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韓国は、日本以上の少子高齢化が進んでいる。だが、年金財政の改革は、国会審議が進まず宙に浮いたままだ。今年7月、与野党は現在9%の保険料率(所得ベースの納付額の料率)を13%に引き上げることで合意した。所得代替率(年金受給額が現役世代の平均手取り収入の何%に相当するかを示す指標)も44%とすることで妥協した。だが、肝心の法案化が進まないのだ。 

年金改革が遅々として進まず、これまで蓄積した年金基金を取りくずしている間に、年金を取り巻く状況は急激に悪化している。韓国の65歳以上の人口は、25年に初めて1000万人を突破する。韓国が、超高齢社会に入ることを意味するのだ。一方、出生率は世界最低水準にまで低下している。今年の年間合計特殊出生率は0.6台に低下する可能性が出ている。年金改革は、一刻も猶予がならない事態になっている。

 

『日本経済新聞 電子版』(8月29日付)は、「韓国の年金『30年後に積立金枯渇』、尹大統領が改革表明」と題する記事を掲載した。 

韓国の尹錫悦大統領は8月29日の記者会見で、公的年金制度を抜本的に改革すると表明した。韓国政府は急速な少子高齢化のあおりで30年後の2055年に年金の積立金が枯渇すると推計する。年金制度を将来にわたり維持できる方策を整え「国民年金への信頼を取り戻す」と強調した。 

(1)「尹氏は、法改正を伴う年金制度の改革に意欲を示した。「国が支給を保障すると法に明文化してこそ、若者に『私たちももらえる』という確信を持たせることができる」。危機感を訴えたのは、足元の少子高齢化のスピードが深刻で、年金制度が崩壊しかねないと考えるためだ。保健福祉省は23年、国民年金の単年度収支が41年に赤字に転じ、積立金の取り崩しが始まると推測した。積立金は40年の1755兆ウォン(190兆円程度)をピークに急減し、わずか15年後の55年に消失すると予測する」 

現行の年金制度では、40年に積立金はピークを迎え55年にゼロになる計算である。制度改革をしなければ、56年以降は全て財政負担になる。これは、絶対に避けなければならない。

 

(2)「人口構成の変化は日本よりも急だ。例えば今の54歳が生まれた1970年の合計特殊出生率は4.53だった。44歳が生まれた80年は2.82、34歳が生まれた90年には1.56へと急落する。足元の2023年は0.72で世界最低となった。韓国政府が描くのは積立金が枯渇する時期を数年延ばす小手先の改正ではなく、根本的な制度の見直しだ」 

韓国の年金財政が、大きな曲がり角に立つ最大の原因は、少子高齢化によって年金保険料の支払者が急減することである。現行制度を維持するには、年金保険料の引上げしかない。 

(3)「尹氏は「自動安定装置」の導入に言及した。物価上昇率や保険加入者数などの状況に応じて自動的に支給額を増減させる仕組みが念頭にある。日本は給付額を物価や賃金の伸びよりも抑制するマクロ経済スライドを04年の改革で導入した。例えばフィンランドは平均寿命の長さに応じて年金支給額を調整する。医療の進歩により平均寿命が延びると、係数をかけて自動的に支給額を減らす。尹氏は「年金先進国ではすべて導入されている」と話し、理解を求めた」 

尹大統領は、物価上昇率や保険加入者数などの状況に応じて、自動的に支給額を増減させる仕組みを考えている。

 

(4)「韓国の国民年金は18歳以上、60歳未満の全国民が加入できる。10年以上の加入歴があれば、62歳から老齢年金の支給を受けられる。23年時点で国民年金の加入者数は2199万人、老齢年金の受給者は527万人で、現役世代4人で1人を支えている計算になる。政府推計では加入者数は足元でピークアウトする。出生率が4を超えていた1960〜70年代生まれが支給対象になり、受給者は急増する。2050年は加入者が1534万人、受給者が1467万人となり、1人で1人を支える形になる」 

現在は、4人の現役が1人の年金を負担している計算である。2050年には、1人で1人を支える形になる。現実に、これは不可能であろう。 

(5)「韓国の国民年金は「2階部分」にあたり、日本の厚生年金に相当する。日本の国民年金にあたる「1階部分」は基礎年金と呼び、税金が原資になる。所得や財産が少ない貧困層のセーフティーネットに位置づけられる。22年時点で12階部分をあわせた月平均の受給金額は65万ウォン(7万円程度)。日本は厚生年金受給者の平均が14万円台で、韓国は日本の半分の水準だ。保険料率で比べても韓国の国民年金は9%で、日本の厚生年金の18.%より低い。負担は少ないが、支給額も見劣りする制度といえる

 

日韓の年金を比較すると、韓国は「軽負担・軽支給」である。保険料率(厚生年金レベル)は、韓国は9%で、日本が18.%である。この差が、支給額になっている。韓国(7万円程度)、日本(14万円程度)である。韓国は、制度改革案では、保険料率が13%になるが、日本の7割程度である。

 

(6)「韓国の高齢者の貧困は深刻だ。所得が集団の中央値の半分に届かない人の割合を示す「貧困率」は、経済協力開発機構(OECD)の23年の報告書によると40.%に達する。加盟国37カ国中で最も高く、全体平均の14.%を大きく上回る。尹氏の改革案は議論を呼びそうだ。韓国中央大の金淵明(キム・ヨンミョン)教授は、年金の自動安定策について「結局は年金を削ることになる」と反対する。「保険料率を上げて、多く払って多く受け取る改革案が原則だ」と主張する」 

韓国は、年金制度の改革を遅らせると、高齢者へさらにしわ寄せが行く。韓国の「貧困率」は、OECDでワースト・ワンである。この汚名を早くそそぐ必要があろう。