており、今月5日にはカンボジアのフナン・テチョ運河で掘削がスタートし、フン・マネット首相が同日を着工記念の祝日にするほどの重視ぶりであると伝えた。今回、掘削するのは全長180キロの運河全体のうち7キロに過ぎないものの、3000トンの船舶が首都プノンペンからケップ港まで航行できるようになり、海に出るためにベトナムを経由する必要がなくなるため、「カンボジアの運命を変える可能性がある」と評した」

 

フナン・テチョ運河は、およそ17億ドル(約2400億円)を投じ、内陸部と沿岸部をつなぐ新たな物流ルートを開発する。建設資金について第1区間は全額をカンボジア資本が拠出し、第2区間は51%をカンボジア資本、49%を中国政府系の中国路橋工程(CRBC)が拠出する。中国が第2区間で49%を出資するのは、フナン・テチョ運河の完成で、中国はメコン川に沿ってラオスとカンボジアを通り、タイ湾に抜けるルートを手に入れるとする見方だ。こうした事情からフナン・テチョ運河は、巨大な経済圏構想「一帯一路」の一環にも数えられる。

 

(3)「記事は最後に、「将来、高速鉄道に運河網が加わることが、経済の飛躍的な発展を実現するカギになるかもしれない」と結んでいる」

 

中国は、運河計画を利用して中国の支配権拡大も意図している。だが、異常気象によってメコン川の源流であるチベット高原の水源が荒れてきたことだ。流量の減少を引き起している。これが、恒常化すれば運河どころの話でなくなる。異常気象問題へのさらなる真摯な取組みが要求されるのだ。