コンビニ50年目の異変
事業再編決まった矢先に
買収資金は5兆円以上も
合併断っても問題はゼロ
今年は、日本へコンビニという新しい流通形態が登場して50年になる。その節目の年に、コンビニ1号店を開いたセブンイレブン(現在はセブン&アイ・ホールディングス)へ、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールがM&A(合併・買収)を申し入れてきた。ただし、非公式・友好的という極めて緩い条件である。セブン&アイ・ホールディングスは、経産省のガイドラインもあり正式に検討している。
クシュタールは、2005年ごろセブン&アイへ最初に買収を持ちかけたが、即座に拒否されている。クシュタールにとって、セブンとの合併が宿願であったのだ。これが、今回の合併申し入れの背景にある。ただ、なぜ現時点で再び合併を申し入れてきたのか。理由は次の点であろう。
1)セブン&アイ・ホールディングスが、ようやく事業再編に取組み始めたこと。
2)同社株価が割安に放置されていることで、合併資金が少なくて済むこと。
上記の2点は、セブン&アイだけに適用されることでなく、日本の上場企業で構造改善が遅れ株価が低位にある場合、M&Aの対象になる可能性を示している。今回のセブンの例は、日本企業への「警鐘」となった。
コンビニ50年目の異変
セブン&アイ・ホールディングスの原点は、スーパーのイトーヨーカ堂である。戦後の流通革命の波に乗って急成長した企業である。同業のダイエーは、店舗開設の際に付近の土地を手広く買収して地価値上がり益で店舗建設費を賄った。イトーヨーカ堂は、逆に店舗の建物を借りる手堅い経営手法をとってきた。この差が、後に大きく表れた。ダイエーが失速しイトーヨーカ堂が発展した理由である。
このヨーカ堂は、日本で初めてのコンビニへ進出し、セブンイレブンを開業した。ここまでは大成功でその後、勢いに乗ってさらなる拡大路線へ転じた。百貨店のそごうや西武を買収して傘下に収めたのだ。こうして、社名は「セブン&アイ・ホールディングス」となり、セブンイレブンはその一部門を構成した。だが、百貨店やスーパーは通販という新たな流通革新の波に沈む結果となった。セブン&アイ・ホールディングスにとっては、新参の百貨店は売却可能でも、祖業であるスーパーのイトーヨーカ堂の分離は心理的に極めて困難を極めた。
セブン&アイ・ホールディングスの株主は、同社の株価低迷理由として、コンビニ事業が他の不振部門に埋没しているとみてきた。そこで、コンビニ事業以外の部門を独立させるように圧力をかけたのである。これが長いこと、「物言う株主」とセブン&アイ・ホールディングスの間で主たる対立点になってきた。
セブン&アイ・ホールディングスと業態が全く異なる日立製作所の場合、「失われた30年」の間に本業と直接の関わりのない部門は、ことごとく売却する英断を行った。「日立御三家」とされ、高度経済成長時代に発展した日立金属・日立電線・日立化成は、全て日立の資本系列から離された。
セブン&アイ・ホールディングスが、日立製作所と同じことを行えば、株価も上昇しただろう。だが、セブン&アイ・ホールディングスの株式の8%は、ヨーカ堂創業家の伊藤家所有である。こうなると、伊藤家の承認がなければセブン&アイ・ホールディングスの改革行動は取れないのだ。特に、創業社長であった伊藤雅俊 氏存命中は、一代で築いた事業だけに荒療治は不可能である。これは、感情面から言えば難しい問題であろう。井阪隆一社長は、物言う株主と伊藤家に挟まれて大ナタを振るえなかったのだ。
事業再編決まった矢先に
昨年のセブン&アイ・ホールディングスの株主総会では、物言う株主である投資ファンドの米バリューアクト・キャピタルから株主提案がされて緊張する場面となった。井阪社長ら4人の役員退任を求めるバリューアクト提案と会社提案が、株主採決を仰ぐ場面を迎えたのだ。結果は、会社提案通りとなったが、セブン&アイ・ホールディングスとして、もはや事業再編は不可避になっていた。
今年5月の株主総会は、昨年のような事態にならなかった。今年4月、ヨーカ堂などの新規株式公開(IPO)検討方針が公表されていたからだ。こうした事情から、バリューアクトは会社側の対応に賛同を表明して、これまでの対立構図が収まった。
カナダのコンビニ大手であるクシュタールは、この一件落着後を見透かしたように、最も緩い形でM&Aを申し入れてきた。セブン&アイ・ホールディングスは、ガイダンスに従い迅速に社外取締役による検討会議を立ち上げた。
セブンイレブンが築き上げた「コンビニ事業コンテンツ」は、世界のコンビニ業界にない独特のスタイルである。鮮度の高いおにぎりや弁当、パンなどを作り、店に供給するセブンイレブン独特のサプライチェーン(供給網)をつくりあげ、実にきめ細かいプロセスで成り立っている。セブンイレブンは、看板やフランチャイズチェーン(FC)など米社が運営するセブンイレブンの基本モデルを導入した。だが、経営手法はセブンイレブン独特の工夫によって磨き上げたものである。(つづく)
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