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不況が住宅から鉄鋼へ

中国鉄鋼3割が倒産も

日本は迅速な構造改革

中国住宅投資6割減も

 

中国経済は、飛行機の「ダッチロール(蛇行)」現象と同じ混迷状態にある。習近平国家主席は、「三種の神器」(EV・電池・ソーラーパネル)の生産増強によって、国内はもとより海外市場も独占する狙いであった。この狙いは、国内外で完全にはずれた形になっている。国内は過剰生産で価格が暴落。海外市場は、ダンピング輸出として警戒され、高関税で遮断されている。となると、中国経済のダッチロール化は不可避であろう。

 

中国経済が、このような混迷状態へ突入した最大の理由は、政府として不動産バブルの後処理を完全に行わない点にある。住宅の過剰供給がもたらして弊害は、企業や地方政府の問題として処理できる範疇を超えている。その端的な例を、次に示したい。

 

碧桂園は、中国不動産開発最大手であったが、今は倒産危機に見舞われている。その23年中間決算では、借入金が1500億元余り(約3兆円)と債務総額の比べて意外に少ないのだ。負債総額に占めるシェアは12%である。だが、過半は前受金(44%)と買掛金(33%)と非金融機関が占めている。この負債状況から、銀行債務が少ないという間違った判断が生まれている。恒大集団も似たような負債構成である。

 

碧桂園は、前受金と買掛金が債務総額の77%も占めている点に注目していただきたい。前受金は、住宅購入者が予約と同時に住宅ローンを支払い始めており、未だに竣工住宅を受け取っていないことを示している。買掛金は、資材買付けでの未払い分である。碧桂園は、銀行への直接債務が少なくてよかったという判断にならないのだ。住宅購入者と資材納入業者が、債務総額の約8割の負担を背負わされている。この実態から、不動産バブル崩壊の後遺症は社会全体へ広く拡散されているのだ。

 

不況が住宅から鉄鋼へ

こういう視点で、今回の不動産バブル崩壊を見つめ直すと、習近平氏のように「三種の神器」推進で、中国は「新しい質の経済」へ移行できるなどと言えない状況に置かれている。社会全体が、不動産バブル崩壊の被害を広く被っていると判断すべきである。それは、住宅建設と裏腹の関係にある鉄鋼産業に「赤信号」が出てきたことにもみられる。

 

中国鉄鋼業は、世界の粗鋼生産で57%の生産シェア(2020年)を占める。中国名目GDPの世界シェアは、17.8%(2022年)であるから、ざっとその3.2倍もの粗鋼生産である。

 

こうした巨大化した中国鉄鋼業が、これから「無傷」であり続けられるはずがない。大愁嘆場を迎えるのは不可避であろう。過去の日本鉄鋼業も、高度経済成長を牽引した主役だ。八幡・富士・日本鋼管・住金・川鉄の5社体制であった。それが現在は、八幡・富士・住金は日本製鉄へ統合し、鋼管・川鉄はJFEへ衣替えした。日本鉄鋼業は、2社体制に集約化されたのだ。この例から分るように、中国鉄鋼業が再編成へ向かうのは不可避となった。中国の時代が、終焉を迎える象徴的な事例は鉄鋼業に現れるはずだ。

 

中国鉄鋼業の生みの親は、日本鉄鋼業である。トウ小平が初訪日(1978年)の際に新日鉄(当時)の君津製鉄所を見学し、「中国にもこういう最新鋭製鉄所がほしい」との発言がきっかけになった。これは、有名な逸話として残っている。中国は、こうして世界最新鋭製鉄技術を入手して、その後は破竹の勢いで増産体制を築いた。

 

2005年以降の中国粗鋼生産の世界シェアは、次のような推移をたどった。

2005~08年 30%台

2009~12年 40%台

2013~17年 50%前後

2018~21年 50%台  ピークは2020年の57%

 

この推移をみると、習氏が国家主席に就任した2012年(実質は13年)以降に中国粗鋼生産の世界シェアが急増していくことが分る。とりわけ、2018年以降の世界シェアが50%台を超えたことだ。こうした状態が、「異常」であるとして警戒しなかったことは、中国としてその後の傷跡を深める事態になった。「山高ければ谷深し」である。これは、あらゆる経済現象において真実である。中国は、「噴火口」で狂喜乱舞していたことになる。中国もついに否応なく、景気循環という経済の鉄則に従う事態を迎えたのだ。

 

中国鉄鋼3割が倒産も

世界最大手の鉄鋼企業、中国宝武鋼鉄集団を率いる胡望明董事長は8月14日、つぎのように鉄鋼悲観論を述べた。「鉄鋼業界の『冬』、つまり危機は『予想以上に長く、寒く、厳しい』ものになる可能性が高い」と発言した。背景には、中国不動産市場が、21年から不況に見舞われていることだ。世界の鉄鋼業界は、2008年と15年に壊滅的な不況に直面し、中国は乱立していた鉄鋼メーカーの統合につながった。宝武自体も16年に宝山鋼鉄と武漢鋼鉄が合併して誕生した経緯がある。(つづく)

 

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